眠っていて突然、足がつって激痛で起きちゃうことありますよね。それは筋肉量が減り、血流が悪くなっているから。実は、夜中に2度と足がつらなくなる対策があるんです。
就寝中に足がつるのは、日中の行動に原因アリ
ぐっすりと眠っていた深夜に突然、足がつって目が覚めて悶絶。その晩は結局、睡眠不足に……。そんな経験、誰もが1度はあるのでは?
「医学的にいうと、足がつるのは筋肉が痙攣している状態です。実は今のところ、なぜ筋肉の痙攣が起きるのかは、明確にはわかっていません。
ただ、原因のひとつは体内の電解質(ミネラルに属するイオン)バランスの乱れといえます。また、運動した後など筋肉が疲労していると痙攣しやすいのも事実です」(四谷・血管クリニック院長の保坂純郎先生)
保坂先生のクリニックを訪れる患者さんの中にも足がつることに悩んでいる人は多く、その大半は就寝中に症状が起きているという。
「例えば、運動をしすぎたり、逆に慢性的な運動不足だったり、味の濃いものを食べていたり、水分をあまりとっていなかったりすると、筋肉の疲労や電解質のバランスの乱れを招きます。睡眠中は汗をかきますから、電解質のバランスも乱れやすいですし、日中の行動によって生じた負荷が、就寝中に足がつるという症状になって現れると考えられます」
保坂先生は長年の診療経験から、足がつる人の半数以上は足の血流が悪くなっていることを実感しているそう。
「足の血流が悪い患者さんを100人集めた場合、7割の方に足がつる症状がみられるといえます。足は心臓から遠いぶん、どうしても血流が滞りやすいんです」
足がつる症状の陰には、病気が隠れている可能性も。
「いちばん多いのは、足の静脈に瘤(こぶ)ができる下肢静脈瘤(りゅう)です。また、可能性は低いものの、肝臓や腎臓などの内臓疾患を患っている場合もあります」
症状が気になる人は、1度、血管外科などの専門医に相談してみましょう。
【つりやすい足にひそむ病気、下肢静脈瘤とは】
身体のすみずみに行き渡った血液が心臓に戻る血管が静脈。下肢静脈瘤は、足の静脈が太くなり、瘤状に浮き出て見えるようになった状態で、高齢の女性がなりやすい病気です。足の静脈が目立つほか、足がよくつったり、むくんだりなどさまざまな症状が現れます。命にかかわる病気ではないものの、重症化すると不快な症状が現れるため、適切な治療が必要です。
睡眠中に足がつる症状は、中年以降に多くなる傾向があります。その原因のひとつは、筋肉量の減少。若いときに比べて筋肉量が減ると血行が低下してしまい、たいした運動をしなくても筋肉に疲労が生じ、特に睡眠中につりやすくなってしまうのです。
「意外かもしれませんが遺伝性もあるので、親がつりやすかった人は、気をつけましょう。タイミングでいえば、布団から足が出てしまって冷えているときや、同じ姿勢から急に動いたときにつりやすいのですが、その点は寝ている間は気をつけることが難しいですから、寝る前の対策が重要といえます」
つりやすい人の習慣と特徴
1.日中立ちっぱなし、または座りっぱなしが多い
2.お酒をよく飲む
3.味が濃いものを好む
4.慢性的に運動不足
5.コレステロール値が高い
6.閉経後である
7.親も足がつりやすい
足がつったときの対処の基本は、つっている側を伸ばすこと。ふくらはぎがつったらふくらはぎを、太ももの前面がつったら太ももの前をやさしくゆっくり伸ばしてストレッチ。「ひざから下の前も後ろもつって伸ばすに伸ばせない!」という場合は、さするだけでも改善効果があります。
「あの激痛はなるべく経験したくない……」と思っている人は、ぜひ次にあげる予防策をためしてみて。普段から足の疲れをためず、足の血流を促すような生活を心がけてみましょう。
次のページでは、今日からできる『6つのカンタン予防対策』を紹介!
今日からできる! 6つのカンタン予防と対策
予防1 足のグーパー運動
足がつるのを予防するためには、適度な運動が効果的。足の指を握ったり開いたりするだけで、足の血流は格段によくなります。また、イスに座った状態でのかかとの上げ下げ、軽い足踏み、貧乏ゆすりなども足の血流改善を促進します。
予防2 足をまめに休ませる
立ちっぱなしでも座りっぱなしでも、足の血流は滞りがちになってしまうもの。1日のうちに何度か、足を水平に伸ばして休ませる時間をつくりましょう。腰の高さ程度に上げるのが理想的ですが、10~20センチ上げて休むだけでも効果があります。
予防3 味の濃いものを避けバランスのよい食事をとる
塩分を多く含む味の濃いものをとると体内の水分のバランスが崩れてしまいます。濃い味の料理をできるだけ避けることも足のつりの予防に有効です。電解質のバランスを整えるためにも、栄養不足は厳禁。日ごろからバランスのいい食事を心がけましょう。
予防4 日中に十分、水分をとる
日中の水分不足によって電解質のバランスが崩れると、就寝中に足がつりやすくなることも。睡眠中は汗をかくので、起きている間は意識的に水分をとりたいものです。運動時など汗をかいたときには、水よりもスポーツ飲料を飲むのがおすすめです。
予防5 寝る前にお風呂で温まる
湯船に浸かって身体を温めると血流がよくなり、筋肉の疲れがとれやすくなります。お風呂の中で足を軽くマッサージするのもいいでしょう。また、就寝前の軽いストレッチも血流の改善に役立つうえ、睡眠の質も高まります。
予防6 座布団1枚分足を高くして寝る
横になると心臓と足の高さが同じになるので、起きているときよりも血流はよくなります。さらに足の下に座布団を1枚入れると、足は心臓よりも高い位置にくるので、血流がより改善され、就寝中に足がつりにくくなります。
(取材・文/熊谷あづさ)
1986年、日本医科大学医学部卒業後、ノルウェー・オスロ大学留学、日本医科大学付属病院放射線科医局長などを経てニューヨークのコーネル大学付属血管治療センターにて下肢静脈瘤レーザー治療の第一人者より指導を受け、2009年に現在のクリニックを開院。