ケビン・コスナーがストイックなボディガードに扮し、ホイットニー・ヒューストン扮する歌姫レイチェルを守り抜く『ボディガード』。'92年に大ヒットしたこの映画のミュージカル版が、いよいよ日本人キャストで上演される。
「こんな男性に守られたい」と女性観客のため息を誘ったフランク役を演じるのは、大谷亮平さん。寡黙で男らしいイメージの彼は、まさに、この役にピッタリ!
「いままで僕がやってきた作品は、そういうイメージのものが多かったかもしれませんね。だから自分でも的外れではないはずだと、“合っているほうではないかな”と思っています(笑)」
不器用なボディガードが恋をした
'12年にロンドンで初演されたこの舞台は、来日版が昨秋、ひと足先に上演。この舞台を見た大谷さんは「負けられない」という思いを強くしたそう。
「このミュージカルは初っぱなからレイチェルが歌うパンチのきいたダンスミュージックでスタートして、ダンスもありますし、“ショー”部分の印象がすごく強いんです。そこのインパクトが強烈なので、お芝居の部分は絶対、負けないようにしたい。
過去に傷を背負って生きるフランクという男のキャラクターづくりに全力を費やします。ショー場面のつなぎみたいなことにならないよう、“レイチェルの歌に負けないくらいお客さんを引き込んでいかなければ”と思っています」
最初は職業として守っていたはずのレイチェルとの間に、ロマンティックな変化が生まれる。その恋模様は、不器用でもどかしい!
「不器用かもしれないけど、じゃあ器用だったらどうなるのか、と思うんですよ。うまく仕事と私的な感情を両立させるのか? 彼は無骨でまじめな人ですから、それはできないと思います。
セリフにもあるんです、“自分にできることは、万が一のときに身代わりになることだ”と。守るためには生命を投げだす、というスタンスですね。その覚悟や戒めをもっているにもかかわらず、それを超えて感情が動くわけだから。
やっぱりフランクの人生において、レイチェルはそれほど特別な存在なわけで、その変化が大事ですよね。そして、そこからの決断。これは、女性は大好物なのではないでしょうか(笑)。ふたりの心境の変化、だんだんと近づいていく心の距離感や過程を楽しんでいただきたいですね」
大谷さん自身も女性に対して「守りたい」という意識は持っている方ですか?
「持っているほうです! 女性に守られたいとは思わないですね(笑)」
刺激的なのは「一時的な出会い」
では、これまでに「愛してはいけない人を愛してしまった」という経験は?
「“愛してしまった”というのはないですけど、そういう人に惹かれてしまうというのは、男にはよくあることかもしれないですね。友達が連れてきた彼女がすごく魅力的に見えるとか。
人を好きになるときに、ハードルがあってこそ、みたいなところはありますね。より燃える、的な(笑)。例えば、常に勤め先が一緒とかいうのじゃなくて、そのときだけの、一時的な出会いのほうが刺激されます。この仕事なんて、本当にそうですよ。現場で会ってもワンクールで終わっちゃうので。……って、何の話ですか!(笑)」
韓国で俳優デビュー後、12年も韓国で活躍した大谷さん。もっと早く日本に拠点を移そうと思うこともあったのでしょうか?
「“いつか日本で活動したい”という思いはありましたが、自分からどうこうするということはありませんでした。あまり自発的に動くと、いいことがないんです、僕は。
そうしようと思っても自分から動くとうまく回らなかったものが、その後、偶然の縁でうまくカバーリングされる。その繰り返しでしたから。自分にいちばんいい道を進ませようと考えてくれる、プロの選択に委ねています。
それが結果的にはよかった。もしかしたら、これは大きな振りで、最後にすごいオチが待っていたりしてね(笑)。そういう冗談を言われるくらい、僕は縁に恵まれているんですよ」
今年は40歳を迎える年ですが、何か感じることは?
「どうだろう。僕は気持ちが若いというか全然、大人になりきれていないんです。やっぱり同世代が結婚して家庭を持つ人が多くなってきたので、より一層そう思うのかもしれないですね。
家族を持って大黒柱として生きている人たちの話を聞くと“一歩先、二歩先を行っているな”と感じることがあって。漠然とですが、いつかは僕も“守るべき家族を持ちたい”という気持ちはあります」
初めての舞台に立ち、大人の恋愛を演じることで、また変化がありそうですね。
「この公演が終わるころには、いろいろ感じているでしょうね。これまでいろいろな映像をやらせてもらってきて、いま舞台という新しいジャンルに挑戦する中で、自分がそのときどういう思いになるのかということは、僕にとっていちばんの楽しみです。
学生時代にずっとバレーボールをやってきたから、準備を重ねて試行錯誤をしたうえで“さあ、本番です”というのは、大好きではあるんですよ。
だから、そのとき、自分がバレーボールで経験したようなものを感じられたら、自分にとってすごい財産になるだろうな。そこは本当に期待して、ワクワクしています」
おおたに・りょうへい 1980年10月1日生まれ、大阪府出身。日本でモデルの仕事を始めてすぐ、2003年に韓国でダンキンドーナツのCMに起用され、韓国を拠点にモデル・俳優として活躍。2016年より日本でも活動をスタート。ドラマ『ラヴソング』や『逃げるは恥だが役に立つ』で“逆輸入俳優”としてブレイクする。その後、連続テレビ小説『まんぷく』やドラマ『ノーサイド・ゲーム』、映画『焼肉ドラゴン』などに出演。最新映画『仮面病棟』が3月より公開予定。
ミュージカル『ボディガード』日本キャスト版
'92年に世界中で大ヒットした映画を、あの『I will Always Love You』など映画で使用された曲だけでなく、ホイットニー・ヒューストンのヒットナンバーをふんだんに使い、ロンドンの一流スタッフがミュージカル化。世界で熱狂を呼んだ本作が、新演出で日本キャストによって生まれ変わる。大阪は3月19日~29日 梅田芸術劇場メインホール、東京は4月3日~19日 東急シアターオーブにて上演。詳しい情報は公式サイト(http://bodyguardmusical.jp)で確認できる。
取材・文/若林ゆり