「信作さんから“ほかの男に触らせんなよ”と言われるシーン、本当に大好きなんです! 信作さんは本当に素敵な男性だと思いますね。私だとちょっと手に負えないかもしれないけど(笑)」
フワッと優しい笑顔と、芯の強さを感じさせる瞳──。NHK連続テレビ小説『スカーレット』で、川原家の三女・百合子を演じるのは、子役から活躍し、20年以上のキャリアを持つ実力派女優・福田麻由子だ。
本格的に役者を志したきっかけは
母の穏やかで優しい性格を受け継ぎ、姉の喜美子を間近で支える川原家のしっかり者へと成長した百合子。福田にとって、初の“朝ドラ”出演であり、初めて演じる役柄だった。
「今までは、幼いながらに何かを抱えていて心を閉ざしていたり、ちょっと暗い女の子の役を演じることが多かったんです。“朝ドラ”自体初めてですし、天真爛漫でおっとりした百合子を演じることにすごく不安がありました。
いざ演じ始めると、“こんな感情もあるんだ”とか“こういうふうなものの見方もあるんだ”って新しい発見がたくさんあって、今ではとても楽しいです」
子役として4歳から芸能界デビューを果たした福田。役者という仕事に本格的に向き合うきっかけとなったのは、とある“大女優”との共演だった。
「天海祐希さんが主演で、私が娘役を演じた『ラストプレゼント 娘と生きる最後の夏』という作品は、本格的に役者を志した原体験として記憶に残っています。
当時、私は9歳で、初めて本格的にお芝居をさせていただいたんですけど、天海さんをはじめとしたキャストさんやスタッフさんたちが、私を子ども扱いせず、1人の人間として向き合ってくださったことがすごく嬉しかったんです。
当時の天海さんや永作博美さんは30代半ばで、今の私の年齢からしても、あと10年という時間がある。まだまだたくさんのことを学ぶことができるし、なんてラッキーなんだ!と感じています」
自分と真逆の性格の百合子
25歳の福田だが、『スカーレット』では“13歳の百合子”から演じている。子役当時の自分と向き合うためにも、原点ともいえる作品を見直すことを決めた。
「普段は自分の作品を見直すことはないんですけど、13歳の百合子を演じるにあたり、『ラストプレゼント』を見たんです。25歳の私が13歳の女の子を演じる、というよりも、当時の自分に恥じない演技をやりたかった。
改めて見てみると、あのころ私が目指していた役者という仕事への憧れや情熱に、今でも変わりない熱量があることを再確認できました」
意思の強さを感じさせるところは、百合子と似ているかのように思えるが、自身は“真逆”の性格だそうで……。
「私は自分で人生をどう歩んでいくかを選びたい性格なので、初めは百合子がいろいろなことを我慢しているように見えたんです。でも演じているうちに“私はこう思う”という自我みたいなものがだんだんなくなっていって、私生活でもすごく生きやすくなりました。
自分自身でいるときは、自分に意識が向いていて自我が強いタイプなんですけど、百合子でいると周りの人とか、自分以外に意識が向いている感覚があって、新しい体験でした」
役を演じるにあたり、まずは“形から入る”というが、それにあたって思わぬ支障も!?
「13歳の百合子を演じる前に、裾にフリルがついているピンクのワンピースを買ったんです。百合子は劇中でもピンクの洋服をたくさん着ていて、百合子といえばピンク!と思っていたので(笑)
13歳でいるときはとても可愛く見えたのに、百合子が成長した今は魅力を感じなくなってしまって、クローゼットの隅に眠っています……。演じるキャラクターによって、その時々で性格も変われば着る洋服も変わるくらい、役に染まっちゃって大変なんです(笑)」
あまりにも近い存在だった“信兄”
劇中では、林遣都演じる大野信作との恋模様が気になるところだ。
「やっぱり百合子にとって、信兄ちゃんは“お兄ちゃん”だったので、恋愛に発展させるとなったときに、どういうふうに演じていけばいいのかな、と正直悩みました。あまりにも近い存在の人だったので、恥ずかしくて笑っちゃうことも多くて(笑)
第82話で、手と手を合わせて大きさ比べをするシーンも、本番になったら林さんも笑いをこらえるのに必死でした。冷静になってしまう自分がいて“信兄なにやってるん!”って(笑)」
今後は夫婦となった2人も見どころだとか。
「信作と百合子は平和で温かい雰囲気の夫婦で、作品を通して“癒し”のポジション。2人独自のゆったりとした雰囲気に、みなさん癒されていただければと思っています」
クスッと笑える福田麻由子の小ばなし
撮影当初は、○○が手放せなくて・・・
「『スカーレット』の撮影が始まったばかりの最初の1か月は、慣れない現場で切羽詰まっていて、そのころは毎日ニンニク抜きのキムチをスーパーで買って食べていました。
甘い食べ物を食べてストレスを発散する人は多いと思うんですが、私の場合、仕事で行き詰まると辛い食べ物を大量摂取してストレスを発散します(笑) 今は現場の雰囲気にも馴染んで、青唐辛子を週に2回くらいスープに入れて飲むくらいにとどまっています!」
川原家がハマっていた“遊び”を教えます!
「撮影のとき、北村一輝さんはいつもみんなを笑わせようとしてきて本当におもしろいんです(笑) 本番前に“東京弁バージョンのお父ちゃん”というのをやって遊んでいたんですが、北村さんがいつものお父ちゃんのセリフを現代風にかっこつけた口調で話し出すんです(笑)
“どないしたん!”って豪快なはずのお父ちゃんが、“どうした? 大丈夫か?”ってキラキラしたオーラで話しかけてくるから、いつもとのギャップに笑いがとまらなくなっちゃうんです」
好きなタイプは“無人島に置き去りにされても生き延びられそうな人”
「自分で言うのも変ですが、私はわりと勉強ができて、大人から褒められるタイプの子どもでした。音楽もロックバンドのニルヴァーナを聞くような、斜に構えた子どもだったんですけど、好きなタイプとなると自分とは真逆な人が好きなんです。
本を読んだり、落ち着いた雰囲気の人よりも、サバイバル能力が高くて、火をすぐに起こせる、みたいな人が好きです(笑) あとはゲームのスマブラが誰よりも強いとか、そういう無邪気さがある人がいいですね」
子役ならではの仲間意識、あります。
「子役出身の俳優さんたちがテレビに出ていると、嬉しい気持ちになりますね。特に伊藤沙莉は特別な存在で、子どものころから、人としても役者としてもすごく尊敬しています。
松岡茉優さんとは、大人になってからTBS系『コウノドリ』で初共演させていただいたんですけど、やっぱり親近感というか、特別な思いがあって。みんな今でも役者をやっている、一緒に頑張りたい、という思いがすごくあります」