1983年3月、グアムで挙式をした大和田獏と岡江久美子さん

 岡江久美子さんが無言の帰宅をした。

 自宅の玄関前に、そっと置かれたご遺骨。そして玄関ドアからマスクをして出てきた大和田獏さんは、岡江さんのご遺骨を抱きかかえ、自宅前に構えていた報道陣に、こう言った。

「すいません、こんな形でしか対応できないことを申し訳なく思います。久美子は今、帰って参りました。こんな形の帰宅は本当に残念で悔しくて悲しいです。どうかみなさんもくれぐれも、お気を付けください。それが残された家族の願いです。ご苦労さまでした。ありがとうございます。静かに送りたいと思います。失礼します」

衝撃的すぎるシーンに、怒り

 夕方のニュース番組は中継へと切り替え、その様子を放送。たくさんのテレビカメラ、カメラのフラッシュを浴び、岡江さんのご遺骨を抱えたまま家の中に入っていく獏さんの姿に、たくさんの人が胸を痛めた。

 そんなシーンを見た人々からは、

「なぜマスコミは遺族を追いかけ回すのか」

「自宅に張り付いていないで、そっとしてあげてほしい」

「そんなに視聴率が欲しいのか!」

「視聴者には3密はダメだと言っているのに、お前らは何様だ」

 と、多くの怒りの声が飛び交っている。

「3月29日に亡くなった志村けんさんのときも、お兄さんがご遺骨を抱えながらマスコミに対応していました。そのときも、ネットでは同じようなコメントが溢れていました。メディアとしても報じるという仕事上、心苦しい面も正直、あります。これは怒っている人たちに、理解してほしいと言っても無理だとは思っています……」

 と、ワイドショースタッフも困惑する。

 新型コロナで亡くなった著名人だけでなく、マスコミは結婚式もお葬式も報じるのが仕事だ。熱愛が発覚すれば当事者のところへ行き、著名人が亡くなれば、自宅を含め関係先にも飛んでいく。そして、それらのニュースを目にする視聴者、読者、ユーザーたち。そうやって関係は成り立っているが、今回の映像はいつも以上に怒りの声が聞こえ、さまざまな人の心を痛ませた。

「亡くなり方があまりにも衝撃的な上、家族に見送られないまま荼毘に付され、遺族に手渡しではなく、玄関先にご遺骨を置いてていかれる。この一連の流れは、コロナで家族を亡くした人以外は知らなかったはずです。これを報じることで、少なからず、再度コロナを恐れてほしい、という強いメッセージになったとは思います」(同前)

 報じる、報じないの議論に出口はなく、落としどろこはない。ただ、今回のこのあまりにも悲しすぎる映像は、見た多くの人が胸に刻んだのではないだろうか。

 たくさんの国民から愛された、志村けんさんと岡江久美子さんの小さくなった亡骸は私たちに「もう一度、真剣にコロナウイルスと向き合って!」というメッセージを送ってくれているのかもしれない。