憧れの大人の女性として人気の、結城アンナ(64)さん。美しいグレイッシュなヘアと張りのある肌、穏やかな笑顔からは、充実した毎日が想像できます。
「もう年だから、歯だって目だって、なんだって少しずつダメになっていく。身体を大切にしなきゃいけないなぁって、改めて思っています」
気をつけているのは「よく寝る」こと、「歩く」こと、「清潔でいる」ことと「イヤなことはなるべくしない」こと。
「いまの私にいちばん大事なことは睡眠! 夜は10時に寝て、朝は5時に起きる。もちろん、夜遅くなることもありますが、そういうときはお昼寝をしたり、就寝と起床の時間を調整します。若いときから、夜のパーティーは自分だけ先に帰っちゃうつまんない女なの、私(笑)」
自分を優しく労われば周りへの愛も生まれる
「人それぞれだと思うのですが、私は60代になって心がとても静かにラクになりました。誰にもつらいときもあるし、いいときもある、みんな一緒。自分だけすごくつらいってことはないし。自分だけすごく楽しいこともない(笑)。セ・ラ・ヴィ(これが人生!)って感じかな」
年を重ねることは素敵なことと思いたい気持ちと怖いと思う後ろ向きな気持ち。そんな思いにアンナさんは「みんな一緒」と寄り添ってくれました。
「40代50代の一時期は『自分がなんでもできる』というありえない自信がありました。だけど、実際はそうじゃない。誰にでもアップダウンはある。誰かが落ちているときにはヨイショって助けてあげて、いいときはよかったね、って喜べばいい。それは、自分を優しくいたわって、初めてわかることですよね」
60代は“老後の幼稚園”、これからを想像して心躍る
俳優の岩城滉一さんと20歳のときに結婚し、いまはひとり娘も独立してふたりの生活に戻ったアンナさん。
「夫婦の形は自然と変わっていく。社交的なカレと内気な私、性格が正反対だから、一緒に生活を始めたときから、それぞれに自分を持っていました。どちらかが無理をして、どちらかに合わせなきゃいけなかったら、いつまでたっても夫婦は戦争。
だからこっちはこっち、あっちはあっちで、好きなことやって、一緒にできることは一緒にやるという形がよかったのかもしれません。といっても、これは私たち夫婦のパターン。それぞれに合っているスタイルがあると思います」
漠然と考える老後についても、
「もしも、私が先に旅立ったら彼は大変でしょうね。今から、ひとりでなんでもできるように訓練させようとしてね、『自分でコーヒー入れるようにしなさい』って言ってるんだけれど、ダメなの。できないの(笑)。それはしかたないわね」
人生100年と言われる今、「60歳からは、老後の幼稚園という気持ちでいるんです。これから私はどうなるの? って、今はすごくワクワクしてる。心配事がないわけではないけれど、心配してもキリがない。それよりも、自分が主役の映画を見ているような感じで、老後を愉しめばいいと思います」
“モデルの仕事でなくても、死ぬまで仕事はしたい”というアンナさん。
「老後は絶対これっていう決まりはないし、これがいちばんっていうのもない。自分が精神的に安心できる場所を見つけることが大事な気がします。そうすれば、楽しいじゃない?」
アンナさんHistory
1955年、日本人の父とスウェーデン人の母との間に誕生。大自然を満喫しながら、ストックホルムで育つ。11歳のときに父方の祖父母の家がある東京に1年間ホームステイし、日本が大好きに。父親の仕事の関係で15歳で日本に移住後、インターナショナルスクールに通うかたわらモデルの仕事をスタート。コマーシャルの仕事を中心に、雑誌『anan』 などのファッション誌でも活躍をした。16歳で知り合った夫の岩城滉一と20歳で結婚。ひとり娘に恵まれ、30歳まではワーキングマザーを、その後、専業主婦になった。60歳を過ぎてから芸能活動を再開し、現在、憧れのシニアNo.1として多くの支持を集める。
1955年、スウェーデン生まれ。'71年より日本に定住。モデル・タレントとして活躍。
取材・文/池野佐知子