去る1月22日発売されたSnow ManとSixTONESのデビューシングルは発売3日でミリオンセラーを記録。2020年のジャニーズ事務所は、ロケットスタートを切った。
2019年は、嵐が2020年いっぱいでの活動休止を発表。ジャニー喜多川社長が死去し、藤島ジュリー景子新社長&滝沢秀明副社長体制に変わるなど、大きな節目を迎えたが、2人にもめでたい新年となったはずだ。
今年のジャニーズは2大テーマを抱える。その一つが嵐のひとまずのラストイヤーであり、もう一つがタッキー副社長路線の本格発進である。
嵐に関しては、5月に開催される新国立競技場のこけら落とし公演や『NHK東京2020オリンピック・パラリンピック放送スペシャルナビゲーター』に就任すること以外、まだ発表されていないが、ファンに直接お別れを言う空間として、2019年に続くドームツアーなども行われる可能性は十分。民放各局も嵐の特番企画に早くも躍起になっており、最後のステージはNHK「紅白歌合戦」の大トリ歌唱が確定的だ。
とはいえ、ここに来て、不穏な空気も流れる。
「メンバーの関係がバラバラ。原因は去年11月の二宮和也の結婚発表です。『なぜ今?』と憤るメンバーがいた。お祝いコメントを出したのが相葉雅紀と櫻井翔の2人だけというのが確執を物語りました」とワイドショー関係者。
祝福した櫻井が今度は、元ミス慶應という30代女性とのバカンスを報じられ、二宮に続くゴールインすらウワサされる。メンバー間の仲の良さが魅力だった嵐の結束が乱れるとなれば、五輪以降の集大成ムードにも影響が出かねない。
そんなこともあり、タッキー副社長としては、新路線確立に力を注ぎたい思いだろう。キーワードは「世界進出」だ。1月2日、帝国劇場での「ジャニーズアイランド」の初日公演前に報道陣の取材に応じた際、ジャニー前社長が夢枕にあらわれ、「僕のやり方にこだわらないで、もっと新しいことをやりなさい」と告げられたエピソードを告白。その霊言を「何を迷っている? 世界をちゃんと見なさい」というメッセージと受け止めたことも明かした。
各グループのYouTubeチャンネルを立ち上げたり、五輪期間中に「滝沢歌舞伎」の公演を予定するなど、すでに国境を越えてジャニーズの魅力を届けたいという思いはあふれているが、夢枕の話は、今年はそれを加速させる決意をジャニー社長の言葉として再確認したという表現だろう。
本格世界進出となれば、ツアーやキャンペーンにも多額の出費が懸念されるが、YouTubeや嵐のネットフリックスのドキュメンタリーなど、これまで利用してこなかったネットによる収入も大きいので、準備は整っている。
「例えば世界的にも人気なBTS(防弾少年団)の公式YouTubeは再生回数数千万回は当たり前、コメント欄には英語を始めとした外国語が溢れています。ジャニーズJrの動画は一部を除きまだそれには及びませんが、外国語のコメントが増えてくれば、世界進出も順調に進んでいると評価できるでしょうね」(アジアでもビジネスを手掛けるIT会社役員)
“ジャニーズ株”相続についての専門家の見解
さて、夢枕でタッキー副社長を鼓舞したジャニーさんだが、事務所に“宿題”も残しているという。
「ジャニーさんの相続が大変らしいですよ。手間と金額の両面で。なにせ一代で築き上げた大芸能事務所。事務所の株式の評価額が高いらしく、それがジャニーさんの相続財産のかなりの部分を占めるようです」(民放テレビ局社員)
ジャニーズ事務所の売上は莫大でグループ合わせて1000億円以上とされ、上場企業並みといえる。しかし株式は上場していない。そこに相続の難しさがあるという。辻・本郷税理士法人の井口麻里子税理士によると、
「まず同族会社の株式の相続では、後継者に株式を集中させざるを得ないことが難題になります。会社の合併や定款の変更など、経営の根本に関わる議案を決議する『株主総会特別決議』では議決権数の3分の2以上の賛成が必要であり、会社の経営権を安定的に握るためにはそれだけの株式を相続することが肝となってきます」
やはり社長を継承した藤島ジュリー景子氏への集中が考えられる。しかし非上場といえど規模が大きい分、評価額も高くなり、株にかかる相続税も大きくなることが予想されるのだ。相続税として納める現金も、上場しているわけではないから株式市場で簡単に株を売って現金化というわけにはいかない現実がある。身内に買ってもらうとしても、経営権がかかっている以上、それほど多く手渡すわけにはいかない。
「娯楽業」の上場企業の株価が相続に関係か
「相続税の算定のため非上場株式の株価を計算する方法には、類似業種比準価額方式と純資産価額方式、という2つがあります。これらを会社の規模に応じてミックスすることで株価は算定されます。
会社の規模の区分には大会社、中会社大、中会社中、中会社小、小会社の5つがあります。大会社ならいずれか有利な方を選べ、それ以外の会社は両方式を併用することになります」(井口税理士)
同事務所の公式サイトの「会社概要」には従業員数は130人(2月7日現在)とあるので大会社の区分なのは間違いない。大会社だと、類似業種比準価額方式で算定される株価を採用するものと考えられる。一般的に類似業種比準価額方式の方が株価が低く算定されるからである。
「類似業種比準価額の計算には、1株当りの配当金、利益、純資産などを使うのですが、面白いのは文字通り“類似業種の株価”がベースになるということです。この類似業種の株価ですが、『日本産業分類』で区分された業種が関係してきます。芸能プロは『娯楽業』という区分になってくると思われます。つまり娯楽業の上場企業の統計をとり国税庁が公表している株価や配当、利益、純資産などをベースに、ジャニーズ事務所の株価を算定するのです」(同)
ちなみに娯楽業といっても、芸能分野に近い劇団や楽団から遊園地、映画館、パチンコホールなどまで多種多様な業種が含まれている。ジャニーさんがそれを知っていたかどうかわからないが、そのような業態の企業の株価が相続に影響してくるのは興味深いといえよう。