「4月9日に皇居で行われる予定だった、各国の信任した駐日大使が派遣先の元首である天皇陛下に信任状を提出する『信任状捧呈式(ほうていしき)』が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期に。この儀式が延期になったのは‘11年の東日本大震災ぶりとなります。
同じ理由で、5月末に両陛下が臨席されるはずだった島根県での『全国植樹祭』も、1年ほど延期されることが決まりました」(皇室担当記者)
世界での感染者数が増大している現状に、両陛下も心を痛められているにちがいない。
現在はコロナウイルスの影響で、外出を伴う公務はすべて取り止めとなっている一方、5月1日でお代替わりからちょうど1年となる。
「ご療養中にもかかわらず、令和に入ってからの雅子さまのご活躍は目覚ましいものがありました。
一連のお代替わりに伴う行事や儀式をすべてこなされただけではなく、名誉総裁を務める『全国赤十字社』の全国大会や『フローレンス・ナイチンゲール記章授与式』、両陛下にとって重要だといわれる地方公務『四大行幸(ぎょうこう)啓(けい)』にもすべて出席されたのです」(同・皇室担当記者)
象徴天皇制に詳しい名古屋大学大学院の准教授・河西秀哉さんは、皇后になられてからの雅子さまへの印象を次のように語る。
パレードでの「涙」からわかるもの
「昨年11月の『祝賀御列の儀』で、涙を見せられたお姿はとても印象に残っています。
皇太子妃時代に病気を患い、さまざまなバッシングを受けられるなど、雅子さまはとても苦労されてきました。
それらの苦しい経験を乗り越えて令和を迎え、多くの国民が両陛下のために、わざわざ祝福してくれたことに感極まられたのだと思います。
ご体調が完全に回復されていないとはいえ、この1年、精力的に活動されたのは、国民に喜ばれていることが力の源泉になっているのではないでしょうか」
令和に入って早々の5月末、即位後初の国賓として来日した、アメリカのトランプ大統領夫妻との会見に感銘を受けた国民も多いことだろう。
「元外交官らしく、通訳なしでメラニア夫人とお話しされていて、国際親善を華麗にこなされていたお姿に敬服いたしました。上皇ご夫妻の国際親善も素晴らしかったのですが、令和になってから、さらに踏み込んだお姿を見せていただけたと思いましたね」
そう話すのは、静岡福祉大学名誉教授で近現代の皇室制度に詳しい小田部雄次さん。
平成時代の美智子さまのお姿を踏襲しながら“雅子さま流”を実践されているようだ。
「皇后になられてから、今まで以上に国民との関係性を重要視されているのでしょう。
お出まし先の人々と交流される際、目線を合わせるためにかがんでいたり、じっと相手の目を見つめながら、よくお話しされています。
上皇ご夫妻のやり方を踏襲されているのだと思いますが、1歩踏み込んだ対応をされていると感じます。
皇太子妃時代には、あまり拝見したことのないお姿だったので、皇后としてのご自覚が強くなられたからなのだと思います」(河西准教授)
かつてのつらいご経験が活きている
このスタンスは「かつてのつらいご経験が関係している」と、河西准教授が続ける。
「雅子さまは、長い間苦しんだ経験がおありだということが、これまでの皇后にはないポイントだと思います。
ご自身の経験を踏まえて、世の中で社会的に弱い立場にいる人々の視点や、そういった立場を理解して接することができます。
それは相手の目線に合わせるということにもつながっていて、いろいろな人に寄り添いながら、皇后としての役割を果たされていくことができるのではないでしょうか」
この1年間での雅子さまのご活躍の背景には、ご自身の努力の賜物(たまもの)があるという。
「ご自身の体調に合わせ、工夫と努力を重ねられた結果、万全ではない状態とはいえ、ひとつひとつの活動をこなされたことで、自信も積み重ねておられたのだと思います。
雅子さまはもともとお力のある方であり、皇后というお立場になったご自覚も加わって、堂々とされているように感じます」(小田部教授)
宮内庁OBで皇室ジャーナリストの山下晋司さんは「皇后陛下が令和の“理想の女性像”になる」と太鼓判を押す。
「上皇后陛下は常に上皇陛下の“一歩後ろ”でしたが、皇后陛下は天皇陛下と並ばれているように感じます。時代とともに国民の価値観に合わせて皇室のあり方も変わります。
日本も今後、男女平等意識の下、女性が活躍する社会になっていくでしょうから、上皇后陛下が平成の理想の女性像だったように、皇后陛下は令和の理想の女性像になるでしょう」
ご自身のことばで国民に語りかけることも大切
令和になって最高のスタートダッシュを切ったように思える雅子さまだが、やはり“難題”は抱えていらっしゃるようで……。
「強いて言えば、記者会見などで雅子さまの“肉声”をお聞きできればと思います。
お誕生日でご感想を文書で発表されますが、現在の雅子さまが、どのようにお話しされているのかを知りたいという国民も多いことでしょう。
象徴天皇と皇后は、ご自身のことばで国民に語りかけることも大切なのです」(河西准教授)
‘02年12月を最後に、記者会見に臨まれていない雅子さまの“肉声”を聞くことができるのはいつになるのか。
前出の山下さんは、有志が皇居などで清掃を行う『勤労奉仕団』への挨拶“ご会釈(えしゃく)”をほとんどされていないことを気にかけているそう。
「皇后陛下は大勢の人の視線が一気に向けられるのが苦手のようだという話は聞いていましたが、最近は大勢の人が参加する式典などにも出席されていますので、ご体調が上向きなのは間違いないでしょう。
ただ、年に50回ほどある勤労奉仕団へのご会釈は今年に入ってまだ1度しかお出ましになっていません。
全国各地から集まった国民と触れ合い、地方の話を聞ける貴重な場ですから、皇后陛下もお出ましになれるようになればいいですね」
皇后としての“正念場”は、2年目に待ち受けていると、前出の小田部教授は話す。
「最近、天皇陛下が社会福祉事業の団体に計1億円を寄付されたり、秋篠宮さまの『立皇嗣の礼』の延期検討についても、約1週間前になるまで発表されませんでした。
寄付は以前から決まっていたことでしょうし、行事も政府が決めたことなので皇室の方々は従われているのでしょうが、新型コロナウイルスで大変な状況の中で行うべきことなのか、という疑問も浮かびました。
政府承認のもとでご活動されるものですが、国民とともに歩む皇室でもあるので、令和時代の変化とともに、国民とどんな日本を作っていかれるのかが気になります。
医療崩壊も懸念される中、日赤や済生会などと関係深い皇室がどのような動きをとられるのか、コロナ騒動の渦中である2年目に入ったこのタイミングが、両陛下にとって“本当の正念場”でしょう」
国母として、令和でのさらなる飛躍を期待したい――。