わが子の成績が落ちると、エクセルで勉強の計画表を作りだす“コンサルパパ”が続出! イラスト/イケウチリリー

 コロナショックが広がる中、心配なのが、休校中の子どもの学力。ちっとも勉強しない……と嘆く前に、ダメ親になっていないか〇×でチェック。「デキる子」「伸びる子」が育つ家庭は、ココが違っていたんです!

高学歴の親は“理想の勉強法”を強要しすぎる

Q1:子どもの将来は親の学歴次第?

「×です。子どもの学力は親の学歴だけで決まるものではありません。むしろ学歴の高い親ゆえ、子どもにダメージをもたらすこともあります」

 こう語るのは、超難関中学への進学実績を誇る、プロ家庭教師の西村則康先生だ。

「高学歴の親は勉強法がわかっているぶん、こうやるべしとの思いが強すぎて、親が理想とする勉強法を強要しすぎる傾向があります。子ども自身で考える自由を奪いがちです」(以下、西村先生)

イラスト/イケウチリリー

 特に小学生の場合、子ども自身が“学ぶことが楽しいし、好きでやっている”と思えるように導かなければ、学力は決して伸びないという。

「例えば算数が嫌いなら、“算数、嫌いなの!?けっこう、できるのに変ね”。そんなふうに演出すると、子どもはノって勉強するようになりますよ」

Q2:国語より算数のほうが重要?

 なにかと理系がもてはやされる最近だけど……、

「算数は大切ですが、国語も同じぐらい大切。ですから答えは×ですね」

 中学受験で顕著だが、最近は、算数の問題文の文字量が非常に多い。算数の力があったとしても、じっくり問題を読み込む国語力なしには、解けないものになっているのだ。「大学入試改革でも同じです。表現力や読解力、思考力を重視しようという流れになっています」

 そんな傾向の中、わが子の国語力を高めるには、むやみに速読をさせず、一語一句に注意して読ませるという指導が大切。

「たくさん勉強させようと、早く読ませるやり方は逆効果。言葉の意味が咀嚼(そしゃく)できるスピードで読ませてください。最も効果的なのは、親子一緒に音読することです」

親のヘタレ体験が子どもの救いに!

Q3:成績はエクセルで管理して当然?

「明らかに間違い。×です。わが子の成績が落ちると、エクセルで勉強の計画表を作りだすお父さんがすごく多い。1セルを何分刻みにするかから熟考してみたり(笑)。

 でも、子どもにしてみれば、自由を奪われたようにしか感じられません」

 まるで部下や取引先のように子どもに接する「コンサル親」、「プレゼン親」は、“わが子はこうあるべき”という理想が高く、それを子どもに押しつける傾向が。特に高学歴の父親に多いとか。

「子どもは“ちょっと頑張ればなんとかできそう”と思えるものしか頑張れません。だから親も、“今より少しでもよくするには、どうすればいいか?”というところから考えないと。子どもの“ちょっと頑張ろう”と、親の“ちょっとよくしたい”とが重なるところを探すことが大切。それを踏まえて、もし計画表を作るなら親の愛情を感じさせる手書きで、お子さんと相談しながら作りましょう」

Q4:子どもを伸ばすにはヘタレな体験を語れ?

「そのとおり、○です! お父さんやお母さんも手痛い失敗をしたことがあるけれど、こうして克服したよ──。そんな話がベストです」

 結局、失敗を克服できないで挫折してしまった経験も「それはそれでアリ」と、西村先生。親だって人間。うまくいかないのは自分だけじゃないとわかり、子どもにとって救いになる。それでも懸命に努力したことが伝われば、“失敗しても人生の終わりじゃないし、その経験から多くを学べる”という教育にもなるのだ。

イラスト/イケウチリリー

 最悪なのは、武勇伝、すなわち学生時代に自分がどれだけ優秀だったかを語る親。

“親である私がこれだけデキたんだから、おまえもデキる”と言われても、子どもは自慢話としか受け取れません。未来は変わりうるということを経験的に知りませんから、“優秀な親と、そうでない自分”という現在の位置づけで物事をとらえてしまう。“どうせ自分は……”となり、励ましにはならないのです」

“キッチンの鏡”が成績アップのカギに!

Q5:妻をホメると子どもの成績UP?

 家事をやるのは当たり前。子どもの成績が下がれば夫から責められ、子どもの尻をたたけば憎まれ口をきかれ……。日本の多くの母たちは、いまだに損な役回りをしている。

そんなお母さんを癒すのは、お父さんからのホメ言葉です。自分の頑張りがきちんと認められると、お母さんは子育てのプレッシャーからくる切迫感が薄れ、ほがらかになる。子どもも、そんなお母さんに喜んでもらいたいと頑張り始めて、成績が上がる。好循環が生まれます。

 だから夫は妻に“子どもがちゃんと育ってくれているのはキミのおかげ。ありがとう”と、ねぎらいと感謝の言葉をかけるべし。エクセルで勉強の計画表を作るより、ずっと効果があります」

イラスト/イケウチリリー

Q6:子どもの出来は家の中が左右する?

「○です。片づきすぎず散らかりすぎない玄関で、リビングには本や図鑑、地球儀があり、そしてキッチンに鏡がある。そんな家庭の子どもは必ず伸びます!」

 整然とした玄関は、親がきちんとしすぎていて、子どもにもそれを押しつけているケースが多いと西村先生。

「こうした家庭では、子どもも四角四面な場合が多く、発想が広がりません」

 リビングの本や図鑑など、またキッチンの鏡は、母子関係がうまくいっている証。

「子どもはほがらかな雰囲気のなかで、お母さんに見守られながら勉強したいものですし、実際にリビング学習は能率も上がります。キッチンの鏡は、お母さんが寄せてしまいがちな眉間のしわ、つまり自分が発している雰囲気をチェックするアイテム。鏡を見て余裕をなくしていないか確認して、なごやかな雰囲気を心がけることができます」

親のボキャブラリーが子どもの国語力に影響する

Q7:夫婦の会話が多いと国語力が上がる?

「これも○。お子さんの国語の成績が悪いという相談は多いのですが、そう訴えてくるお母さん自身にボキャブラリーが少なく、きちんとした言葉遣いのできない方が目立ちます。会話の機会が乏しいのかもしれません」

 子どもは親から言葉を学ぶ。自分に向かって話された言葉だけでなく、身近な大人である父母の会話からも学んでいるのだ。

「夫婦の会話が少なかったり、“てにをは”が正しく使われていないようでは、子どもは正しい日本語を学べません。国語力を向上させたいなら、親は、会話を増やすことが欠かせないのです」

Q8:質問されたら「辞書で調べなさい」が正解?

「×です。子どもにとって辞書は、わからない言葉を、別の抽象的な言葉に置き換えているだけのもの。自分で調べろと言うより、親が自分の言葉で説明してあげるほうがいいでしょう」

 親がいつも正確に説明できるとは限らないが“これはこういう意味じゃないの?”と言うだけでも十分だとか。

「正確でなくても、言葉を取り巻く周辺部分の情報は子どもの耳に入っていきます。それを手がかりに言葉の核心をつかんでいけるのです」

 教えるより、親子で会話することのほうが大切なのだ。

コロナで休校。家ではとにかく長く勉強させるべし?

今のような非常時は、勉強よりも、生活のリズムを整えることのほうがずっと大切。夜遅くまでゲームをやって、昼ごろ起きるような生活ほどよくないものはありません。

 長時間にわたって勉強させようとするよりも、算数のプリントと漢字のプリントを1枚ずつなど、ちょっとした時間でできる課題を決めて、それを続けるようにさせてください。目安は、算数と国語の場合、それぞれ“子どもの学年×10分”。1年生なら算数10分、国語10分の計20分で十分です。これができるお子さんは、さらなる勉強にも十分に対応することができますよ」(西村先生)


教えてくれたのは
西村則康先生
有名最難関中学に2500名以上の合格実績を持つ、プロ家庭教師集団「名門指導会」主宰。受験に家族を結束させる指導法に定評がある。最新刊『子どもの学力を伸ばす親 ダメにする親』(KADOKAWA)ほか著書多数。

(取材・文/千羽ひとみ)