石坂浩二 撮影/伊藤和幸

 倉本聰が脚本を手がける1年にわたる壮大な人間ドラマ『やすらぎの刻〜道』が3月でついに終幕。前作『やすらぎの郷』から主人公を演じ作品を見守り続けた石坂浩二(78)にクランクアップ間近の現在の心境をインタビュー。作品への思いや撮影エピソード、名優たちとの思い出など、その胸中を大いに語ってもらった。

「思い出すとこみ上げるものがある」

「この現場に来ると昔、ロケに行った話とか、一緒にご飯を食べたときの話とか、いつも昔の話で盛り上がるんです。だから、みんなちゃんとセリフを覚えてくる。

 というのも、覚えていないと撮影の合間に無駄話をする時間がなくなっちゃうから(笑)。現場でも覚えられそうなセリフの量でも、みんな一生懸命に覚えてきてますね」

 幅広い世代から支持を集めた『やすらぎの郷』('17年)の続編として、昨年4月からスタート。いよいよ3月で1年間にもわたる物語がクライマックスを迎える『やすらぎの刻〜道』。主人公で脚本家の菊村栄を演じ続けた石坂浩二に、本作の撮影について聞いてみた。

「いろいろ思い起こされる中で、やはり昨年10月には八千草(薫)さんが、12月には私のお父さん役を演じられた梅宮(辰夫)さんと、共演者の方が亡くなられたのは本当につらいです。

 一緒に芝居をするとセリフのかけあいだけではない、独特のコミュニケーションが生まれるので、ふとそういうのを思い出すんですよ。しかたのないことかもしれませんが、思い起こすとこみ上げるものがありますね

亡き共演者たちとの思い出

 故人を偲び、その思い出を語ってもらった。

梅宮辰夫さん(享年81)役:菊村栄一……すでに他界した栄の実父。愛煙家で酒好きだった。ときどき枕元にあらわれ、栄が手がけるシナリオ『道』について語りかける

「八千草さんとはこれまで何度かご一緒させていただいて。昔、夫婦役を演じたこともあるんです。そのときに食事をご一緒させていただいたことが思い出深いです。

 梅宮さんとは、若いころに遊んでいただいたことがあって。ゴルフを一緒に回ったり、漬物の話をしたりとか。

 山谷(初男)さんは独特の雰囲気がある方でした。残念なことに外で飲んだり、お食事することができなかったんです。この作品で印象に残っているのは、お風呂に入っているシーンですね。

 セリフも何もなく、ただ浸かっているだけなんですけど、それだけで山谷さんらしさが出ていて何ともいえない雰囲気で。一緒に温泉でも行ければよかったなって、ふと思いました」

『やすらぎの郷』に出演されたこんな方たちとのエピソードも。

「野際(陽子)さんとはご夫婦で親しくしていただいた時期がありました。当時、舞台もやってみたいとおっしゃっていて、私が舞台の出身なので、そういうお話をずいぶんしましたね。

 津川(雅彦)さんとは昔、ドラマでご一緒したときに打ち上げで熱海に行ったんです。温泉に行ったんですが、そこが混浴で向こうに女性の団体が入っていて。不思議なもので数で負けるんです。こっちがタオル巻いて逃げました(笑)。

 そんな思い出を撮影の合間にお話ししたら“そうだった、あれは参ったね”って、思い出話に花が咲いたのを覚えています」

石坂浩二 撮影/伊藤和幸

 そして、最後に最終回に向けての見どころを教えてくれた。

「前作は『やすらぎの郷』というものを作り上げ、ひとつの形にして完成させて終わったという感じがしました。そして今回、倉本(聰)さんは特に『道』のほうをおやりになりたかったと思うんです。

 昭和から平成にかけての、ひとつの村の栄枯盛衰みたいなものが描かれていて、非常によかったなと思います。公平たち一家の話も本当に大詰めですが、みんな巣立ったかと思えば、孫たちが帰ってきたり。ある程度、年齢を重ねた人たちは、より共感しながら最後まで楽しんでいただけるのではないかと思います」

いま、プラモに夢中です!
「私、『ろうがんず』というプラモデルの会をやっているんですよ。結成10年のお祝いパーティーも先日やりました。この間まで仲間と戦艦を80隻作って展示したんです。全部で160隻あって、残り80隻を10月までに作ろうと思っていて。ただ、非常に部品が細かいので、目がすぐ限界になるのが大変ですが(笑)、夢中になってます」


『やすらぎの刻〜道』テレビ朝日系 月曜〜金曜 昼12時30分〜

『やすらぎの刻〜道』 (c)テレビ朝日