現代のアイドルとは違い芯が強い1980年代の小泉今日子

 歌手のきゃりーぱみゅぱみゅ(27)や俳優の浅野忠信(46)、井浦新(45)ら、芸能人が次々にツイートしている「# 検察庁法改正案に抗議します」。

「タレントのラサール石井や俳優の古舘寛治といった以前から政治にモノ申していた芸能人に加え、まったく声を上げたことがなかった人が今回は意見を表明している。これはいいことだと思います。芸能人だから政治的発言をするとCMに起用されないとか、色がつくとか、芸能界的都市伝説がありますが、芸能人も納税者ですから、税金執行者である政府に対して意見を言うのは国民として当たり前の権利です

 とワイドショー芸能デスクは説明するが、ネットユーザーの意見はときに、エキセントリックに対立し激化する。それに嫌気がさし、きゃりーが「ツイ消し」した。本人によれば、その理由は、

《私が投稿を消去させて頂いた理由はファンの人同士で私の意見が割れて、コメント欄で激論が繰り広げられていて悲しくなり消去させて頂きました》

一方、小泉今日子は
メンタルの強さを見せ連投

 前出・ワイドショー芸能デスクが、きゃりーのこの言い分にダメ出しする。

「自分の信念からの発言であれば、ファンの激論がどうであっても曲げる必要はない。ファン同士が意見が割れるのは当然で、最初から一致して自分を応援してくれる、支援してくれる、という甘えが彼女にはあったんです」

 へたれ芸能人がいる一方、「もう一度言っておきます」とメンタルの強さを見せ連投しているのが、女優の小泉今日子(54)だ。アイドルとして1982年にデビューして以来、アイドルの枠を超えたアイコンとして女性ファンも多く、芸能界の陽の当たる道を歩いて来た。

「何度かインタビューしたことがありますが、ほかのアイドルと違って、彼女は自分の言葉で話そうとしていましたね。インタビューで言葉が詰まると、周囲のマネジャーに助け船を求める松本伊代のようなタイプとは違って、しばらく考えてもちゃんと答えるという感じでした」(スポーツ紙OB記者)

 芸能界では長く大手事務所に所属していたが、2018年1月に独立。2015年に立ち上げた個人事務所『株式会社明後日』の代表取締役として、舞台や音楽ライブの製作に取り組んでいる。妻帯者の俳優との交際を公言したこともあったが、逆風には見舞われなかった。

発信することが自分の役目

「テレビドラマやCMで金を稼ぐ世界に固執せず、今回の新型コロナウイルスでも被害を受けている演劇界に軸足を移したことで、彼女は自由な発言権を手に入れた。

小泉今日子(1980年代)

 小泉が、自分の発言の影響力をよくわかった瞬間があるんです。もう20年近く前になりますが、朝日新聞のインタビューで、ミヒャエル・エンデの『モモ』という本を勧めたことがあったんです。その直後、書店のベストセラーランキングを急上昇した。本人もびっくりしていましたね。今回の発言も、自分をわかってくれる人には受け入れてもらえる、自分のファンに自分の思いを伝えるのが自分の役目、という思いがあったと思いますよ」(前出・スポーツ紙OB記者)

 アイドルを卒業し、女優としても実績を積み、長い間ファン並びにファンのような存在に支えられてきた小泉に、いまさらファン同士が激論するかどうかなどどうでもいい。彼女と同時代を生きたファンの大半は、今ではすっかりおじさん・おばさんだ。無駄にエネルギーは浪費しない。

 ファン離れを気にするきゃりーぱみゅぱみゅとは、そこが大きな違いなのである。

 政治的であろうがなかろうが、どんなヤバイ発言であろうがなかろうが、一度、発した以上、どんな反響があっても動じない度胸が小泉にはあったということだ。

<取材・文/薮入うらら>