40代後半、50代、60代男性のプロフィールに書かれている“お相手女性の希望年齢”欄を見たときに、仲人たちが苦笑いすることがしばしばあります。結婚相手に、親子ほど年が離れている女性を求めている人たちがいるからです。ライターをしながら、仲人としても現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は、「その年齢で父親になりたいと思う男性の心理」について考えたいと思います。
資産家の62歳が求める女性の年齢は?
先日、仲人型の結婚相談所で恒例のプロフィール交換会に参加してきました。ネット婚活が当たり前になっているいまの時代に、A4用紙に印刷した会員のプロフィールを交換し合うアナログの交換会。これは通称“手組み”と呼ばれていて、交換するときに、その会員さんの性格やバックグラウンドなどが聞けるので、成婚にも結びつきやすい貴重な機会なのです。
公民館や地区センターの一室を借りて行われることが多いのですが、広い室内には長テーブルがいくつか置かれ、20代、30代、40代、50代、60代と区分けされた場所に、男女分けてプロフィールが並べられています。
60代男性のところを見ていた私は、とても若々しい印象の62歳の男性のプロフィールを見つけ、手に取りました。
男性の年収は1100万円。都内の高級住宅街が密集する地区にお住まいの地主さんでした。年収のほかにも資産がおありです。そこで、その男性のお仲人さんに声をかけ、「ウチのこの女性とお見合いできないかしら」と、53歳のプロフィールを見せました。
私の会員である53歳の女性は、とても若々しくて、語学が堪能。その語学を生かした仕事をしていて、年収が1000万円ありました。すると、お仲人さんは、男性プロフィールの“希望年齢”が書かれている欄を指で差しながら言いました。
「ほら、ここ、ここ」
そこには、「41歳までの女性が希望」と書かれていたのです。
彼の仲人さんが、私に言いました。
「この男性はね、子どもが欲しいのよ。この間までは、女性の年齢を“39歳まで”としていたの。でも、全くお見合いが組めないから、2歳あげて41歳にしたのよ」
62歳の男性ですから、41歳でも21歳の年齢差があります。親子でもおかしくない年齢ですよね。
彼のお仲人さんは、続けました。
「お金もあるし、見た目も素敵。でも、現実をわかっていないの。仮に62歳で結婚したとして、すぐに子どもが生まれても20歳のときには82歳よ!」
もちろん人間の寿命は、人によって違います。もしかしたらその男性が、100歳まで生きるかもしれません。でも、そうではなくてわが子の成人式の晴れ姿を見る前に、人生の終焉を迎えてしまうかもしれません。それは、神のみぞ知る!
この男性は、莫大な資産があれば、若い女性と結婚できると思っているのでしょうね。
見た目年齢40代?でも実年齢は57歳の開業医
そんな立ち話をしていると、たまたま横にいたお仲人さんが、私たちの話に加わってきました。
「ウチにもそういう男性がいますよ。57歳の開業医なのだけれど、35歳以下との結婚を希望しているの。お医者さんだから、年収が4000万円あるし、“自分にはお金があるから、なんとかなる”と思っているみたい。『あなたの年齢で、35歳前の女性を狙っても厳しいですよ』と言っても、聞く耳持たないの」
そして、毎月30件近くの申し込みをし、女性たちからは全てお断りでお返事が返ってきているようです。
実は私、この57歳のお医者さまを、先日、相談所主催の婚活パーティーで、お見かけしていました。お医者さまだからアンチエイジング治療をなさっているのか、シワもなく、スタイルもよく、とても若々しい印象でした。ただ不思議なもので、どんなに若々しく見えても実年齢の雰囲気は醸し出されてしまう。
これは芸能人で例えるとわかりやすいのですが、郷ひろみさんは、キレキレのダンスで踊って歌い、とても若々しい。でも、やっぱり60代に見えます。美魔女で名高い大地真央さんも“年齢に見えない美しさ”と言われていますが、やはり60代の貫禄と雰囲気がありますよね。
つまり、「お若く見えますね」という褒め言葉は、本当に若い人には言はないのです。年齢を重ねている人が若く見られる努力をしているときに、その努力を賛辞する言葉なんですよね。
この57歳の開業医さんも然りで、とても若々しいのですが、やはり50代でもうじき還暦に近い男性という貫禄を身につけていました。
彼のお仲人さんは、言いました。
「断られても全くへこたれずに申し込んでいる。その信念は、すごいと思うわ。これからもずっとこの調子なら、60歳になっても70歳になっても、35歳以下の女性に申し込み続けると思うんですよ。そして、最後には命が尽きるんじゃないかしら」
それはそれで満足でしょう。ご自身の人生は、ご自身のものなのですから。
できるだけ若い女性と結婚!の心理とは?
前出のお2人だけでなく、40代後半、50代、60代の初婚男性は、親子の年の差があるような女性とばかりお見合いしたがります。その理由は、みなさん、「子どもが欲しいから」と、おっしゃいます。
離婚経験があり、別れた妻側にすでに子どもがいたりする男性は、「もう子どもはいらない」という場合もあるので、そういう方は同世代の女性ともお見合いする傾向にあります。
初婚男性は最後のチャンスに、“自分のDNAを残したい”と思うのでしょうか?
仲人さんたちの間でよく話されることです。
「子どもが欲しいのはわかるけれど、ご自身は子どもを作る自信があるのかしら?」
妊娠に大事なのは、“卵子の年齢”だと言われてきましたが、近年は、男性の精子の年齢も影響するというのがわかったようです。
また、夫婦がその行為をするのは、子どもを作るためだけではなく、夫婦の大切なコニュニケーションの一環でもありますよね。
かたや女盛りに向かって性的欲求もますます盛んになっていく。かたや男として静かに終息に向っていく。親子ほど年の離れた年の差婚を希望している男性は、終息には逆行して相当、頑張らないといけません。70歳を過ぎても、日向ぼっこしながらお茶をすするなんてことはできません。
先日、「子どもが欲しいので、30代女性と結婚したい」とおっしゃる53歳の男性が面談にいらっしゃいました。私は彼にこの話をしました。すると、彼は自信満々な口調で言いました。
「その点については、僕は全く心配していません。そっち方面には、自信があります!」
「ああ、そうですか」
それしか言いようがなく、面談終了!(笑)。ただ私の相談所にはお入りにならなかったので、彼の婚活を見届けることはできませんでしたが。
鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/