1月10日(金)に公開初日を迎えた映画『ダウントン・アビー』の『週刊女性』スペシャル試写会が開催され、スペシャルゲストに皇室ジャーナリストの渡邉みどりさんが登場。本作の魅力はもちろん、皇室&英国王室のマル秘取材エピソードも!
公開中!『ダウントン・アビー』
●舞台は、20世紀初頭のイギリス・ヨークシャーに佇む壮麗な大邸宅『ダウントン・アビー』。そこで暮らすグランサム伯爵クローリー一家と、その使用人たちの人間模様を描いた大ヒットドラマシリーズが、待望の映画化! 映画版では、『ダウントン・アビー』にロイヤルファミリーがやってくることになり、かつてない大騒動が巻き起こる──!?
いちばん面白かったエピソードは
渡邉 英国王室が非常にこの『ダウントン・アビー』ともご縁が深いということで、今回、わたくしの取材エピソードなどを交えながらお話しさせていただければと思います。
──渡邉さんはNHKでドラマシリーズが放送されていたときから『ダウントン・アビー』の大ファンということですが、どういったところに興味を持たれましたか?
渡邉 私がいちばんに気になったのは執事の存在ですね。上流階級のとある家族とその使用人のグループがあって、その使用人の中でも全部取り仕切っている。上流階級にも非常に影響力があって、いなければならない特別な立場の人。その個性の強さに非常に惹かれて、面白い作りになっているなぁと思いました。
──今回は引退していた元執事のカーソンさんが、現場に復帰! あれだけのベテランでないと現場は仕切れないものですか?
渡邉 今回、伯爵家においでになったジョージ五世ご夫妻というのは、今のエリザベス女王のおじいさま、おばあさまにあたる方ですから。そういう方がたとえ1泊でもおいでになるということは大変なことかと。
そんな上を下への大騒ぎであれこれ準備を進めている中で、「何にも準備はいらないよ、全部こちらでやるから」って直前になって王室の方から言ってくる。それがさらに大騒ぎを呼ぶというのが、今回の映画でいちばん面白いところなんじゃないでしょうか。
日本人とイギリス人の繋がるところ
──物語の舞台となるお城“ハイクレア城”については、いかがですか?
渡邉 スクリーンにお城が大きく映るたびに感動しました。このお城を訪れるツアーがあるみたいで、すごく人気があるそうですね。私も一度は行ってみたいものです。
──パレードのシーンも印象的でした。
渡邉 いち伯爵家としてあれだけの催しをして、みんなが英国の国旗を持って、真剣に国旗と国に対する尊敬の念を払う姿に、日本人とイギリス人っていうのはつながるところがあるんだなと思いました。先日の、皇居前にたくさんの人が集まった(新年一般参賀)状況を見ても、何か共通点を感じましたね。
昔、わたくしが日テレにおりましたころ、何か皇室のことでわからないことがあると、“英国王室をお手本に”って原稿に書いとけば間違いないってよく言われたのを思い出しました(笑)。
日本はいろんな海外と交流があるけど、日本にも皇室があって、イギリスにも古くから続いた王室がある。独特な文化を持つ国同士だからこそ、互いに理解しやすいというか、親しみを持ちやすいのかもしれませんね。
──劇中には、強く生きる女性たちの姿も描かれています。
渡邉 今、イギリスはEU問題で揺れていますが、振り返って考えてみますと、世界の近代国家で初めてとなる女性の総理大臣マーガレット・サッチャーを生み出した国ですから。イギリスの女性というのは、どんなところの奥様にしても、どんなところの料理長にしても、向上心というものをすごい持ってるんですよ。
そういったところも、お手本にするべきところかなと。『ダウントン・アビー』に出てくる女性たちも、とても向上心が強い方が多い。そういう面からも、とてもいい映画だと思いますし、若い人にも見てほしいなと思いました。
英国に伝わる“赦し”の精神
──そもそも、渡邉さんが最初に英国王室に興味を持たれたのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
渡邉 ダイアナさんの結婚あたりからなので、実はそんなに古くないんです(笑)。最初はお仕事として携わりました。
それで’86年にダイアナ妃、チャールズ皇太子が初来日した際、青山一丁目の本田技研から赤坂迎賓館まで、8キロのパレート中継を担当して仕切ったんです。ダイアナさんとの距離は、直近1mくらい。本当に美しくて品があるっていうのは、こういうことなんだなって感心してしまいましたよ。
──そんなダイアナ妃は’97年に交通事故死を遂げ、世界中に衝撃が走りました。
渡邉 そうですね。’97年8月31日に、ダイアナさんが恋人とパリで交通事故死をして、世界中で大騒ぎのニュースになりました。当時、「こんなとき英国大使館っていったい何やってるんだろう」って思って、英国大使館に立ち寄ったんです。そうしたらどういうことでしょう。
いつもはバッチリと鉄の扉が閉まって、警備員さんもいる状態で誰も人を入れないようにしているのが、そのときは鉄の扉は開いてるし、お花はいっぱい置いてあるし、近所の人がどんどん中に入っていくじゃありませんか。
中に入ると、いつもパーティーなんかをやるお部屋には、早くも写真が飾ってあって。いろんな人が自由に来て、お坊さんまで来て拝んでるんです。私も’86年の初来日のときを思い出しながら祈りを捧げました。
そして部屋の外に出たらもっとびっくり! 英国大使館の執事が真っ黒なお盆に、冷たい氷水を入れたコップをのせて、弔問に来た人に差し出していたんです。
スキャンダルな死を遂げたわけですから、扉を閉めて誰も入れないと思っていたら、全部オープンにして冷たい氷水まで出して……。そこにエリザベス女王の、代々伝わる“赦(ゆる)し”の精神を感じましたね。
──“赦し”の精神ですか?
渡邉 はい。カミラさんをチャールズの後妻にもらってあげるとか、エリザベス女王の夫・エディンバラ公が自動車の交通事故をしたあと、免許を自主返納させるなど、そういう始末をなさったり。それも赦しの精神ではないでしょうか。
エリザベス女王っていうのは奥深いところがあって、そういう奥深い心を持つ国だから『ダウントン・アビー』のような深みのある人間ドラマを描いた映画ができるんじゃないかなと思いましたね。
皇室ジャーナリストだから語れる
とっておきの取材エピソード
渡邉 今度新しく天皇陛下になられた新陛下が’80年代、英国に留学しておりましたときに、私も取材のため何度か英国に行きました。あちらでは本当にフリーな生活をしていらして、浩宮さまは英国人のSPひとりと、侍従と3人で自転車に乗っておられる姿もお見かけしました。
お買い物も一緒に行き、そのとき何のカードを使ってらっしゃるのかと必死になってのぞきましたら、VISAのカードを使っていらして。非常に親しみを持ったのを覚えています(笑)。
渡邉みどり 早稲田大学卒業後、日本テレビに公募1期生として入社。テレビ番組の制作に携わり、1980年には民放連盟賞、テレビ社会部門最優秀賞を受賞。上皇后・美智子さまと親交を結び、1959年のご成婚記念パレード中継に関わったのを皮切りに、皇室報道に携わる。1990年に日本テレビ退職後はフリーの皇室ジャーナリストとして活動。皇室に関する著書はもちろん、『イギリス王室 愛と裏切りの真実』(主婦と生活社刊)など英国王室関連の著書も。最新刊『かくし親「日本一美智子さまを知る」皇室ジャーナリストは大物政治家の「かくし子」だった!』が話題。