俳優・浅野忠信(46)のツイートが反響を巻き起こした。3月18日、自身のツイッターで、
《1万2千円てバカにしてんのか?》
と、発言。新型コロナウイルス問題にともなう経済対策として、政府が1人あたり1万2千円以上の現金給付を検討中だとする新聞報道に反応したものだ。
芸能人の政治的発言はNG?
これには5万件を超える「いいね!」がつき《よく言ってくれた》などの賛同コメントが多数寄せられた。その一方で《金持ちに言われると、イラつきます》《芸能人が無自覚にプロパガンダを垂れ流すのはよろしくない》といった批判コメントも。
ちなみに、浅野は昨年7月にも《税金をこれ以上取らないでください》と、ツイートして話題になった。小泉純一郎元首相ばりのワンフレーズ・ポリティクスがお得意のようだ。
かと思えば、昨年5月公開の映画『空母いぶき』で首相を演じた佐藤浩市(59)は、雑誌でこんな発言をした。
《体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残っているんですね》
《ストレスに弱くて、すぐにお腹をくだしてしまうっていう設定にしてもらったんです》
これが潰瘍性大腸炎という持病のある安倍晋三首相を皮肉っているのでは、と物議をかもすことに。ネット論客でもある作家・百田尚樹氏に「三流役者」呼ばわりされたりもした。
たしかにこれでは、反体制を気取りつつ、医学的には弱者にあたる人へのいじめの構図にも見えかねない。最近、激やせをして重病説も飛び出し、あわてて否定した佐藤は改めて思い直すところもあるかもしれない。
ローラや水原希子も……
かたや、女性ではモデル系タレントの政治発言が目立つ。ローラ(29)は一昨年、インスタグラムでこう呼びかけた。
《美しい沖縄の埋め立てをみんなの声が集まれば止めることができるかもしれないの。名前とアドレスを登録するだけでできちゃうから 、ホワイトハウスにこの声を届けよう》
米軍基地の辺野古移転に反対する立場からの行動だが《沖縄の問題は本当に複雑なのでそれを十分理解した上で行動して欲しかった》《大した知識もないならあまり政治な活動には参加しない方がいいと思う》というネットの指摘も受けた。
また、昨年には《とても愛くるしい保護犬と保護猫ちゃんがたくさんやってきたんだ!みんな優しいご主人さまを探しているの 動物ちゃんたちを幸せにしてあげよう》と訴えたり、ヴィーガン(完全菜食主義者)になったかのような料理画像や文章を投稿したりして、動物愛護的なスタンスをアピール。
しかし、肉じゃがや豚汁を作ったと発言したことから《ヴィーガンじゃなかったのですか?》と疑問の声を投げかけられてしまった。これには“食生活にヴィーガンのお料理をたくさん取り入れている”だけだとして、
《私はヴィーガンになりましたってどこにもゆっていないよ!》
と、反論。「ゆっていないよ」という言い回しがいかにもローラだ。
こうした言動には「ハリウッド」への憧れがあるのだろう。海外の女性セレブタレントは世界平和や環境保護などについて、持論を展開することが珍しくない。ロサンゼルスに住んで英語を学び、海外での活躍を目指す彼女は、そういう言動をカッコよくて正しいものだと考えてもいるのかもしれない。
とはいえ、なにぶん海外流なので、日本のファンには違和感を抱かせることも。その点、学習効果が感じられたのが、水原希子(29)の最近のツイートだ。3月13日「マスク配布、朝鮮学校を除外」というニュースを絵文字ひとつをつけて紹介。その絵文字とは「悲しげな顔」を表現したものだった。
実はこの件、さいたま市が市の管轄下の子ども関連施設だけに配布したため、朝鮮学校や国立の幼稚園は対象外だったというにすぎない。ただ、韓国人の母親をもつ彼女にはルーツの近い立場への同情が働いたのだろう。
それでも、やり方によってはもっと反発されたはず。彼女は以前、中国の現代美術家が天安門で中指を立てたインスタ投稿に「いいね!」をつけたりして、大騒ぎになったことがある。1時間後に「いいね!」を削除し、中国向けに謝罪したものの、そのなかで、
《私は現在日本で住んでいますが、生まれはアメリカです。父はアメリカ人、母は日本で生まれた韓国人です》
と説明。中国での日本人に対するイメージを踏まえての言い訳なのか、今度は日本でひんしゅくを買ってしまった。「日本人じゃないので大目に見て」とでも言っているように見えたからだ。
このような過去を思えば、今回はなかなかスマートな表現だった。芸能人が政治発言をする場合には、こうした工夫が大事なのだ。
というのも、ほとんどの芸能人はネットでの論戦に慣れておらず、海千山千のネット民たちにとってはツッコミをぶつける格好の標的だからだ。政治発言をしたい芸能人は、くれぐれもご用心!
PROFILE
●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。