新型コロナウイルスの感染が拡大する中、政府による突然の臨時休校の要請に各自治体、そして小中高の教育現場は大混乱。でも、いちばん戸惑うのは全国のママたち。ウイルス感染の不安もある中で、最大35日間にもなる自宅待機期間を子どもとどう乗り切ればいいのか……。尾木ママが「家庭ですべきこと」「してはいけないこと」を直球アドバイス!!
(1)勉強:自宅学習で「新型コロナ研究」
教育評論家の“尾木ママ”こと尾木直樹さんによれば、
「各小中学校、高校から“これで家庭学習をやってください”という指示と一緒に各教科の課題が出るはず。それを、家庭で、まずやりきること」
さらに、この空白期間を、より深い学びができるチャンスにもできるという。
「ちょうど4月から学習要綱が変わって“アクティブラーニング”が重要視されます。これは“主体的、対話的な学び”という意味。これを先取りしましょう。たくさん時間はあるわけですから(笑)、例えばひとつのテーマについて自分で深く調べてもらう、なんていう学びを子どもにさせてもいいんじゃないかしら? それこそコロナウイルスの研究をしたっていいの。“世界各国と日本の感染対策比較”という表を作ってみたり(笑)。それだって立派な主体的な学びですよ」
(2)勉強:塾・習い事は「オンライン授業で」
一方、家庭外の勉強──塾や習い事といったことも悩ましいところ。受験生を抱えたママならなおさらだろう。
「今回の要請の中に、塾や習い事は含まれていません。でも、たとえ10人や20人の規模だとしても、あまり換気のよくない小さな部屋に子どもが集まるのを想像してみて? 行かないほうが安全だとボクは思います。本来は、塾や習い事も政府が毅然とガイドラインを示すべき。塾や習い事はインターネットのオンライン授業で参加してもいいんじゃないかしら?」
(3)運動:「部活命!」の子こそ要注意
休校中は原則、自宅待機が望まれる。さまざまな大会などへの参加を含む、部活動も自粛が求められている。
「こういうとき、ママやパパたちに気にかけてもらいたいのは、“部活命!”とスポーツに熱中している子なんですね。大会がなくなって部活も禁止になってポンと放り出されちゃうと、抜け殻みたいな状況になってしまうことがあるの。そうならないように心のケアをしてあげると同時に、“部活ができない間に家でこういうトレーニングをしよう”とか、主体性を持てるプランを一緒に考えてあげてほしいわね」
(4)遊び:非常時だからって「甘くならない」
ストレス発散には、やっぱり遊ぶ時間はもちろん必要だが、そう何度も友達と外出することは現実的に難しい。
「そうなると、親も子どもに対して普段よりもどうしても甘くなりがちですが、そこをグッとこらえて、甘くならないようにして。最低限、遊ぶ際のルールを決めること」
特にスマホの使用には注意。
(5)遊び:スマホのルールは「充電1回まで」
「動画鑑賞やゲームに触れる時間も増えてしまいがちですが、これは注意してほしいですね。特にゲームは、1日2時間を超えると依存傾向が出てくると言われています。この依存はハマることの延長ではないんです。“疾病”として認定されています。ギャンブルや麻薬への依存と同じで、自分では止められなくなってしまうから恐ろしいんです。ゲームにハマりがちなのは特に男の子ですね」
一方、女の子は、
「SNS。これは“絆依存”というんですけれど、女の子は寂しさや孤独感から誰かとのつながりを求めがちなんです。ちょっと油断すると、スマホのSNSアプリを通じて性犯罪などに巻き込まれる可能性も出てきますから」
ただし、“スマホは1日〇時間まで”という時間制限ルールは、意外とうまくいかない場合が多いそう。
「そもそもゲームやユーチューブの動画なんて次から次へとものすごい楽しい動画が流れてくるんだから、大人でも時間ではなかなか区切れないでしょう? だから効果的なのは、スマホの充電は“1日1回まで”とか“1週間に3回まで”とか回数を決めること。そうすると子どもは充電が切れないよう、親子で決めたルールの中で計画的に使うようになるんですね。ルールを決めるときも、ママやパパが上から目線で一方的に押しつけるのではなくて、子どもと相談しながら一緒に決めるということが大事ですね」
(6)生活:「役割を持たせる」で自己肯定感UP
学校が休みの生活では、寝起きのリズムを崩させないことも大事だが、
「せっかく毎日家にいるわけですから“家庭の一員”としての役割を子どもにも持ってもらいましょう。お風呂掃除、お洗濯、お料理でも何でもいいから担ってもらう。仕事を果たすと、そのアクションを家族から“ありがとう”と感謝されるわけですね。家族との交流の中で、自分の存在や行為が認められることは、子どもの自己肯定感につながるの。よりよい家族になれるチャンスだと思って!」
(7)メンタルケア:ママから子どもに「グチこぼして共感力」
こうした中で、子どものメンタルケアも、やはり大切。注意したいのは子どもの年齢による、ため込むフラストレーションの質の違い。
「小学校の低中学年は学校や友達といった“居場所”がなくなってしまったフラストレーションから、心が不安定になりがちなんですね。急に“赤ちゃん返り”したり、おねしょするようになったり寝言を言うようになったり……。そういうときは、ママから話をするのではなくて、子どもの話をとにかく聞いてあげる。“あなたの居場所はここよ”と、受け止めてあげてください」
思春期の子どもは、
「男の子も女の子もフラストレーションをためがち。それを発散しているのが、男の子なら野球やバスケなんかのスポーツや吹奏楽やバンドだったりの文化活動で。女の子なら、スポーツ以外にもポエムを書いたり、アイドルを追っかけたり。これを心理学的には“昇華”というんですけれど、そうやってモヤモヤを外に出すことで大きく成長していくんです。ところが学校へも行けず友達にも会えず、運動もできず、それどころか外へも自由に出かけられないとなると、その営みが止められてしまうんですね」
するとホルモンバランスも崩れ、心と身体をコントロールできなくなるおそれも。
「東日本大震災のときにも、こうしたストレスから子どもをどう救うか、ということが盛んに議論されましたけれど、今回はよりメンタルケアが大切。ウイルスがいつ消えるのか終わりが見えないですから。思春期だとママもパパも子どもに踏み込みづらいものですが、そういうときは、子どもに“コロナのせいで会社がこんなに大変で……”とグチをこぼしちゃいましょ。弱みを自分から子どもに見せて、それを家族みんなで共有する。親子で共感しあえる場をつくることが、いちばん大事なんじゃないかしら」