初日の出ならぬ“ネズミの出” 撮影/渡邉智裕

 “横浜都心”圏内の横浜市西区において、9・1ヘクタールもの敷地が広がる野毛山公園。その一角にある『野毛山動物園』は、93種類もの動物を飼育する、年間100万人近くが訪れる(しかも無料!)大人気スポットだ。

モルモットを存分に抱っこできる!

 お出かけ日和の本日、猛獣にキャッキャしたいところだが、今回の目当ては園内にある『ねずみワールド』。そう、2020年は子(ね)年。最高の年賀状を作るべく(まだ間に合う?)、“夢の世界”で“映える”ネズミの写真を撮っちゃおう、という算段なのだ。

 さっそく入園すると、間もなくレッサーパンダが手招きしている(ように見えた)ではないか! これはかわいいぞ。でも、本日の主役はキミじゃないんだ。後ろ髪を引かれつつ、目的地の「なかよし広場」に向かった。

 このなかよし広場は、ハツカネズミやモルモットなどの小動物とふれあい体験ができる、土日祝日には整理券が配布される人気コーナー。

 この日も、野外活動の小学生たちがワイワイする一方で、高齢のご婦人方も口々に「あら、かわいいわ」。みんなが笑顔になる、ほのぼのとする広場である。

モルモットの重さは1キログラム前後。やさしく抱っこしよう 撮影/渡邉智裕

 すでに“それらしい世界”が視界にチラチラと入っていたが、まずは記者も仲よくふれあいたい。モルモットの抱っこに挑戦……と、おぉ、けっこう大きい。どうしたらいいの?

「毛が抜けたりウンチをする場合もありますので、まず座布団を用意します。そして両手で輪っかを作るようにモルモットの脇の下に手を入れて、ばんざいのポーズになるようにやさしく支えて運びます」

 飼育展示係の松山薫さんに教わりながら恐る恐る抱っこする。モフモフじゃないか!

「ずっと脇を抱えていると苦しくなるので、なるべく早く座布団にのせてあげてください。

 そして座布団をひざの上にのせて、背中とお尻をなでてください。ブラシもお貸ししていますので、徐々に慣れてもらい、思い思いにかわいがってもらえれば」

 ひざの上でおとなしく丸くなるモルモットは、キュートすぎて永遠になでていられそう。でも、何でもかじる習性があるので、口の前に指をもっていかないようチュー意。

スタッフの手作り『ねずみワールド』

 そして、いよいよ『ねずみワールド』の全貌が明らかに! ウッドチップのじゅうたんが敷かれた2m四方ほどのセット上には、子年をテーマにしたさまざまな仕掛けやオブジェが置かれ、白、黒、茶色のハツカネズミたちがあちこちで元気に駆け回っている。たしかに楽しげな、そして温かな世界が広がっていた。

ひと足早くネズミ年になった、手作り感あふれる「ねずみワールド」。東京五輪・パラリンピック時にはどうなる? 撮影/渡邉智裕

「ほぼすべてスタッフの手作りなんです。季節ごとにテーマを決めて、それぞれがテーマに合うものを考えて制作しています。絵がうまいスタッフもいれば、工作がうまいスタッフもいますので、手分けをしながら1~2か月かけて制作しています」(松山さん、以下同)

 今は、来年に向けた子年バージョンになっているが、七夕やハロウィンなど季節やイベントを迎える際は、そのたびに新たに制作して模様替えをしているのだ。そんな苦労も知らないネズミたち。

「作ってもすぐに壊されることも(苦笑)。でも、使ってくれないのは嫌なので、壊されるくらいに遊んでくれるのはうれしいことです!」

 と、ここでネズミたちによる“綱渡り”が始まるとのこと。広場で子どもたちと遊んでいたハツカネズミたちが、次々と天井に張り巡らされたロープを登り渡っていく。一目散に、マイペースに、体が重そうに、道を間違えそうに、1匹1匹に個性があるのがおもしろい。彼らが帰っていくのはねずみワールドだ。

ロープを渡って「ねずみワールド」に戻るハツカネズミ。落ちないようにね 撮影/渡邉智裕

「ここは、ふれあいの仕事を終えたハツカネズミの休憩スペースなんです。本来、ネズミは立体的な動きをしたがる動物で、いろいろな小物を置くことで変化を楽しめますし、運動不足の解消にも役立っているんですよ。

 また、ハツカネズミをじっくり見られる機会はなかなかないので、こうして身体能力が優れている様子をお見せできれば、お客様も楽しくご覧いただけると思います。来年は子年を迎えますので、一層ネズミにチュー目してもらえればうれしいですね(笑)

 ネズミも来園者も夢チューになる小さな世界は、両者を思う飼育員一同のやさしさと温かさが作り出したものだった。─おや、鳥居越しに穴からひょっこり顔を出すネズミが。これはめでたい「初日の出」ならぬ、“ネズミの出”のお写真いただきました!

横浜で「狛鼠」詣で

 野毛山動物園から徒歩15分、出雲大社の御分霊を勧請し652年に創建された、横浜市内最古の社「戸部杉山神社」に到着。ここには初詣にぜひとも訪れたい理由がある。

 社殿を「狛犬(こまいぬ)」が守っているのはほかと差はないのだが、杉山神社はさらに「狛鼠(こまねずみ)」に守られているのだ。

「狛鼠」は意外とスムーズに回転。内側に回そう 撮影/渡邉智裕

「御祭神である“大己貴命(おおなむちのみこと=大国主命[おおくにぬしのみこと])”の神使がネズミなのですが、(平成14年に)当神社御創建1350年を記念して建てられました」

 とは、宮司の佐野顕次さん。かつて大己貴命と須勢理比売(すぜりひめ)との結婚をサポートしたのがネズミだといい、つまりはキューピッド。縁結びはもちろん、福徳開運、家内安全ほか広いご利益があるとされる。

「狛鼠は回転式になっていますので、男性は社殿に向かって右側のオスを時計回りに、女性は左側のメスを反時計回りに、ゆっくりと1回転させ願掛けをしてから社殿を参拝してください」(佐野さん)

 子年に狛鼠。これは運気とパワーをいただけそう!


横浜市立野毛山動物園
神奈川県横浜市西区老松町63-10
開園時間/9:30~16:30(入園は16:00まで)
休園日/毎週月曜日(月曜日が休日の場合はその翌日)
年末年始12月29日~1月1日
入場料/無料
その他詳細は http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/nogeyama/