緊急事態宣言が全国へと拡大。外出自粛要請に伴い、会社が休業したり、休校措置で仕事を休むことになり、収入が大きく減ったり、仕事を失なった人もいる。新型コロナウイルスは、私たちの家計にも大きく影響している。
政府は総額108兆円規模の緊急経済対策を実施すると発表。現金給付のほか、税金や社会保険の納付猶予、児童手当なども含まれるという。さらには国民1人当たり10万円の給付金についても閣議決定するなど、過去最大の規模での対策と謳われているが、その効果を実感するのはまだまだ先になるだろう。
すでにある制度や助成金も積極的に活用しよう
ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに解説してもらった。
「10万円の給付金ですが、受付開始は市区町村によって異なり、早ければ5月中にも始まる見通しです」
そのほかにも、売り上げが減少した個人事業主やフリーランスには上限100万円(個人事業主)、上限200万円(法人)を支援する『持続化給付金』や『新型コロナウイルス感染症特別貸付等特別利子補給制度』など新規の制度も作られた。
しかし、支援が受けられるのは個人事業主やフリーランスだけではない。主婦や、正社員、非正規社員含め勤めている人でも、いざというときにはすでにある制度や助成金も利用することができる。
「新型コロナウイルスによって経済的ダメージをこうむっている際には申請だけでもらえるお金があるので、それらの仕組みを積極的に活用することをおすすめします」
ただし、支援策によって窓口が異なるため、自分がどの支援を受けられるのかがわかりにくいのが現状。そこでこの記事の3ページ以降の支援策一覧などを参考に、まずは自分が支援策の該当者となるかどうかを知ること、それぞれの窓口がどこにあるのかを把握することが大切だ。
たしかに「困ってはいるけれど、何をどうしたらいいのかわからない」と感じている人は多くいるだろう。
「今回の施策も含め、申請すればもらえるお金を大きく分けるなら、事業主に向けたものと、家計や個人に向けたもの、と考えることができます。
例えば、新設の『持続化給付金』『新型コロナウイルス感染症特別貸付等特別利子補給制度』や『納税猶予』などは経営者向けの施策。一方、既存の『住居確保給付金』などは個人で申請するもの。自分が置かれている状況、立場によって、受けられる支援が異なります」
『猶予』の利用は注意が必要
それでは具体的な例にあてはめてみよう。
例えば、夫婦で美容室を経営し、小学生の子どもが2人いるという家庭で、新型コロナウイルスの影響で収入が激減したという場合。
『持続化給付金』『緊急小口資金』『総合支援資金』『公共料金の支払い猶予』『水道・下水道料金の支払い猶予』『小学校休業等対応助成金・支援金』『納税猶予』『社会保険料の支払い猶予』といった支援の対象となりうることとなる。
「ただし、『猶予』とあるものについては、あくまで先延ばしにする、という仕組みなので注意が必要です。いずれ払うことになるので、余力があるのならば、この仕組みは利用せずに払っておくほうがいい場合もあると思います。
もちろん、経済的に厳しい状況に置かれている場合は止められる支払いはすぐに止めるべき。もし判断に迷う場合は、各窓口で個別に相談することをおすすめします」
ただし、自治体なども初めてのことで試行錯誤している最中。大枠をまずは打ち出して、詳細は追って決めるというケースも多く、日々状況は変化しているという。
「“私のケースだと申請は下りないかも……”といった躊躇(ちゅうちょ)はせず、迷ったらまずは相談することが、家計を守る第一歩となります」
新型コロナウイルスの影響は大型連休以降も続き、長期化するのではという懸念も。
「都道府県や市区町村ごとに個別の支援策を打ち出している自治体も多く、これから増える可能性もあります。情報を見逃さないよう、自治体のホームページなどをこまめにチェックして、備えておくのがいいと思います」
さまざまな不安が隣り合う毎日。受けられる制度は積極的に活用して、少しでも心穏やかに暮らしていきたい。
支援策一覧(一部抜粋)
■感染や疑いで会社を休んだ
制度・名称:傷病手当金
対象:健康保険加入者
給付額・制度の要件など:
日割りした給与平均×3分の2×支給日数を支給
感染し療養のために休業した場合、4日目分から支給。無自覚で陽性判定を受けて入院したり、自覚症状があり療養のために休んだ場合なども支給対象になりうる。最長1年6か月
窓口:協会けんぽ・健康保険組合(会社が手続き)
■失業・休業で収入減少
制度・名称:緊急小口資金
対象:誰でも
給付額・制度の要件など:
最大10万円を貸し付け(臨時休校の影響がある場合などの特例は最大20万円)※無利子
休業等で収入の減少があり、緊急でかつ一時的な生計維持のための貸し付けを必要とする世帯
窓口:市区町村の社会福祉協議会
■生活費が足りない
制度・名称:総合支援資金
対象:誰でも ※主に失業者。新型コロナの影響での収入減なら失業状態以外でも
給付額・制度の要件など:
月最大20万円(2人以上)/月最大15万円(単身者)をそれぞれ貸し付け ※原則3か月間、無利子
失業等で生活の立て直しが必要な人に、生活費を貸し付ける。所得に関係なく利用できる(返済免除もあり)
窓口:市区町村の社会福祉協議会
■光熱費が払えない
制度・名称:公共料金の支払猶予
対象:緊急小口資金などの救済策を活用した人
給付額・制度の要件など:
公共料金・携帯代等の料金相当額を猶予
大手電力会社・大手ガス会社は、5月分までの料金支払い期限を1か月延長。通信大手3社は、2月末以降の支払いについて、5月末まで支払い期限を延長
窓口:各事業者
■水道代が払えない
制度・名称:水道・下水道料金の支払猶予
対象:誰でも(個人・法人)
給付額・制度の要件など:
水道・下水道料金相当額を猶予
自治体ごとに異なり、最長で4か月
窓口:各地の水道局
■家賃の支払いが厳しい
制度・名称:住居確保給付金
対象:失業・離職2年以内、廃業などでの収入減
給付額・制度の要件など:
家賃相当額の原則3か月分を支給(最長9か月分)
休業や失業等で収入が減り、家賃が払えない人に国や自治体が家賃を支給。生計を支えていた人が対象
窓口:各地の自立相談支援機関
■学費が払えないかも
制度・名称:修学支援新制度
対象:大学、短大、高等専門学校に通う学生
給付額・制度の要件など:
授業料等相当額を支給
家計が急変した場合、授業料の減免や、給付型の奨学金を支給
窓口:日本学生支援機構奨学金相談センター TEL:0570-666-301
■会社都合で休業
制度・名称:休業手当
対象:労働者(正規・非正規)
給付額・制度の要件など:
平均賃金の60%以上を支給
会社都合で休業した場合、休業手当(平均賃金の60%以上)を受け取れる
窓口:勤務先
■休校措置のため有休を使った、お店を閉めた
制度・名称:小学校休業等対応助成金
対象:2月27日~6月30日までの間で臨時休校により仕事を休まざるをえなかった保護者(里親・祖父母も)
給付額・制度の要件など:
◎労働者(正規・非正規)の場合 ※勤務先への助成
日額8330円を支給。有給休暇取得の場合、保護者が会社に申し出て、会社側から申請書を提出する
◎個人事業主・フリーランスの場合
日額4100円を支給。一定条件を満たしている場合。申請は保護者自身が行う
窓口:学校等休業助成金・支援金等相談コールセンター TEL:0120-60-3999
■納税するのがキツイ
制度・名称:納税猶予
対象:個人事業主
給付額・制度の要件など:
納税予定額を猶予
所得税や消費税などの国税の納付や、固定資産税など地方税の徴収が1年間猶予される。※2月以降の1か月以上にわたって、前年の同時期に比べ、収入が20%以上減少するなどの場合に対象
窓口:各地の税務署
制度・名称:社会保険料の支払猶予
対象:個人事業主
給付額・制度の要件など:
社会保険料の支払額を猶予
納税猶予が認められると支払いが猶予される
窓口:各地の年金事務所
※2020年4月22日現在
お話を伺ったのは…
井戸美枝さん 社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー
経済エッセイスト。厚生労働省社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)など著者多数。
(取材・文/松家寛子)