プロデューサー・クロちゃん

 人気バラエティ『水曜日のダウンタウン』で、安田大サーカスのクロちゃんがアイドルグループをプロデュースしデビューさせるシリーズ企画「MONSTER IDOL」。回を追うごとに参加メンバーを脱落させていくものだが、18日の放送で最終メンバー4名が決定、グループ名は『豆柴の大群』と、クロちゃんに命名された。

 番組内ではクロちゃんの私的な感情による贔屓(ひいき)や、立場を利用したふるまいなどから、企画のVTRを見るスタジオのダウンタウンら出演者からも、毎回「気持ち悪い」「クズ」といった声があがっていた。

「ギリ、アウト」が魅力

 しかし、翌19日にタワーレコードで発売された『豆柴の大群』のデビューCD『りスタート』は好調な売れ行きをみせている。3種類の売れ方の違いで、クロちゃんのプロデューサー「続投」、「解任」、「解任プラス罰ゲーム」と、今後の処遇が決まるという“オマケ”つきだ。

 クロちゃんと『水曜日のダウンタウン』といえば、昨年末にはクロちゃんをオリに入れた状態で遊園地の『としまえん』に“設置”し一般公開するという企画を行った。ところが、翌朝まで入場無料ということもあり、深夜にも関わらず入場者が殺到しすぎて警察まで出動、公開は早々に中止となる騒動となった。

 それでもクロちゃんの新企画が立ち上がるというのは、人気があるからこそ。その人気の理由はいったいどこにあるのだろうか。バラエティー番組を手がける放送作家に聞くと、

危険な番組に危険なヤツが出ている、“リアリティーショー”のすごいものを見ているという面があります。実は、クロちゃんは空気を読んで求められているものをやれるのですが、そのせいか面白くならないときもありました。

 でもこの番組では、クロちゃんが空気を読んで悪いほうに演じており、いきすぎている部分、やりすぎている部分、さらにときどき見えるリアルな部分よりも、“ギリ、アウト”なところを、絶妙なバランスで編集していると思います

 番組側が、クロちゃんという「素材の魅力」を、最大限に引き出しているからこそ面白いのではないかとも指摘する。

「たとえばクロちゃんが、普通に単独ライブをやっても、警察が来るようなことにはならないと思います。あの番組での、あの状態のクロちゃんが見たいんです」(同放送作家)

「最低な人物」として描かれるクロちゃんに魅力があるというわけだ。また企画名の『MONSTER』にも、クロちゃんを使う意図がふんだんに含まれているという。

「『嫌だ』『気持ち悪い』を感じる楽しさがあるんです。やりたい放題のモンスターは倒すべきもので、本当に倒してもそれは正義であって、罪悪感は生まれません。みんなでモンスターを倒したり窮地に追い込むことを共通体験のように楽しめる企画。そこがよりウケている理由のひとつではないでしょうか」(同)

『豆柴の大群』のデビュー曲『りスタート』の作詞はもちろんクロちゃん。MVのYouTube再生回数もうなぎのぼりで、各メンバーが開設したツイッターのフォロワー数も、それぞれわずか2日で10万人に届く勢いだ。突如、現れたアイドル界の「新星」の人気は本物になるだろうか。

「よくも悪くも番組ありきなので、今後のクロちゃんの処遇が運命を握るのではないでしょうか」

 と、あるアイドル系ライターは言う。今回のCDはジャケット違いの3形態での発売となり、最も売れた種類がどれかによって、クロちゃんのプロデュース続行、解任、解任プラス罰と、処遇が決定されるというルールが設けられている。

「ある意味、かなりの“ドーピング”ですが、アイドルのCDの新しい売り方が見つかったともいえます。彼女たち4人の人気がどこまであがるかにかかっていますが、長い目で見れば、クロちゃんがプロデューサーを続投したほうが面白いとは思います」(前出・アイドル系ライター)

 クロちゃんの処遇は、25日の番組内で発表される。

<取材・文/渋谷恭太郎>