お金に対する考え方と使い方は、人によって違います。お見合いで出会い、お付き合いを始めたカップルも、お金に対する考え方や使い方があまりにも違っていたために、関係がうまくいかなくなることがとても多いのです。
ライターをしながら、仲人としても婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えてゆく連載。今回は、「お金の使い方に見えてくる人間性」についてです。
招待された結婚パーティも値踏みする
佳恵さん(36歳、仮名)は、お見合い後に雅信さん(40歳、仮名)と、交際に入りました。正信さんは誰もが知る上場企業にお勤めで、年収も700万円。結婚するにはいい条件の男性でした。
ところが、初めてのデートを終えて、佳恵さんが“交際終了”を出してきました。あまりにも早いお断りに、何があったのかを聞いてみました。
「お見合いのときはスーツで、まだパリッと見えたのですが、デートに現れた姿は、ヨレヨレのネルシャツにジーンズでした。それにメガネが指紋だらけで白く曇っていて(笑)。すごくだらしない印象でした」
“この格好でいったいどこで食事をするつもりなんだろう”と思っていたら、連れて行かれたのは、駅前にあるチェーン店の居酒屋。おしゃれなレストランに連れていかれたら、男性の格好が浮きまくると思っていたので、佳恵さんは内心ホッとしたそうです。
席に案内され、横に置いてあったメニューを取り出し開くと、雅信さんは言いました。
「ジョッキ生が490円かぁ。高いな。○○なら昼間290円で飲めるのに」
さらに、食事中の会話にも、驚くことの連続でした。佳恵さんは、私に言いました。
「『休みの日は、いつもこんなファッションなんですか?』って聞いたら、平然と、『ジーパンが多いですね。先週、上司の結婚パーティがあったんだけれど、ジーパンで行きましたよ。ホテルとかではなかったのでね』って。いくらホテルではなかったとしても、上司の結婚パーティにジーンズでいくという感覚に驚いてしまいました」
そして、雅信さんは、続けました。
「その結婚パーティー、たいして食べるものもなくってね。ビール以外の酒は、みんな薄くって、かなり予算をケチっていたんじゃないかな。ま、上司の招待だったのでよかったんですけど、会費制だったら、きっと文句が出ていましたよ」
なんでもお金に換算し、ご招待された結婚パーティーにまで文句をつける。そこに彼の人間性を見た気がしたそうです。
私は、佳恵さんに言いました。
「そうね。お断りしましょう。人の幸せを素直にお祝いできない、ご招待されたことに感謝できない。彼は、人に“ありがとう”と言えない人なんじゃないかしら。こんな男性と結婚したら、何かにつけてお金のことを言われて、生活も楽しくないですよ」
お勤めの会社もしっかりしているし、年収もあるし、結婚するにはいい条件なのに40歳で初婚なのは、会話の中でお金の話ばかりして、そのセコさを女性に見透かされてしまうからなのでしょうね。
タダで印刷したことを自慢
美加子さん(34歳、仮名)は、洋治さん(38歳、仮名)とお見合い後、お付き合いに入り、1か月が経ちました。3回ほどお会いしたようですが、お金に対する考え方がどうしても合わないと感じたようです。
美加子さんが、私に言いました。
「お財布の中が、割引券やクーポン券やスタンプカードでいっぱいなんです。それを“セコイ”と嫌がる女性もいると思いますが、私はそこは別に気にならなかった。節約できるところはしたほうがいいし、同じ食事をするにしても、割引券やクーポン券を使ったり、スタンプカードも押してもらったりするほうが得だと思うので。ただ……」
先日デートで、言い放った洋治さんの言葉にあさましさを感じだそうです。
その日、洋治さんは、デートでいくお店の割引クーポン券を印刷したA4用紙を持ってきました。そして、それを見せながら言ったようです。
「これを今日は会社の印刷機で印刷してやったよ。会社のお金で(笑)。ウチは部署のみんなでお金を出し合ってコーヒーやお茶を買うんですけど、備品のコーヒーやお茶は1日に3杯以上は飲むようにしていて。同じお金を払っているのだから、せいぜい飲まないと損だから」
会社の印刷機を私用で使ったり、みんなでお金を出し合って買っているお茶やコーヒーを誰よりもたくさん飲んだりすることを自慢げに言うのはどうなのだろうと。さらにこんな発言もありました。
「高い給料をもらっている人が得かというと、そうでもないと僕は思っていているんですよ。給料が高ければ、そのぶん、健康保険料や税金が高くなる。高い税金で年寄りや経済的弱者を救うような社会の仕組みなんだから、高収入を得るのも考えものですよね」
美加子さんは、私に言いました。
「高収入を得ている人というのは、心にも余裕があって、自分の支払った保険料や税金がお年寄りや経済的弱者に使われていることは気にしていない。洋治さんは、何に対しても1円でも損をしたくないという考え方。心に余裕がないというか、人としての温かさを感じませんでした」
こんな男性と結婚したら、妻が大病をして莫大な治療費がかかることになったら、あっさりと見捨てられそうです。
「ごちそうさま」も言わず、奢られて当然の顔
孝之さん(40歳、仮名)は、婚活歴1年になりますが、先日お見合いをした、さとみさん(36歳、仮名)とは、とてもうまくいっているようでした。「4回目のデートを終えた」と言う報告を受けたので、今後のお付き合いをどう進めていくかについての面談をしました。
孝之さんは、言いました。
「さとみさんとは真剣交際に入って、できることなら結婚までたどりつきたいです。そうなったら、長かった婚活にやっと終止符を打つことができます」
そして、1年間を振り返ってこんなことを言いました。
「40人近い女性にお会いしましたが、本当にいろんな方がいましたね。お見合いでお会いしたときに、挨拶もろくにしない女性もいたし、こちらが質問しても一問一答で返してきて、まったく会話の盛り上がらない人もいた。あと、これは僕の新たな発見でもあったのですが、見合いやデートを終えて会計をするとき、女性の言動で、お金を払うこちらの気持ちもまったく変わってくるのだとわかりましたよ」
大手情報センターでのお見合いでは、“お茶代や食事代は割り勘にする”と取り決めをしているところもありますが、仲人型の結婚相談所の場合、男性がお茶代や食事代をお支払いするというのが通例です。
「男が払うことは、わかっているんですよ。でも、女性側が、『お支払いはどうしたらいいですか?』と聞いてくるかどうかで、払うこちらの気持ちも変わってくる。『あ、大丈夫ですよ。僕にごちそうさせてください』と言って払って、その後に、『ごちそうさまでした』と言われるのは、気持ちがいい。ところが、当然の顔をしてレジの前を素通りしてティーラウンジの外に出て行き、『ごちそうさま』も言わずに帰っていく女性もいた。こっちが払うのがわかっていても、ムッとします」
孝之さんは最後に、「ごちそうさまでした」が言えなかった女性には、交際希望を出さなかったそうです。
「その点さとみさんは、お見合いを終えたときに、『お支払いはどうしたらいいですか?』と聞いてきたし、僕が支払ったら、『ごちそうさまでした』と丁寧にお辞儀をして、『今度は私にお茶をごちそうさせてくださいね』と言ったんです。それだけで『あ、これは交際希望がくるな』と思ったし、次のデートのときは、『この間はごちそうさまでした』と言って、小さなクッキーをお土産に持ってきてくれた。そういう気遣いができるところが、最初から好印象でした」
そして、デートで食事をしても、孝之さんが会計を済ませると、合計金額の半分くらいのお金を、「私の分なので取ってください」と、千円札で渡してくれたといいます。
「毎回そうでした。デートの前に両替していたんです。その気づかいにも心を打たれました」
男女平等の社会になって久しいのですが、どうも“お支払いは男がしたほうがかっこいい”という風潮はまだまだ根強く残っています。そんな中で、男性に恥を欠かせないようにさりげなくお金が渡せる女性は素敵です。
お金に対する考え方、使い方には、本当に人間性が透けて見えますね。
鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/