育休取得中の小泉進次郎環境相

 小泉進次郎環境大臣が国務大臣として初となる育休取得したことが話題になっている。お風呂、おむつ替え、ミルクづくりといったことも担当しているという小泉大臣だが、世間からは否定的な声も少なくなく──。放送作家でNSC講師を務める野々村友紀子が感じたこととは?

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 小泉進次郎環境大臣と滝川クリステルさんの間に男の子が誕生しました。おめでたい!

 しかし、小泉さんの“育休取得宣言”については、いろいろと賛否が飛び交いましたね。元気な赤ちゃんがこの世に産まれて、夫側も積極的に育児に参加しようとしていること、育休取得を推奨することは大変素晴らしいことですが、育休宣言のタイミングが悪かったのかな! 「独身時代に不倫疑惑」や、「政治資金流用疑惑」など、いろいろ疑惑が出てしまったときだったからか、「まずはそこを説明してからでは」「なんかイメージアップのために育休取ろうとしてるんちゃう!?」という厳しい世間の声も多く聞こえてきました。

そんな中、私が少し気になったのは、育休を取ることに対する評価よりも、『休む』ことに対しての批判が圧倒的に多かったこと。

このままでは“産まない選択”が増えていく

 もちろん小泉さんの場合は現役の大臣で、国の環境問題も山積みの中、責任のある立場であること、公人が税金をもらいながら休むという、イメージの良くなさが一番の理由ではあるのですが、あまりその部分が叩かれてしまうと、一般企業のサラリーマンで「責任ある立場の人」などは、ますます育休を取りにくい雰囲気になってしまうのでは? と少し心配になってしまったのです。

 ここ10年で、『育休』という言葉はものすごく一般的になったし、こうして何かと話題に上がることも多くなりましたよね。それはいことだけど、その割に、男性の育休取得率はまだ約6%('18年度)とか!? 低! 低すぎるわ! これでも10年かけて徐々に上がったとのことですが、これってこのペースでいくつもり? 

 女性の社会的地位が徐々に上がり、ガンガン働くママや、キャリアアップしたい女性がどんどん増えている今の時代のペースに、全っ然、追いついてないやんか。まず仕事を頑張ってきた女性が離職せずに安心して妊娠・出産できること、休んでも復帰がしやすいこと、男女ともに育児をしながら働くことが当然の社会にしないと、女性は一回休んだら戻りにくくて退職、せっかく取得した技術もキャリアも水の泡、企業としてもせっかく育った優秀な人材が減るという、社会にとって大きな損失に繋がり、このままどんどん共働き夫婦の“産まない選択”が増えていき、国としては少子化になる一方やで!

 まぁ、そんなんいまさら私がワーワー言わんでも、とっくの昔に偉い人たちが話し合っての今であることはわかっています。しかし、このやり方で啓発し続けるだけで育休の取得率がグーンと上がるとは到底思えない。なので、私の勝手な考えを書かせてもらいます。

「育児するから休む」における『休』の部分

 まず言いたいこと!

 そもそも「育児するから休む」の『休』という部分が、日本人には合ってないんちゃう!? 小泉さんもおっしゃってましたが、『育休』といっても育児は休みなし。決して遊びで休んでいるわけではない。しかし、仕事を休まないことを美徳とする風潮がまだまだ残る社会で働く日本人にとっては、「育休取ってもええねんでー」と、いくら国や上司から言われようが、「自主的に取る休み」には、どうしても抵抗があるのよ。

 取る側にも、取らせる側にも「休む」=「仕事に穴が開く」というマイナスイメージが強いし。数週間休んで育児に専念できるのはいいけれど、取る側にとっては、仕事を休んでいる間、仕事上の情報が入って来ないことや、自分が積み上げてきたことや、お得意先との関係をほかの人に託すこと、育休明けの復帰後の周囲とのズレなど、何かと不安も大きい。周りもそのぶん仕事が増える。こういったマイナスに思えてしまう部分をなんとかしないと、いつまで経っても日本の隅々にこの制度は行き渡らんで!

 だから私は思う!

 ママは産後の身体の戻りのため、しっかり休むことが大事ですが、パパはとりあえず会社行って、働いたらええんちゃう!?

 その代わり、育児が大変な間は働き方を変える! 休まなくてもいいから、毎日、遅く行って早く帰って来たらどうよ! 例えば、朝はママと育児をしてから遅めに出社して、日中働き、夕方になったら帰宅する。これなら、ママがひとりで頑張るのは日中だけ。もし上の子がいたら保育園や幼稚園の送迎、習いごとの送迎、お風呂など、赤ちゃんがいると大変なポイントをパパにお任せできる。

 その期間は「育児するから休む期間」じゃなく、「育児しながら働く期間」にしたらいい。もういっそ、ネーミングも『育休』じゃなくて『育働』にせえ! これなら、全く「休む感じ」がないから言いやすいんちゃう? 「子供が産まれるので育休に入ります」より、「子供が産まれるんで育働に切り替えます」のほうが、堂々と言えるやん。

 家庭によっては、実家の応援があるなしでママの負担や参加してほしい時間帯も変わるし、それぞれ個人で育児しやすいように働き方をカスタマイズできれば、丸々休む必要もなく、取る側の罪悪感や不安も減り、企業の損失も周囲の負担も最小限に抑えられるのではないか。

 だいたい育休って、取ればいいってもんじゃないねん! 育休取ることがイクメンみたいになってるけど、そういうことじゃなく、育休の間に何をするかが大事! 世の中には、せっかく育休取っても、そんなに育児に参加していないパパもいるそうですよ。

 役に立たんパパが一日中、数週間も家にいることは、ママにとっては逆にストレスでしかない! 正直、夫のお昼ごはんだけでも結構大変ですよ。自分の分だけだったら、育児と家事の合間に残り物とか菓子パンとか、テキトーなもので凌げるけど、夫がいるとそういうわけにもいかんのですよ。「なんでもいいよ」というけれど、そういうわけにはいかんやろ! ママにとって育児で大変な中での膨大な家事や夫の食事の支度は、「したくないのにしないといけないストレス」と「したいけどできないことへのストレス」のせめぎ合いですわ!

 だから、パパがせっかく育休取るのなら、おっぱい以外は全て完璧、ママと同等レベルの育児スキルとお昼ごはんくらいは作れる調理スキルを習得してもらいたい。もちろん「言ってくれたら俺も手伝うよスタンス」は腹立つだけでしかないので、早めにその甘ったれの精神を燃やして「俺が全部やる」くらい腹括ってから、意味のある育休を取ってくれ!ということです。

 とにかく、育休が「特別なこと」みたいな日本の風潮、もうええわ!

 誰が育休取ろうがいちいち騒がず、子育てと仕事、両方希望を持って楽しくできる世の中になったらいいですね。

 子どもが産まれたときから夫婦は同時に親にならなければいけない。子育ての大変さ、難しさ、楽しさは、片方だけじゃなく夫婦で『共感』し合うこと。困難なときは『協力』して乗り越え、その中で見える、かけがえのない子供の成長の喜びや命の尊さを、二人で『共有』することが何より大事なのです。制度や風潮は関係なく、“ふたりの子をふたりで育てる”、それこそ自然で当たり前なことなのだから。


プロフィール

野々村友紀子(ののむら・ゆきこ)                      1974年8月5日生まれ。大阪府出身。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属の芸人、2丁拳銃・修士の嫁。 芸人として活動後、放送作家へ転身。現在はバラエティ番組の企画構成に加え、 吉本総合芸能学院(NSC)の講師、アニメやゲームのシナリオ制作など多方面で活躍中。“主婦から共感の声続出!”211項目を数える家事リストを掲載した新刊『夫が知らない家事リスト』(双葉社)が絶賛発売中!」