日本テレビの藤井貴彦アナと、テレビ朝日の富川悠太アナ(各会社のホームページより)

 新型コロナウイルスに感染した際の公表の仕方の不手際から、テレビ朝日『報道ステーション』のメインキャスターを務める富川悠太アナウンサー(43)は世論の非難を浴びてしまった。

「週刊誌の報道で明らかになったのですが、その後『報ステ』では通り一辺倒の発表しかしなかった。それが視聴者の怒りを買ったようで、抗議メールや抗議電話が殺到しました」

 と、同社の番組制作スタッフ。

「翌日の放送で、慌てて富川アナのコメントを発表しましたが、時すでに遅しでしたね」

 と、テレビ朝日の危機対応能力の欠如を指摘する。富川アナの隣に座る、徳永有美アナも番組出演を自粛し、夫である内村光良への心配の声も多数上がっている。

視聴者目線で言葉を選ぶ藤井アナ

 なぜにテレ朝は、危機対応をしくじったのか。それは紛れもなく、説明不足、言葉不足に尽きる。最初から富川アナが時系列をつまびらかにし、率直に謝罪していたらこうはならないかった。前出・番組制作スタッフも、「そうでしょうね」と付け加える。

 届く言葉を持っているかどうかは、アナウンサー、キャスターには重要な資質のひとつだ。富川アナは目先を利かせることができなかったが、新型コロナ禍で存在感を増しているのが日本テレビの藤井貴彦アナウンサー(48)だ。

「番組のおしまいに、自分の言葉で視聴者に呼びかけるのですが、これがネットでも非常に好評で、アナウンサーとしての評価を高めています」 

 とはテレビ誌ライター。

 これまで藤井アナは、

《2週間後の未来を変えられるようご協力をお願いします。命より大切な食事会やパーティーはありません》

 と広く呼びかけたり、医療従事者が白い目で見られているニュースが報じた日には、

《医療関係者もひとりの人間です。初めて出会う患者の命を必死に救っています。冷たい視線は今すぐ温かい支援に変えなければなりません》

 と、世間の差別的視線に釘を刺し、危機意識が薄く出歩いてしまう人々には、

《不用意に生活エリアを超えた移動をしないこと、これが誰かのふるさとを守ることにつながります》

 と諭すように語りかけてきた。

 日本テレビの視聴者センターにも藤井アナの言葉への共感のメールや電話も多く、

「毎週、30~40件ほど届いているようです」

 と、前出・テレビ誌ライター。

赤江珠緒も自らの言葉で

 常に視聴者目線で言葉を選び、医療従事者や宅配業者といったコロナ禍に汗をしている人への感謝を忘れない点が、視聴者に好感を持って受け入れられている。

 言葉を尽くさなかった富川アナに対し、言葉を尽くしている藤井アナ。夫が『報ステ』に携わっていたために感染し、妻である自分も感染した赤江珠緒フリーアナウンサー(45)も、夫の陽性が判明した直後に、パーソナリティーを務めるTBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』で、家族が感染した際の危機意識や不安などをメッセージとして発信していた。ここでも、赤江を輝かせたのは自らの言葉である。

 誰もが先の見えない不安の中だからこそ、正しく美しい言葉が響く。普段から言葉で発信しているアナウンサーやキャスターだからこそ、有事の際も言葉による真価が問われる。

<取材・文/薮入うらら>