「にっこにっこにー」
 アニメを知らない人でも1度は耳にしたことがあるこのセリフ。『ラブライブ!』(2013年1月放送開始)でツインテールにぶりっ子キャラが特徴の矢澤にこ役を演じ、ほかにも数多くの作品で重要な役どころを演じている徳井青空(29)は今年、声優デビュー10周年を迎える。声の仕事だけにとどまらないマルチっぷりと軽妙なトークで女性ファン比率の高さでも知られる彼女がこれまで明かすことのなかった本音を語ってくれた。
徳井青空 撮影/森田晃博

「今まで個人名のソロ・ライブを開催することはなくて。私以外の『ラブライブ!』(μ's)のメンバーたちはソロ・デビューしていて、自分名義の曲を持っているんですよ。

 ライブや全国ツアーをやったり、歌手としての活動もしているんですけど、私だけやっていなくて。いろんなアニメに出させていただいて、劇中で担当したキャラクターで歌う機会は多かったので、数なら誰にも負けないくらい持っているんですけどね(笑)」

 今年、声優デビュー10周年、そして30歳の誕生日と節目の年を迎える徳井青空。

「誕生日が12月26日なので、実家でもクリスマスと私の誕生日が合同になったこともありました。大人になってからはお誕生日会みたいなものなんかなくて。師走のしかも年末で忙しい時期にみんなに集まって祝ってもらうなんて申し訳ないですよ(笑)。

 だから、なかなかバースデーイベントを開催する気持ちになれなくて。そもそも何もしていないのに、誕生日というだけでみんなから“おめでとう!”って無条件で祝ってもらうのが自分の中で納得できなくて……。だから10年間、1度もやったことなかったんです」

状況を変えた『紅白』出場

 過剰すぎる(?)謙遜がたくさんのファンに好かれる魅力なのだろうか。月刊誌でマンガを連載する漫画家としての顔や、自らのグッズやWEBサイトに絵を描くイラストレーターの顔、ラジオ番組のMCを務めたり、少年たちのイメージが強いミニ四駆を作って大会に出るなど、マルチに活躍する彼女。その頭の回転の速さもあって同性ウケも随一の声優なのだ。

 だが、青春時代は意外にも根暗なオタクだったという。

「アニメが大好きなのと、お芝居にも興味があったので私もやってみたいと思っていて、中・高生くらいから声優という職業を意識していました。でも、とにかくインドア派で、自宅に帰ってアニメを見たり、絵を描いたりって感じの生活を送っていました」

 念願の声優としての活動を始めても、俳優や歌手やお笑い芸人とは違って常に顔を出してやるものではないため、家族もどんな仕事なのかいまいち理解できていなかったという。

「弟にも“姉はなんかそういう芸能活動的なことをやってるらしい(笑)”くらいの認識でしかなかったんです」

 そんな状況が一変したのが、2015年、第66回『NHK紅白歌合戦』の出場だった。『ラブライブ!』の主要メンバー9人が実際に歌い、その映像が全国のテレビで生中継された。

 国民的な、誰もが知っている番組によって、

「両親にはテレビで実際に私が歌っている姿を見て“すごいね”って言ってもらえました。おばあちゃんも“青空ちゃんがテレビに映ってる!”って喜んでくれました。シンプルに家族に私の仕事が伝わったのはうれしいですね」

徳井青空 撮影/森田晃博

ファンのみなさんへの感謝

 そこから4年がたち、2019年12月30日に『大宮ソニックシティ』で初のバースデーイベントとしてワンマンライブを実施する。避け続けてきたことをやるにいたった理由とは?

2年前に所属事務所が変わったんですけど、私が思っている以上にファンのみなさんが心配してくださったんです。移籍したときにはファンの有志の方たちのコメントのアルバムを作っていただきました。“これからも応援します”という熱いメッセージをいただいて、そのときにみんなに心配をかけたんだって気づいたんです。

 だから、ダブルアニバーサリーという名目ですが、みんなに祝ってほしいというよりも、声優活動10年の感謝をみんなに伝えられたらっていう思いで決断したんです

 冒頭でも話に出てきたが、≪徳井青空名義の楽曲≫はない。つまり、

「私のライブというよりも、私が担当したキャラクターが集まるフェスみたいに思っていただけたら。すべて私が演じてきたキャラクター名義での楽曲を歌うことになるので、各版権元さんに許可をいただき、さらには絵もお借りしてキャラクターを前に私が歌う感じです。

 権利の塊みたいなものなので(笑)、配信とかBlu-rayでの発売はないです。ライブに来た人だけが目撃、体感できます。今年の4月に私個人のファンクラブもできたんですが、会員の方にはもれなく私がハイタッチでお見送りする予定になっております」

 12月30日当日でも、FC新規会員登録をし、マイページが確認できればハイタッチに参加できる。

「10年やってきて初めてのイベントですから。次もしあるとしたら10年後の40歳かな(笑)」

徳井青空 撮影/森田晃博

 そんな徳井の30歳の抱負を最後に聞いてみると、

「もっと自立する!」

 どこまでも控えめな彼女の今後の躍進に注目したい。