スポーツ紙の芸能担当記者と連絡を取り合うと、自嘲気味にみなが、
「“在宅記者”ですよ」
と口をそろえる。足で稼いでなんぼの記者稼業が在宅で成立するという不思議。ZoomやSkypeを利用した取材記事が紙面を飾ることもあたり前になりつつある。
注目する“三種の神器”
直接の取材以外のソース(情報源)で記事を作ることも、すっかり日常になっているという。ブログが世の中に出回りはじめたころから、芸能記者の仕事に、自分が担当するプロダクションの所属タレントのブログをチェックする、という項目が加わった。
「今はTwitter、InstagramにTiktok、Facebookをやっている人はそちらもチェックしています。タレントはもちろん、ミュージシャン、俳優、映画監督、芸能プロダクションのトップやマネージャー、カメラマンやスタイリスト、編集者など、日々80~100人くらいの発信をチェックしています」
とスポーツ紙芸能担当記者。
さらに、と付け加える。
「デジタル担当の記者が、テレビの生放送、ラジオのトークなどをチェックし、とにかく記事になるものはないか、と耳目を研ぎ澄ましています」
とはいえ、やみくもに取りあげるわけではない。知名度や話題性など記者の嗅覚という実にあいまいな物差しが「これはいける!」と直感した相手に食いつくのだが、
「炎上する人、賛否両論が必ず巻き起こる人、口が過ぎる人、が、私の中では注目の基準ですね」
と、スポーツ紙デジタル担当記者は伝える。なかでも
「“三種の神器”のようにありがたいのは、経営者のホリエモン(堀江貴文)、立憲民主党の蓮舫議員、そして木村拓哉の長女と次女のCocomiとKoki,です」
と4人の名前をあげる。
不自由のない匂いがプンプン
共通項は有名であること、新型コロナウイルスの影響を何ひとつ受けないほど恵まれていること。それらが羨望を生み、同時に羨望に嫉妬が混入した感情を呼び覚ますから、と彼らが注目される理由を、前出・スポーツ紙デジタル担当記者は分析し、続ける。
「賛否につながるところが、彼らの魅力なのです。これがあの吉永小百合だったら、あまり非難めいた反応を呼び覚ますことはありませんからね。ネット目線で考えると、大女優も面白い存在ではないのです。
ホリエモンや蓮舫議員は失言や失言とまではないまでも尖がった発言が多く、熱心な信者と同時に敵も多く、それが炎上につながってくれる。
彼らにあっという間に追いついているのが、CocomiとKiko,の姉妹です。2人に悪い印象はないのですが、インスタライブで発信される動画から、いい暮らしをしていて、外国語もペラペラで楽器も弾けて、容姿にも恵まれていて、何ひとつ不自由のない匂いがプンプンするんです。鼻につくと言い換えてもいい。木村拓哉と工藤静香が両親という恵まれた環境も、嫉妬を呼び覚ますことにひと役買っている。人は生まれたときから不平等なんだな、って、記事を書くたびに思いますよ」
世の中は、コロナ禍による倒産、失業、派遣切り、契約止め、資金繰りができない飲食店の悲鳴などにあふれているが、そんな庶民の声もどこ吹く風の彼ら。
芸能ニュースの井戸が枯れ果てている今、話題の提供者として唯一無二、誰も代わりが効かない実にありがたい存在なのである。
<取材・文/薮入うらら>