全裸俳優・原田龍二の「人生、反省。」

 時代劇から刑事もの、ラブストーリーまで幅広く演じる俳優・原田龍二。さらに近年では、旅番組で全裸になって温泉に入る“温泉俳優”として注目を浴び、バラエティー番組では潔く全裸を披露して話題をさらった。

 八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を見せていた2019年6月。『週刊文春』の文春砲に狙い撃ちされ、スキャンダルでもお茶の間をにぎわすことに……。

 現在、反省の旅路を歩いている彼が、今、言葉を交わしたい人と対談をする不定期連載企画。第1回の対談相手は、元サッカー日本代表の前園真聖。彼もまた、過去に辛酸を嘗(な)めた経験の持ち主だ。番組での共演経験もあり、気のおけない関係でもあるふたりが“人生”と“反省”について熱く語り合う!

“反省”が共通点のふたり

原田 前園さんとは、旅番組で一緒にしまなみ海道をサイクリングした思い出があるんですよね。もちろん、現役時代のプレーも拝見していたし、サッカー選手を目指している息子から「サインをもらってきて」とお願いされたのも、後にも先にも前園さんだけなんですよ。今もしっかり飾ってあります。

前園 ありがとうございます! 番組でご一緒したとき、原田さんにはとても気さくに接していただいて、すごく居心地がよかったのを覚えています。僕は人見知りな面があって、仕事で共演した人と仲よくなることはあまりないんですが、原田さんとは連絡先も交換してもらいました。勝手に「芸能界のアニキ」だと思ってます!

原田 それはうれしいですね。僕も、前園さんとまたお話ができるのをすごく楽しみにしてたんです。ただ、この連載のテーマは“人生の反省”なんですよ。

前園 はい……。ご存じの方も多いと思うのですが、以前、お酒がらみで大きな失敗をしていますから……(※2013年に泥酔しタクシー運転手に暴行。しばらく活動を自粛していた)。ずっと反省はし続けていますね。ただ、今は下を向かずに前を見て進んでいこう、という気持ちが強いですね。

原田 僕も同じ。僕は女性関係のスキャンダルでたくさんの人に迷惑をかけてしまいましたが、これからは反省の気持ちを強いバネにして、さらに上に行こうとポジティブにとらえるようにしています。

「行きたくない」自分を支えるのは自分だけ

前園 そうなんですよね。僕の場合、もう1度やり直そうと前向きになれたのは、サッカーをしていたおかげだと思っています。サッカーは、ゴールを決めるよりも、ミスやうまくいかないことが連続するスポーツなんです。

 でも、ミスが怖くてボールをもらわずにいたら監督もチームメートも認めてくれませんから、自らボールを受け取ってドリブルをしなければ、先には進めない。これは、人生で大きな失敗をしたときにも共通していると感じて「ドリブルに失敗したなら、またゼロからスタートすればいい」と切り替えられましたね。

原田 素晴らしいな。前園さんがストイックに自分自身と向き合えたのは、スポーツマンだからだと思いますよ。

前園 たしかに、サッカー人生を経験していない自分が同じ騒動を起こしてしまったら、もっと弱気になっていたと思います。

原田 そういう意味でいえば、自分を成長させてくれたのは“旅”ですね。旅先では、心を裸にしていないと相手も心を開いてくれないんです。特に地方に行って芸能人然としていると、「あの人は芸能人だから」と、地元の人は萎縮してしまうんですよね。

 旅は自分の肩書すべてを取り払って、ひとりの人間として人や景色とどう向き合うか、を試される場でもある。旅での出会いは、心を研磨してくれるんですよね。

前園 なるほど。僕が原田さんとお仕事したときに、いい意味で“素”でいられたのは、原田さんが裸の心で接してくれたからかもしれないですね。

全裸俳優・原田龍二の「人生、反省。」

原田 そう言ってもらえるとうれしいですね。どん底まで落ちた僕に、励ましの言葉をかけてくれる人もいて、ありがたいとは思うのですが、それと同時に「自分を支えられるのは自分しかいないな」と強く感じたんです。

 自分への自尊心が1%でも残っているなら、自ら火をつけるしかない。不祥事以降、自分自身に「おまえ、頑張れ!」と喝を入れるようになりましたね。いろいろな番組に呼んでもらいましたが、絶対にいじられるので、ホンネは「行きたくない」なんですよ(笑)。

前園 じゃあ、スキャンダル発覚後に僕が出演している番組に来ていただいたときも、不安だったんですか?

原田 もちろん、声をかけていただけるのはありがたいですが、正直、行きたくはなかったですね(苦笑)。それでも自分を鼓舞して出演しました。結局、僕を応援できるのは僕自身なんですよね。

前園の暴行に「なんで?」の原田

前園 僕も原田さんと近い感覚があります。すべてを失ったとき、自分の周りからたくさんの人が去っていきました。身近な人だけでなく、街中で「応援してます」とか「一緒に写真撮ってください」とか声をかけてくれた人も来なくなって、その存在のありがたさを痛感したんです。いつの間にか感謝の気持ちが薄れて“当たり前”だと思っていたことは、まったく当たり前ではなかったんですよね。

 そのとき初めて「自分を変えなければ、本当にダメになるぞ」と、自分自身に本気でダメ出しができたと思います。

前園真聖

原田 実は僕、前園さんの騒動のとき「なんでこんなに大ごとになってるんだろう?」って疑問に思っていたんですよ。

前園 いやいや、いろんな人にご迷惑をおかけしましたから、疑問もなにもないですよ!

原田 でも、僕なんか高校時代に何人殴ったかわからないですよ! 当時はやるかやられるかの環境にいたので応戦しないわけにいかないし。ケンカでできた傷痕が、顔にまだいくつか残ってるんですよ。

前園 ええ!?

原田 僕みたいにちょっと変わった人生を歩んでいると、いろいろなことが起きるんでしょうね。

前園 なんだかすごい話になりましたね……。

モンブランのように生きたい

原田 その後、仕事の考え方や姿勢に変化はありましたか?

前園 どんな仕事も本当にありがたいので、ひとつひとつ楽しく真剣に取り組むようになりましたね。

原田 僕もそうです。以前お仕事したときから、前園さんとは何か近しいものを感じていたんですよ。不祥事を起こす前から一生懸命仕事をしていたつもりなんだけど、以前とは一生懸命の“質”が変わったように感じてるんです。スキャンダルがあったから、あったおかげで、仕事がとても尊いものに感じられるようになった。

 実は、前園さんと僕にはもうひとつ“甘い物好き”という共通点があるんですよ。

前園 原田さんも甘い物お好きなんですか!?

原田 はい! 子どものころから大好きで。特にあんこ。

前園 あ〜、和菓子いいですよね! 僕もあんこ大好きです。和菓子だったらおはぎ、洋菓子だったら断然プリンとモンブランですね。

原田 僕も洋菓子だとモンブランがいちばん好きです! モンブランってみんな好きだけど、スタンダードではないじゃないですか。そういう、ちょっと王道からはずれているところが自分の立ち位置と重なるんですよね。モンブラン原田に改名したいくらい。

全裸俳優・原田龍二の「人生、反省。」

前園 ハハハ! すごいですね!

原田 モンブランのように生きたい。最終的に、なんだかよくわからない話になってしまいましたが、今日もすごく楽しかったなあ。また一緒に仕事したいですね。前園さんは温泉好きですか?

前園 好きです!

原田 それならやっぱり、前園さんとは温泉ロケがしたいな。秘湯に行きましょう。

前園 ぜひ! 原田さんが豪快に全裸で温泉に入っていくのも見てみたいし。それから夜は、座敷わらしがいる旅館に泊まって……。

原田 言うことなしのフルコースですね。前園さんと裸の付き合いができるのが楽しみですよ!

本日の、反省

 前園さんはとてもまじめでストイックな方なので、やっぱり失敗と向き合う方法もディープですよね。くしくも、このような形で対談ができたのも、ご縁だと思います。僕は業界の友人があまりいないのですが、前園さんは連絡先を交換している数少ない友人のひとり。
 特に長い時間を一緒に過ごしたい、と思える人にはなかなか出会えませんが、前園さんとなら楽しい空間を共有できるはず。座敷わらし・温泉・スイーツ巡りツアー、実現したいですね!


はらだ・りゅうじ
1970年、東京都生まれ。第3回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞後、トレンディードラマから時代劇などさまざまな作品に出演。現在は俳優業にとどまらず、バラエティーや旅番組に多く出演し、活躍の幅を広げる。芸能界きっての温泉通、座敷わらしなどのUMA探索好きとしても知られている。

まえぞの・まさきよ
1973年、鹿児島県生まれ。Jリーグ・横浜フリューゲルスに入団。海外クラブでのプレーを経て2005年に現役を引退。’09年にはビーチサッカー日本代表に抜擢され現役復帰。現在は、主宰するサッカークラブでサッカーの楽しさを伝えながら、メディアで活躍中。

取材・文/大貫未来(清談社)