(写真左から)吉田鋼太郎、川口春奈、長谷川博己、本木雅弘

「初回放送の視聴率が19%を超えたというのは、大河ドラマ関係者にとって何よりも勇気づけられることだったと思います」

 そう話すのは、スポーツ紙記者だ。

 予定より2週間遅れのスタートとなったNHK大河ドラマ『麒麟がくる』が2020年1月19日に放送され、初回平均視聴率が19.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の好発進。キャストはじめ、関係者らも胸をなでおろしたに違いない。

吉田鋼太郎ら“イケオジ”も好評

初回の注目は何といっても、麻薬取締法違反容疑で逮捕され、降板した沢尻エリカに代わって帰蝶役を演じる川口春奈の登場シーン。ドラマ終盤に尾張の織田信秀(高橋克典)が美濃を攻めてくる、という緊迫したシーンで、馬にまたがり駆け抜ける雄姿を見せた。

「12月から撮り直しを始めましたが、もっとも心配されていたのは、時代劇が初めてとなる川口の所作でした。わずか2週間の準備期間しかなかった中で、セリフを覚えることから衣装合わせや顔合わせ、本読みなどまでこなす苦労は、並大抵のことではなかったと思います。でも、わずかなシーンながら初回で川口が見せた“帰蝶らしさ”は、これまでの不安が杞憂(きゆう)に終わったことを証明していました」(同前・スポーツ紙記者)

 放送中もSNSでは川口へエールを送るコメントが目立ったが、それ以上に話題になったのは、色彩鮮やかなまばゆい衣装や“イケオジ”たちの存在、そして、テンポがよく無駄のない、池端俊策氏の重厚な脚本についてのコメントだった。

「目がチカチカする」などの声もあがった衣装について、テレビ誌ライターは次のように解説する。

「ドラマの舞台となる室町時代の衣装を再現したそうですが、当時は原色などの服が多かったため、カラフルなものになったそうです。制作を手がけたのは、黒澤明監督の長女で衣装デザイナーの黒澤和子さんですが、撮影も4Kカメラを使用しているため、よりビビッドになったのでしょう」

 また、視聴者を喜ばせた“イケオジ”たちといえば、松永久秀役の吉田鋼太郎、刀や鉄砲を扱う『辻屋』の店主・宗次郎役の声優・大塚明夫、斎藤道三役の本木雅弘、三淵藤英役の谷原章介、そして名医・望月東庵役の堺正章らだ。

「特に、吉田と大塚のツーショットはファンを歓喜させましたね。また、今回は大河特有の子ども時代から始めたのではなく、明智光秀の青年時代からスタートしているのでわかりやすく、光秀のキャラクターがイメージしやすい。しかも、光秀の置かれている立場や今後、影響を受けるであろうキーマンが一話から登場するというテンポのよさが、視聴者を飽きさせない。さすがの池端脚本でした」(同前)

 池端氏は「透明感と緊張感を併せ持つ光秀役は長谷川博己しかいない」と語っているが、座長としての長谷川は沢尻の一件があった後も、大きなハードルを乗り越えるためにキャプテンシーを見せていたという。

「長谷川さんは光秀の役についてだけでなく、『人』としての考え方や生き方を池端氏と細かく語り合ってアドバイスを受けていたそうで、とにかく“みんなで作り上げていく”という気持ちを大事にしていますね」(NHK関係者)

 東京五輪・パラリンピック期間中の5週間は休止になり、全44回で放送されることが決まったが、出遅れも“沢尻ショック”もはねのける破壊力を持った大河になりそうな予感だ。

(取材/文・小窪誠子)