異性に会わなければ、婚活は始まりません。会ってお互いが意気投合しても、その後さらにデートを重ねなければ、2人の距離は縮まりませんし、結婚にもつながりません。それが今、新型コロナウイルスの蔓延で、リアルに会うことが難しくなっているのです。

 ライターをしながら、仲人としても婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えてゆく連載。今回は、「コロナのピンチをチャンスに変えられた人、変えられなかった人」について記します。

新型コロナは婚活業界にも……(写真はイメージです)

コロナに感染したかもしれない彼女のイライラ

 中国武漢から発して、中国全土に広がっていた新型コロナウィルスのニュースが、今年に入ってから頻繁に報じられるようになりました。当初、日本は他人事でしたが、クルーズ船、ダイヤモンドプリンセスでの船内感染が報じられるや、急に身近な問題として感じるようになりました。

 “そのうち終息するだろう”と楽観視する向きもありましたが、感染者は増えていく一方。そんな中で芸能界の感染者も出てきて志村けんさんが亡くなり、コロナ感染に対する緊張感も一気に高まっていきました。

 今は終わりの見えない戦いに不安が渦巻き、世の中は混沌としています。そんな中で、婚活者たちも迷走中です。

 先日、誠司さん(40歳、仮名)から、こんなLINEが入ってきました。

「佐恵子さん(35歳、仮名)のご両親と3月半ばにやっとお目にかかれたので、これから結婚に向かって話を進めていけると思っていたのに、その日以来、全くお会いできなくなりました」

 地方都市に住んでいる佐恵子さんのご両親が、ご親戚の用事で上京することとなり、「それならばいいチャンスだから」と、4人で都内のレストランでランチをしたそうです。

「結婚を前提に真剣にお付き合いをさせていただいています。世の中がこんな状況ですが、コロナが収まったころに、また正式にご挨拶に伺わせてただきます」

 誠司さんは、誠意を込めてそうご挨拶しました。その日は、和やかなムードでお開きとなり、ひと安心。ところが、翌々日、佐恵子さんから、「体調が悪い。熱が37.5度ある」という LINEがきました。

 熱が出てきたといえば、このご時世、誰もが“コロナに感染したのではないか”と疑います。急速に悪化して亡くなっている方も出てきているので、誠司さんは、心配でたまりませんでした。

 会うことができないので、電話をしたり、LINEを入れたり、いつもよりも多く連絡を入れてしまいました。また、フルーツ、レトルトのおかゆ、インスタント味噌汁やスープを送りました。お見舞いの品を送ったことをLINEで知らせると、こんな返信が来ました。

「少し放っておいてくれないかな。熱があって体調の悪い病人に、何度もLINEや電話をしてくるのは、配慮が足りないよね。昨日母が、1週間分の食事を小分けにして持ってきてくれて、冷凍庫に入れて、帰っていったの。お見舞いの品を送ったというけれど、私が宅急便の人の前に出て行って受け取らないといけないよね。パジャマ姿では出ていけないので、着替えなくちゃいけないでしょ。母も、“無神経な人ね”と言ってたよ」

 このLINEが来て、誠司さんはガックリと肩を落とし、私に連絡を入れてきました。

「『ごめんなさい』と謝りのLINEを入れようかと思ったのですが、それをすると、『またLINEを入れてきて』と叱られそうでできずにいます。ご両親にお会いしてご挨拶させていただいたとき、『娘をよろしくお願いします』と言われてうれしかったのですが、お母さんから“無神経な人”と思われてしまったのかと思うと、心痛みますし、心が折れそうになります」

 佐恵子さんは、体調が悪くて心に余裕がなくなっていたのでしょう。

 もしかしたら誠司さんも、体調の悪い彼女に対してどう振る舞うべきか、もう少し想像力を働かせたほうがよかったかもしれません。

 ただ人の好意にも腹を立てる。イライラして厳しい言葉を投げつける。これはいかがなものでしょうか? ふたりが結婚したときの生活がなんとなく見えてきませんか?

 あれから誠司さんは、佐恵子さんに連絡を入れていません。こうなると“交際終了”になるのも、時間の問題でしょう。 

「コロナの中、会うのがストレスでした」

 また、こんなカップルもいました。

 昭一さん(39歳、仮名)は、百子さん(34歳、仮名)と1月にお見合いをして交際へ。そこから毎週のようにデートを重ねていたのですが、3月に入って世の中のニュースがコロナ一色になったころに、百子さんからこんなLINEがきました。

「しばらくの間、会うのは控えたいです。ずっと言おうか言うまいか悩んでいたのだけれど、コロナのニュースが毎日報道されている中で、会ってデートをしていることがずっとストレスでした。いつかは終息するだろうと思っていたら、状況は悪くなる一方。昭一さんに会うのが嫌なのではなく、こんな状況だから外出するのが嫌なの」

「デートしていたことがストレスだった」と言う言葉を聞いて、昭一さんは、すっかり落ち込んでしまいました。「不要不急の外出は、控えてください」と日本政府も小池都知事も、メディアを通じて訴えていましたが、昭一さんは、将来の伴侶となる人と会うことは、“不要不急の外出には当たらない”と思っていたからです。

「ランチをしながら、楽しく会話ができていたと思っていたのは、僕だけだったのですね。百子さんは、ストレスを感じていたんです」

 こう私に告げた昭一さんの声が、落ち込んでいました。

 今回の新型コロナウイルス騒動の中、婚活者たちを見ていると、感染をどう捉えるか、ウイルスにどう立ち向かうか、今何をすべきか、そこにその人の人間性が映し出されるような気がしました。

 日本に感染者が出たニュースが報道されるや、いち早く休会を決めた会員がいました。その方には、業務上、連絡しなくてはいけないことがありメールを入れたのですが、お返事もありませんでした。

 決定されていたお見合いの日程を、「再調整してください。コロナが落ち着いてからのお見合いにしてください」と言ってきた会員もいました。

 気にせずにお見合いをしている人たちもいましたが、さすがに緊急事態宣言が出てからは、リアルにお会いするお見合いはなくなりました。

 そんな中、テレビ会議ができるZoomというアプリを使ってお見合いをする人たちが出てきました。

 結婚相談所では、個人情報を保護する観点から、お見合いが成立したときにお相手に知らせるのは、苗字のみです。お見合いを終えて、お互いが交際希望を出し、交際になって初めて、フルネームと電話番号の交換をします。

 スカイプやLINEビデオは、個人のIDを交換しないといけないので、個人情報を保護する観点から使えないのです。

 Zoomは仲人がホストになり、お見合い開催のミーティング設定をして、URLとパスワードをおふたりに送れば、個人情報を交換することなくネット画面を見ながらのお見合いができるのです。

 また、コロナが蔓延している中、友達に思うように会えない人たちが“Zoom飲み会”をするのもブームになっているようです。

 先日、会員の達彦さん(37歳、仮名)から、こんな連絡がきました。

「5月に入ったら、清美さん(35歳、仮名)にプロポーズをしようと思っています。こんなご時世なので、なかなか会えないのですが、LINEのやり取りは毎日しています。LINEビデオを使ったりもしますが、この間は、お互いの友達も交えて、ZOOM飲み会をやりました。ネット上の合コンみたいな感じが新鮮で楽しかったです」

 “ピンチをチャンスに変える”という言葉がありますが、どんな状況下になっても、それを前向きに捉えられる人は、その状況下での楽しみ方を見つけていきます。

 人に会うことが制限されるのは、かつて経験したことのない初めての事態です。誰もが混乱していますし、不安になっています。だからこそ、今この時期をどう過ごすか。どんなふうにコミュニケーションをとっていくか。

 今うまくコミュニケーションを取れるか否かで、コロナ騒ぎが終息したときのカップルの明暗が別れるような気がしてならないのです。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/