「いま思えば、捕まって本当によかったと思っています」
'16年6月に覚せい剤と大麻を所持していた容疑で逮捕された高知東生は、精悍な表情で当時の心境を語った。
「横浜市内のラブホテルで現行犯逮捕。一緒にいたクラブホステスの女性も同時に逮捕され、不倫関係にあったことも発覚しました」(スポーツ紙記者)
'15年に芸能界を引退し、表舞台から姿を消していた彼の突然の逮捕は衝撃的だった。
「当時の妻だった高島礼子さんが涙ながらに、高知さんに対する思いを語ったことでも話題に。'16年8月に彼女とは離婚し、9月に懲役2年執行猶予4年の判決を受けました」(同・スポーツ紙記者)
薬物に手を染めた理由に関してはさまざまな憶測が飛び交ったが、なぜ道を誤ってしまったのだろうか。
元妻・高島礼子が伝えた“気持ち”
「20代のころに、仕事も遊びもスマートで、憧れていた社長にすすめられたのがきっかけ。僕は28歳のときに芸能界に入りましたが、まったく使っていない時期もありました。ただ、逮捕される7~8年前から、エステ経営も始めて、多忙でストレスが重なることが多くなった。
すると、遊びだった薬物をストレス解消のために使うようになり、自分の中でコントロールできていると思っていた薬物に、いつの間にか心を支配されていきました。薬物によって自分の中でストレスがたまっていくようになり、そのストレスを忘れたくて、また使うという悪循環に陥ってしまいました」
薬物を使っても、気持ちが楽になることはなかった。
「捕まる前から、こんなふうに薬物を使って、それに関わる人間関係を続けていてはダメだと思っていました。家族や自分の周りの人間に嘘をついてまで薬物を使うことに疲れていたんです。だから、麻薬取締官がラブホテルに来たときに、口から“来てくれてありがとうございます”という言葉が出てきた。これでやめられると思ったんです」
逮捕されたことを受けて行われた元妻の会見は、リアルタイムではなく、少し時間がたってから見たという。
「本来であれば僕のことをどんなに悪く言ってもいいのに、会見では“親友であり、同志でもある”と言ってくれました。彼女は女房であると同時に男女を超えた親友でもありました。たくさんのカメラとマイクを向けられて、わざわざそこで言う必要もないのに、彼女なりに自分の気持ちを伝えてくれたことが胸に刺さりました。でも、そんな彼女の姿が、いま僕が生き直そうと思える力になっています」
「1度死のうと思った僕が変われたのは」
ただ、判決を下されてからは思い悩むことも多かった。
「判決から2年くらいたって、“執行猶予の4年間は精神的にもたない”と思い、1度、本気で死のうと思いました。それは薬を使いたいわけではなくて、孤独からです。当たり前ですが、これまで関わってきたほとんどの人が僕から離れていきました。それはそうだろうなと受け入れ、僕自身も、執行猶予期間が切れるまでは謹慎して、誰にも会うことなく反省を繰り返すものだと考えていました。ですが、ひとりで考えていてもいったい誰に謝罪し、どう反省を示せばいいのかまったくわからなかったんです」
一部のメディアの報道も、高知を追い込んでいった。
「心が崩れてしまうので、自分に関する報道を見なければいいのにどうしても気になってつい見てしまうと、別れた妻と復縁するだの、彼女から1億円もらったなど、まったく事実と違うことを報じられました。彼女とは離婚後いっさい連絡をとっていないのに、そういう報道が出ることで、また彼女を巻き込み、傷つけてしまうことが苦しかったです……」
そんな彼を救ったのが、新しい人たちとの出会いだった。
「僕の担当医は、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦さんです。松本先生に、執行猶予というのは回復して社会復帰するための期間なのだと教わりました。その後、自助グループにつながり、同じ痛みや苦しみを持つ人と出会い、この孤独やつらさを抱えているのは自分だけではなかったと救われた気持ちになりました。そうした出会いがあったから、こうして取材を受けることもできるようになったんです。いま、僕は本当に気持ちが楽なんですよ」
心機一転した高知は、ライブや講演会、さらにはインターネット上で放送されるドラマの撮影など、新しいことに挑戦していった。このドラマは、彼にとって5年ぶりの俳優活動となった。
「最初に出演のお話をいただいたときは、“愛人、薬物、ラブホテルとスリーカードそろった僕と共演してくれる人なんていない”と思っていました。でも、僕がもう1度出ることで、同じ依存症で苦しむ人たちが励まされると言われ、俳優に復帰することを決意しました」
共演者やスタッフも集まったことがうれしかったという。
「同じ芸能界の人の反応はすごく怖かったけど、みなさん“頑張って”と温かい声をかけてくれました。自分がしっかり反省してきちんと前を向いて正しい知識の中で生き直していれば、周りの人たちが受け入れてくれるとわかりました。最近、年のせいか涙もろくなってしまったのですが、撮影が無事終わったときはうれしくて泣いてしまいました」
今後の目標について聞いてみた。
「1度は死のうとまで考えた僕が変われたのは、仲間たちと出会い、彼らに助けられたからです。僕は本当に生き直したいと思っています。1年後、2年後に社会がどう変わっていくかわかりませんが、僕をこういうふうに思わせてくれた人たちのために、今度は自分が困っている人の役に立ちたいと思います。執行猶予が切れる、切れないに関係なく、悩んだり、苦しんだりしている人に正しい知識を持って言葉をかけ、助ける側にまわりたいですね」
いつか高知に救われる人が出てくることだろう!