ひと通り出そろった2020年の冬ドラマ。今期の特徴は病院が舞台の作品の多さ。 医療ドラマは安定した視聴率が見込めるとあり、毎クールのように放送されている人気ジャンルだが、ここまで偏るのは珍しい。さすがに全部はチェックできないと迷っているあなたのために、ドラマウォッチャーのみなさんにおすすめドラマを教えてもらった。
大河ドラマ『いだてん』などの脚本を手がける宮藤官九郎がラジオで「すごいよかった」とコメント。バラエティー番組『ゴッドタン』を担当するテレビ東京の佐久間宣行プロデューサーもSNSで、
《すごいドラマ始まったな》
とツイートするなど、有名クリエイターたちから絶賛されているのが、柄本佑主演の『心の傷を癒すということ』(NHK)。
'95年に起こった阪神・淡路大震災の際に被災者のケアに奔走。肝細胞がんにより、39歳の若さでこの世を去った精神科医・安克昌の人生をもとにしたヒューマンドラマだ。コラムニストのペリー荻野さんも、同作品を“ぜひ見てほしい作品”と太鼓判を押す。
「発生から25年という節目のタイミングなので、阪神・淡路大震災をテーマにした作品は出てくるだろうと思っていましたが、このような切り口でくるとは。セリフでもありましたが、多くの方が亡くなった大地震でも時間がたつと風化し、忘れられてしまう。実在の医師が当時書いたコラムをもとに、心の傷を負った被災者たちを丁寧に優しく描いているので、この時代にこそ見てほしい作品ですね」
『トップナイフ』は『ドクターX』化を狙う?
“手術は成功して当たり前”という世界で葛藤する脳外科医たちを描いた、天海祐希主演の『トップナイフ』(日本テレビ系)。ドラマウォッチャーの北川昌弘さんは“王道の医療ドラマ”と語る。
「ゆくゆくは『ドクターX』のような人気シリーズにしたい感じがタイトルからも伝わってきます(笑)。脳外科に特化しているのでパターンに苦労しそうではありますが、『ドクターX』同様に天才医師が活躍する姿は見ていて爽快感がありますよね」
エンタメライターの大塚ナギサさんは、ドラマ本編以外にも注目しているようだ。
「動画配信サービス『TVer』では、オリジナル動画として天海さんらキャストが踊るエンディングのダンス動画やインタビューを公開するなど、気合が入っています」
若者は『テラハ』に『バチェラー』
週刊女性の読者におすすめの作品としてペリーさん、北川さんがともに挙げたのが、松下奈緒主演の『アライブ がん専門医のカルテ』(フジテレビ系)。日本人の死亡原因の1位である“がん”がテーマ。
「ホームドラマ的な要素もあり、今期の医療ドラマではいちばん感情移入しやすい作品です」(ペリーさん)
「視聴者にも比較的身近であるがんについてわかりやすく描いているので、週刊女性の読者には役立つ情報も多そう」(北川さん)
その真逆でエンターテイメント作品として気軽に楽しめるのが、同名の少女漫画が原作の『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)。
「ドSの医師・佐藤健さんにヒロインであるドジっ子の新人女性看護師が恋をする……というベタベタな少女漫画展開。佐藤さんのファンに限らず、こんなふうにされたい! と女性なら1度は思うようなシーンのオンパレードなので、イケメン好きにはたまらないはず」(大塚さん)
同じく漫画原作なのが『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系)。僧侶でありながら救急医としても働く“僧医”を伊藤英明が演じる。
「タイトルからふざけたストーリーかと思いきや、まじめに医療を描いた作品で驚きました(笑)。僧医を名乗る方は実在しているそうですが、なじみは薄いですよね。そんな役をイケメン一辺倒ではない伊藤さんが演じることで、妙な説得力が出ています」(ペリーさん)
小泉孝太郎主演の『病院の治しかた』(テレビ東京系)は、かつて10億円以上の赤字を抱え倒産の危機に瀕していた病院を経営改革で立て直した長野県の病院がモデル。
「ドラマBiz枠で放送しているだけあり、病院が舞台のビジネスドラマです。『スクール☆ウォーズ』を彷彿とさせるオープニングなど懐かしさもありつつ、ズバッと病院を改革していくストーリーが心地よい」(大塚さん)
最近のドラマの傾向として、医療や警察作品が多い理由を北川さんはこう分析する。
「テレビの視聴者の高齢化に伴い、ストレートな恋愛作品の企画が通りづらい時代。そのため、お仕事ドラマの要素を乗っけないといけないため、今期のようにテーマに偏りが出やすくなっているのでは」
恋愛リアリティーショー人気も影響しているようだ。
「若い世代には『テラスハウス』や『バチェラー』などのリアリティーのある恋愛番組が支持されています。かといって、中高年の視聴者が若いカップルの恋愛作品を見ても共感はできないでしょうし、お仕事ドラマが増えるのはしかたないかも」(大塚さん)
最後にペリーさんは今期の見どころをこう語ってくれた。
「6作品とも描いている内容や切り口がまったく違うので、日替わり定食感覚でその日の気分で見る作品を選んでみるのもアリだと思います!」