【小学校受験のお作法2.0】親子力を合わせ、厳しいお受験を乗り越えるためにも、先人たちのリアルな合格体験談はあらかじめしっかりと知っておきたいもの。しかし、幼児教室などで登壇する合格者の経験談は、幼児教室の先生たちのフィルターがかかった内容になりがち。実際にはいろいろな教室に行っていたのに「我が家は本当にこちらの教室のみでした」とコメントされることもあるそう。そこでここでは、お受験コンシェルジュ&戦略プランナーのいとうゆりこさんが、合格者のお母様たちにインタビューを実施。合格するまでの道のり、そして入学後の様子など“生”の声を伝えてくれます。あくまでもひとつの参考とされてみてくださいね。
お受験失敗ママのお怒り、中学受験に向けて
残念ながら私立小学校にはご縁がなく、公立の人気小学校に進学された女の子のお母様。学校には満足しているものの、小学校受験を成功させたママさんの豹変ぶりに怒り心頭のご様子です。
ご家族のスペック
・お父様:関東出身、私立大学卒、サービス業勤務
・お母様:渋谷区出身、中学から女子校、立教大学卒
・お子様:人気お受験幼稚園
――幼稚園を受験された経緯を教えてください。
「私自身、中学受験をして中堅女子校に通っていたのですが、女の子が生まれたときには小学校からその付属小学校へ入れたいと思っていました。しかし、よくよく考えると、もっと上を目指すべき? と思い直し、幼稚園で白百合を受けたんです。
一応、幼児教室には行っていたのですが、一次試験であっさり玉砕。面接の雰囲気に夫なんて完全に萎縮してしまい、娘は“こんな幼稚園、行きたくなかったから落ちて良かった!”なんて言っていました。
そのため、近所の区立幼稚園に入れたのですが、保護者や子どもたちがどことなく感じ悪いんですよ。一応、落ちたとはいえ白百合(学園幼稚園)を目指していたこともあって、公立に違和感を抱いてしまい、早々に退園して私立の人気幼稚園に編入しました。新しい幼稚園は私立小学校受験率も高く、保護者の方々も意識が高めで良かったです」
――小学校受験ではやはり白百合を目指されたんですか?
「そうだったんですが、お教室の白百合クラスで出身者が目を血走らせている姿に何か引いてしまって、出身中学の付属小学校と、出身大学の付属小学校である立教女学院を受験することにしました。
そこで、ご挨拶がてら学園祭に娘を連れて行ったのですが、“こんな学校楽しくなさそう”と乗り気じゃなかったんです。とはいえ、準備もしっかりしていたので、落ちるはずではなかったのですが、結果は不合格でした。
まあ本人はもともと女子校には行きたくないと言っていたので、中学受験で入れたらいいと思うことにして、区立の小学校に進学することにしました。
そこで年明けに港区の人気区立小学校エリアに引っ越したのですが、区外から引っ越してきた転居者のための転居者枠だったのか、運良く希望の小学校に進学が決まったんです!
そこは公立なのに英語教育にも力を入れていて、校内放送や学級通信も日本語と英語の二か国語放送。小学校卒業時にはネイティブレベルになるという、港区のなかでも人気の小学校なんです! 気分良く小学校生活をスタートしたのですが、小学校受験を成功させた幼稚園ママの勝ち誇った態度にちょっと……」
――何があったのでしょうか?
「幼稚園のお友だちとは引き続き一緒に良く遊んでいて、2年生に上がる頃には、中学受験を考えている子たちは、塾の席を確保するために早々とSAPIXに入会したなんて話をしていたんですが、その子どもたちを交えたお遊び会に久しぶりに現れた、小学校受験を成功させたママの豹変ぶりに驚いたんです!
息子さんの進学と同時に、進学先である慶應横浜初等部のある横浜に引っ越していたので、一年ぶりの再会だったのですが。
幼稚園在園中は、わりと地味なお母さんだったんです。いつもすっぴんにメガネ、黒いノーブランドのバックを持ち、雨の日は“視界が広いからビニール傘が一番便利!”なんて言う、気さくな性格でわりと好きなママさんだったんですよね。
そんなママがですよ、毎回違うエルメスの『バーキン』や『ケリー』を持ち、傘はフォックス・アンブレラのフリフリ傘を持ち、首元にはヴァンクリの『アルハンブラ』! ばっちりメイクでまさに雑誌『VERY』の読者モデルみたいな姿で現れるようになったんです。
話を聞けば、幼稚園のあいだはそうした姿を封印していたそうで、若いときはモデルをしていたそう。ご主人とも、モデルとCAのみ参加可能な合コンで知り合ったとか」
――卒園後、急に変わったと。
「ええ、それで毎回毎回、進学先の慶應横浜初等部の自慢話をするので、頭にきて言ってやったんです。
“横浜なんて遠くからわざわざ来るの大変だよね! 帰りの電車混みそうだから早く帰ったら? 中高は藤沢にしか行けないんでしょ? なんか家畜臭いド田舎だよね?”と、ネチネチと攻撃してやりました(笑)。
すると返ってきた返事が“港区を出ても、通う価値があるから! だって腐っても慶應だもん”って。
さらに“すっごく良い学校だから、中学で受けてみたら? まあ難しいと思うけど”と言ってきたんです! 本当に頭にきたので、“あんな自慢話ばかりウザくない? もうあのママは呼ばないで!”とまとめ役のママに頼みました。
しかし、他のママたちは受験の話などを聞きたいみたいで、いつの間にか私が参加しないという感じになっていき……。
小学校受験が成功したからといって、いきなりこんな風に偉そうな態度になるのってどうなんですかね? まあ受験に失敗した私が何を言っても負け惜しみになってしまいますが」
こちらのお母様はご自身が中学受験経験者であり、お子様も女子校よりも家から近い共学に行きたいと希望していらっしゃいました。ご家庭の収入的にも小学校から私立は若干キツいと感じられていたようですので、公立の小学校に進学されたのは結果的に賢明な判断だったと思います。
中学受験で英語力を活かすこともできますし、小さいときから嫌なものは嫌と自己表現ができるお子様のようですので、本番勝負の中学受験でも“好き”な学校に向けてしっかり取り組み、メンタル強く乗り切れると思います。
それに対し、幼稚園・小学校受験は、お子様の成績や地頭などはあまり関係ありません。重要なのは戦略です。願書と面接の点数がかなりの比重を占めます。志望校をしっかり研究し、学校側が求める生徒、家族像を演じる必要があります。
どちらにしろ、お子様とご両親が6年間、12年間、16年間通うという自覚を持って入学していただきたいですし、小学校受験がすべてではないと、このお母様と慶應横浜初等部の自慢ママさんにもお伝えしたいですね。
<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。いとうゆりこ受験情報公式サイトは、https://itoyuriko.studio.design