'18年に公開され、大人たちを爆笑させた映画『嘘八百』がパワーアップ! 第2弾となる『嘘八百 京町ロワイヤル』でも冴えない古美術商の小池と、くすぶったままの陶芸家・野田の“骨董コンビ”を中井貴一と佐々木蔵之介が演じる。本作についてインタビュー取材をしてみると──。
生きるか死ぬかの16日間でした(笑)
中井「続編が決まったとお知らせを聞いたときは“えっ!”のひと言でした。前作を撮影していたときは、これがシリーズになるとか、先のことを考える余裕がなくて。いまを生きることで精いっぱいだったので」
佐々木「どんな環境だったか、わかりますよね(笑)」
前作は佐々木が「生きるか死ぬかの16日間でした(笑)」と語るタイトなスケジュールでの撮影だった。今回は、1週間ほど撮影期間が延びたと聞いたが、
中井「誰ですか? 全方位的にパワーアップしたみたいなことを言ったのは(笑)」
佐々木「1週間じゃなくて、4日間です。正直、あまり変わらなかった(笑)」
劇中のコンビのようなテンポで会話が続いていく。今作のような、できる男とは真逆と言ってもいいおじさん同士のバディものは珍しいのでは?
中井「おっしゃるとおり。人生まだ定まっていない、未来探しみたいなもので出会った2人が励まし合いながら、何かをしていくものが多いですよね。この作品のいちばんは、アウトなふたりを描こうという製作側の勇気(笑)。
でも、実は多いと思うんです。50代くらいでもまだ迷っていて、まだ何か自分の夢に向かおうと思っている人って。もしくは、そう歩めたらいいなと指をくわえている人たちの気持ちを作品が代弁してくれているんだと思います」
例えば、20代のころに描いていた50代、60代とは違い、人は年を重ねるほど生きるのに必死になっていくように感じる。「若いころよりあがかないと世の中についていけないとわかってきた」と、中井は語る。
佐々木「この年齢でジタバタして頑張っているっていうのは、若者にとったら希望なのかもしれないと思います」
中井「20代の方々と仕事をするときに“同等にやれる”っていう気持ちがないと、僕はダメだと思うんです。だからこそ、ジタバタできる自分でありたいなと思います」
“ありがとさん”って言ってくれるだけで楽しい
父の形見をだまし取られた京美人の志野(広末涼子)を助けるために、ふたたび一発逆転の大仕掛けを企てる小池や野田、筆跡偽造の達人・西田(木下ほうか)、表具屋のよっちゃん(坂田利夫)、材木屋(宇野祥平)たち。最後に大どんでん返しが待っている今作でも、おじさんたちのジタバタで次々に笑いが起こる。さぞや、現場でも笑顔が絶えなかったのでは?
中井「そう思うでしょ。でも、現場は必死。人を泣かせるには、セリフの間が2秒でも3秒でも変わらないんです。でも、人を笑わせることにおいては、0・1秒狂うとダメ。そのくらいの間尺を常に緊張して見ていないと、笑ってもらえないんです。先輩でフリースタイルの方がいらっしゃいますが、そうすると、その方を生かすためには周りの人間が0・1秒じゃダメだ、0・08秒でと、せめぎあいをしないといけない。だから、常に現場には緊張感がある」
佐々木「でも、1周まわって“もうええわ”のツッコミが面白いときもありますからね。それに、現場で“ありがとさん”って言ってくれるだけで楽しいですから」
中井「得した気がする(笑)」
佐々木「名前出してないですが、完全に先輩が誰か特定されましたね(笑)」
ふたりに今年挑戦したいことを聞くと、
中井「僕らの仕事って、折れ線グラフじゃなくて棒グラフなんです。毎回、毎回、0から始まる。だから、やることがすべて新しく感じてしまう」
佐々木「そうですよね。作品ごとに変わってきますからね」
中井「だって、この年でも怒られるんだよ“違いますよ!”って。俺ら、いつまで怒られるんだろう(笑)」
佐々木「(取材時に中井が)舞台の稽古をやってらっしゃるから、毎日ダメをもらっているんですね(笑)。“ずーっとダメや、ダメしか言うてくれへん”って気持ちわかります」
美しい人の「条件」とは
最後に、美しいと思う女性はどんな人か聞いてみたところ、
中井「もうね、年齢で本当に変わりますよ。やっぱり10代、20代は、容姿というのが最優先されるけど、だんだん生きざまとか見えないものになっていく」
佐々木「なるほど」
中井「だから、言葉で表現するのがとっても難しくなっていくのかもしれないですね。昔は、こんな人がタイプって、条件を20個くらい言えたでしょ(横で佐々木が「そんなに!?」と苦笑)。でも、そういうことじゃない。女性の美しさとか、男のカッコよさって。目に見えないことのほうにリアリティーを感じるようになってくるのかもしれない」
佐々木「僕は、目に見えるものだったら、やっぱり笑顔かな。作り笑いはバレますけど」
中井「目に見えることでいうなら、よくゴハンを食べる人」
佐々木「それはありますね」
中井「美味しそうにゴハンを食べてくれる人がいちばん好きかもしれない。“わぁ~、美味しそう”ってわざとらしくなく、本気で食べてくれるのがいいですね」
1月31日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開/配給:ギャガ