芸人としても役者としても評価が高い、岡村隆史と塚地武雅

 NHK大河ドラマ『麒麟がくる』で岡村隆史演じる菊丸が話題を集めている。

 公式サイトによると菊丸は、《神出鬼没で、敵か味方かわからない》三河出身の農民。2月9日放送の第4話では、主役で長谷川博己演じる光秀のお供として登場し、軽妙な演技が印象に残った。その行動ぶりから、単なる農民ではないのではとみる視聴者もいて、今後も活躍しそうな気配だ。

 一方、フジテレビ「オトナの土ドラ」枠で放送中の連続ドラマ『パパがも一度恋をした』で、亡くなった妻が、なぜか「おっさん」の姿となって帰ってくるという役どころで、自身初の“ヒロイン”を演じるのが、ドランクドラゴンの塚地武雅。見た目は完全におじさんなのに、小澤征悦が演じる夫のもとに帰ってきた、“妻”という役どころを、コミカルに演じている。

過去には大物芸人も役者で活躍

 以前から芸人が役者としてドラマや映画に出ることはあるが、最近また“芸人役者”の活躍が目立ちはじめている。

「岡村さんは、かつて映画『岸和田少年愚連隊』や『無問題』で主演を経験し、ヒットさせています。ほかにも『踊る大捜査線シリーズ』や『妖怪大戦争』、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』でも印象に残る重要な役どころを演じました。塚地さんは、役者としてブレイクした『間宮兄弟』と、あとはなんといっても『裸の大将』シリーズですね。味のある存在感はほかにないと思います」

 と、ある芸能記者は言う。

 もちろん、この2人だけでなく、お笑い芸人またはお笑い出身者の役者としての活躍は、過去を振り返れば大物もいる。

「大物だと、竹中直人さんや片岡鶴太郎さんに伊東四朗さん。監督も務めるビートたけしさんもそうですよね。吹越満さんは劇団WAHAHA本舗に所属していましたし、石井正則さんはお笑いコンビ、アリtoキリギリスのボケ担当、ラーメンズの片桐仁さんなんかも、いまや俳優として欠かせない存在ですよね。原田泰造さん、山口智充さん、友近さんに、大地真央さんとのCM、“今野、愛はあるんか?”で有名な今野浩喜さんも大活躍です」(同芸能記者)

 さらに時代をさかのぼれば、今はジャンル的に少なくなったが、いわゆる『喜劇映画』にお笑い芸人やコメディアンの主演作は数多く存在する。テレビが娯楽の中心になる以前の昭和中期には、クレージーキャッツやドリフターズの映画が何本も公開された。森繁久彌さんや渥美清さんもコメディアンの経験がある。

そういえば宮迫も……

 なぜ芸人は演技仕事でも成功することが多いのか。あるテレビ関係者がこう分析する。

「お笑いの方は、コントや舞台などで、ネタや設定に応じた役柄を演じることが多いですからね。何かになりきることが得意なタイプは、芝居の世界にも入りやすいのではないでしょうか。それから、『吉本新喜劇』や『松竹新喜劇』など、自前の喜劇公演で演じる機会があることも、演技力の向上につながっていると思います」

 しかし、ダメな例も存在する。

「例えばコントのキャラそのまんまだったり、舞台などの演技そのままだったりすると、悪目立ちになってしまい、かえって邪魔になることもあります。例外的に旬の人気芸人を投入する場合は、流行のギャグを一発入れるだけのワンポイント起用という場合もありますが、基本的にはいかにその作品の空気に違和感なくなじめるかが大事。そこを間違えると、すぐネットでたたかれてしまいますから(笑)」 

 ところで、これまで4つの映画賞で最優秀新人賞などを受賞した経験のある、演技派芸人の一角を担ってきた、宮迫博之はどうだろうか。

「宮迫さんの演技力は高かったはずですが、YouTubeを始めるタイミングをはずしてしまったのか再びアンチが騒ぎ出したため、地上波だとまだまだ反発が大きいのでは。役者仕事はもちろん、彼自身の露出が厳しい状態です。でも、映画やネット配信でのドラマあたりで声がかかれば、といったところでしょうか」(同)

 今後も期待される、芸人役者の活躍。「この芸人、こんなに演技うまかったんだ!」または、「この役者さん、元芸人だったのか!」というのが理想の姿だろうか。

<取材・文/渋谷恭太郎>