「つい最近まではフレンチレストランのオーナシェフを務めていたイメージですが、今回はラーメン店の女主人です。上品で優雅な雰囲気を持つ京香さんの、昔ながらの調理服だけで破壊力バツグン(笑)。初回視聴率こそ5.1%ですが、SNSで“おもしろい”と話題になっていますよ」(テレビ誌記者)
4月21日にスタートした鈴木京香主演ドラマ『行列の女神 らーめん才遊記』。これが彼女にとって、テレビ東京系ドラマ初出演で初主演となる。
ストーリーは、連日行列ができる人気ラーメン店のカリスマ店主で、フード・コンサルタントとしても活躍する「芹沢達美」の見事な手腕で、ワケありラーメン店を次々と繁盛店に変えていくというもの。
ドラマ評論家の成馬零一氏も「面白かったです」と評し、“ウケた”わけをこう分析する。
「テレビ東京の夜10時枠といえば、『ガイアの夜明け』などビジネス系番組が多いのですが、その路線を引き継いだ企業再生モノのドラマのように作られています。また、グルメドラマはテレビ東京の得意とするところなので、今回はラーメンを題材にした企業とグルメの“ダブルパンチ”ですね」
「ラーメンが食べたい!」の大合唱
そう、人気シリーズ『孤独のグルメ』をはじめとしたグルメドラマはテレビ東京の十八番。今回の『らーめん才遊記』でも、カメラを通してもひと目で“ウマイ!”とわかる熱々のラーメンが登場し、月曜夜10時に“飯テロ”を起こしている。視聴者はテレビの前で悶絶しているのだ。
実際、ドラマ放送開始後、ラーメンが登場するとまもなく、
《この時間にらーめん才遊記見始めてしまったことを後悔している》
《ドラマ見たらラーメン食べたくてしょうがない》
《観てたら、すっげぇラーメン食べたいぞ!》
《ラーメン食べたい!ラーメン食べたい!ラーメン食べたい!》
「ラーメン食べたい」の大合唱が起き出した。
《外出自粛じゃなければ、明日は並んででも名店のラーメン屋さんに行っちゃうところだ!》
と、ドラマを見たみながラーメン店に駆け込みそうな勢いだ。
「緊急事態宣言が発令されて“3密”を避けるよう求められている今も、都内では開店前から行列を作っている人気店が見受けられます。今後、ドラマに触発されて“食べに行こう”と外出する人が増えないとも言い切れない。下手すれば行列を“助長”することになるかも」(情報番組ディレクター)
コロナ禍で外出自粛が促される昨今、感染リスクを高めるシチュエーションとして、薬局やドラッグストア、スーパーなどに並ぶ「行列」が何かと問題になっている。それはラーメン店を含めた人気飲食店でも同様に言えることだろう。
ただでさえ、タイトルが『行列の女神』だ。
ドラマ放送後の平日、記者はグルメレビューサイト『食べログ』で“星3.8以上”と評価される超人気ラーメン店に足を運んだ。11時半の開店までは30分以上あったにもかかわらず、店の前にはすでに10人近くが並んでいる。列の先頭で待つ客に話を聞くと、
「(並び始めたのは)10時半くらいですね。ええ、常連です。いつも(コロナ前)はもっと並ぶのは早いけど、今はこのくらいの時間でも入れますよ。(それでも食べたい?)う〜ん、食べたいですね(苦笑)。並ぶ時間も含めてラーメンというか」
ラーメンの誘惑に抗えなかったようだ。一方で、ラーメン店も感染防止対策をしていないわけではない。
「営業時間の短縮や入店制限、並ぶ際にも“ソーシャル・ディスタンス”をとるよう呼び掛る店が多いですね。中には、カウンターに座るお客さん同士のあいだに、手作りの仕切りを設置したりと、涙ぐましい努力をする店もあります。休業補償が曖昧な今、店を開けるしかないのが正直なところでしょう」(ラーメンライター)
もちろん、行列に並んでいる人全員がドラマを見たのではないだろう。しかし、作品が話題になるほど、触発される人も増えていく可能性もあるのだ。
ロケ地の中華料理店を訪れると
また、この手のドラマでは、劇中に登場した実店舗に視聴者が食べに行く、いわゆる“聖地巡礼”が起きやすい面もある。
第1話で、泉谷しげるが店主役を務めた中華料理店のロケ地となった、新宿御苑近くの『北京飯店』を実際に訪れた。
ドラマのなかで登場した「もやしめん」ならぬ、同店の「もやしそば(750円税込み)」を注文する。取材と称して久方ぶりの熱々グルメを食しつつ、女将さんに話を聞いた。
店内には多くの芸能人のサインが飾られている。
「よくテレビの撮影で使ってくれるんだけど、いつもは“見ましたよ”というお客さんがたくさん来てくれるんだけどね。(らーめん才遊記の撮影は)2月のアタマごろだったかな。
その時はお客さんも普通に来ていたけども、3月になってからは本当にぱったり。ほら、通りにも人が少ないでしょう。今回はタイミングが悪かったかな。でも、コロナが落ち着いた後に“ドラマ見たよ”って来てくれればうれしいですけどね」
ドラマ終了後、先の「食べたい」とともにこんな声も多く上がっていた。
《コロナ収束したら真っ先にラーメン食べに行く》
《コロナ落ち着いたら大好きなラーメンやさん巡るんだ》
《北京飯店でコロナ落ち着いたら食べに行こうと思った》
そう、食べたい衝動に駆られながらも、視聴者の大多数が自制して外出を控えているのだ。前出の成馬氏も、
「ドラマというフィクションに視聴者が何を求めるかだと思います。例えば『孤独のグルメ』には“舞台となったお店に行こう”という、現実と直結した楽しみ方がありました。もう一方で、現実にできないことを“ドラマを見て楽しもう”という見方があります。今の需要はどちらかというと後者に寄っているのかなと思います。
それよりも今は、(外出することによる)人との距離のほうが、濃厚接触のほうが気になっている方が多いのではないでしょうか」
ドラマは放送延期・中止か
ただ一つ、気がかりなのは各局がドラマの放送を延期、また撮影が中止されていること。『らーめん才遊記』は大丈夫?
「実は3月で撮影は全て終わっているんです。今のところは変更なく最後まで放送予定だといいますが、社会状況を見ながら行列シーンをなるべく控えるなどの編集作業を進めていくのでしょう。それにしても京香さんはすっかり、グルメドラマが板についた感じですね。これからどんなラーメンが出てくるのか、お腹を空かせて待ちましょう(笑)」(テレビ局関係者)
ごく普通に、当たり前のように、お店で熱々のラーメンが食べられる日常が戻ることを切に願う。