マスク姿で出勤。業績悪化はボーナスに響きそうで心配

「大手企業は春闘をベアゼロで次々に妥結。まず給料が上がることはない。ボーナスも業績連動なので、かなり厳しくなる企業が続出するでしょう。業種によって濃淡はありますけれども、どこも無傷ではいられないと思いますよ」

 と、経済アナリストで獨協大学教授の森永卓郎さんは言う。

自宅の半径約1キロを生活圏に

 新型コロナウイルスの感染拡大で「都市封鎖」が現実味を帯びる中、雇用が安定している正社員にも不気味な影が忍び寄る。

 個人事業主はすでに、外出自粛や大規模イベント自粛などの影響で経営難に直面。中小・零細企業も業績悪化に危機感をあらわにし、長期化によって体力のある大企業も他人事ではなくなってきた。

 消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんは、

「五輪の延期でさらに業績が悪化しそうな企業も。特にスポンサー企業は広告やキャンペーンを打ってきましたから」

 と表情を曇らせる。

 一方で、感染を防ぐためにリモートワークを導入する企業は増え、対象者は公私ともども「在宅時間」が増加中。いままでのように残業手当がつかず、夏のボーナスも見込み薄となれば、出費を削って自己防衛するしかない。

「自粛ムードの中、しばらく自宅の半径約1キロを生活圏とする“巣ごもり”を覚悟しましょう」

 と、前出の松崎さん。

 自宅で生活を完結させるための蓄えを求めてか、スーパーやドラッグストア、ホームセンターの売り上げは急激に伸びている。

「トイレットペーパーなどの日用品、花粉症などの薬、ペットフードなどが売れています。感染リスクを避けるためネットショッピングする人も増えていますが、ネットや宅配は一定金額まで購入しないと配達料がかかるため、余計な出費をすることがあるので注意してください」(同)

 リモートワークに使うパソコン関連機器やオフィス用品を自前で買う場合も、本当に必要か吟味する必要がありそうだ。

夫が在宅勤務になったら

 また、在宅時間が長くなるほど電気代や水道光熱費がかさむ。

 節約アドバイザーの和田由貴さんは「季節が冬や夏ではないのが救いです」と話す。

「もう暖房は必要ないでしょうから。家庭の消費電力で大半を占めるのは、冷蔵庫、照明器具、テレビ、エアコンです。24時間稼働している冷蔵庫はどうしようもありませんが、日中の仕事は窓際の明るい場所でこなすようにすれば照明代は節約できます。自宅にいると、なんとなくテレビをつけっぱなしにしがちなので気をつけましょう」(同)

 食費にも無頓着ではいられない。

 前出の森永さんは、

「ウーバーイーツを使うなど頻繁に出前を取ると、食費は増えます。自炊がいちばん。幸か不幸か物価は全く上がっていないので、安い食材を安い時期、安い時間帯に1週間分くらいまとめ買いするといい。ザッと下ごしらえして冷蔵庫に入れておけば食費は下げられます」

 と、アドバイスする。

 ほかにも“裏技”が……。

「ママ友などのネットワークがある人は、農水省が一斉休校で余った食材を販売する特設サイト(うまいもんドットコム)をもうけていますので利用しては? 50人分とかとんでもない量なので個人で買うのは難しいけれども、ママ友と分け合えば相当安くすみます。ちなみに送料は国家負担なのでタダです」(同)

 3月は一斉休校によって小・中・高の子どもが自宅にいたため、昼食代が余計にかかった。

 4月から学校は再開される見通しだが、サラリーマンの夫が在宅勤務になったら、やはり昼食代がかかる。

 前出の松崎さんは、

「夫には小遣いから昼食代を出してもらいたいところ」

 と話す。

「全額でなくとも、100円でも200円でも出すべきですよ。会社に行っているときは小遣いから昼食代を出しているわけだし、主婦の代弁者として言えば小遣いから払うべき。家計の支出が増えているんですから。

 “昼飯ぐらい自前でなんとかせい!”と妻は思っていますよ。ただでさえ、自宅で顔を合わせる機会は増えていますし、そうしないと夫婦間がギスギスしてくると思います」(同)

 たしかに、家族で切り詰めているのに夫だけが“得”するようでは軋轢が生じかねない。妻としては夫の“協力”を取りつけたい。

節約は固定費から考える

 このところ、各家庭で増えているのが衛生用品代だ。マスクはなかなか購入できないが、感染防止のためアルコール消毒剤やウエットティッシュ、ペーパータオルなどを買い求める人が多い。

 前出の和田さんは、

「必要のある支出だと思いますが、過度にアルコール消毒に依存するのはどうでしょうか。基本は手洗いのはず。最近は『除菌』をうたう商品も増えており、ハンドソープが売り切れたりしている。

 政府は公式アナウンスで、普通の石けんでいいと言っているのに石けんは売り切れていませんよね。ちょっと冷静になりましょう

 と呼びかける。

 ほかにも、“巣ごもりシフト”に移行するうえで、細かく注意すべき点は多々ある。

「例えば、会社に出勤していたときのお茶代は家計に回すとか、使っていたお金の振り分けを変えましょう。在宅勤務だったらクリーニング代もかからなくなりますよね。夏のボーナスが少なくなることを見越して、ボーナス時のローン代や保険代に回すようにしてはどうでしょうか」

 と前出の松崎さん。

 外出自粛による外食代、飲酒代、レジャー代なども浮いているはずだという。

 前出の和田さんは、

「節約は固定費から考えるのが基本」

 として次のように話す。

「食費や日用品代、交際費などお財布から出ていく変動費は、削ろうと思うと、けっこうつらいんですよ。食材の質を落としたり、おかずを1品減らすと露骨に生活に影響が出ますから。

 でも、住宅ローンや保険、スマホの契約内容など固定費を見直す場合、生活に影響は出ません。手続きは面倒ですが、1度見直すと、ずっと継続できる節約になります」

 知恵を絞れば、痛みを伴いにくい節約ができるという。

 新型コロナの終息は見通せず、“巣ごもり”がいつまで続くかは読み切れない。収入減を覚悟しつつ、ライフスタイルを再構築する必要がありそうだ。