世の中には「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」だけでなく、「ヤバい男=ヤバ男(ヤバダン)」も存在する。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバ男」を分析していきます。
石田純一

第8回 石田純一

 ナインティナイン・岡村隆史がパーソナリティーを務める『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、女性蔑視とも取れる発言をし、相方である矢部浩之が「結婚して子どもができれば、女性をリスペクトできるようになる」と提案したことに、前回イチャモンをつけさせていただきました。

 結婚して子どもがいても女性を見下している人はいますし、奥さんが「そういうことを言ってはだめ」とたしなめても、問題発言をする男性はいっぱいいます。

 結婚しさえすれば真人間になるわけではない。その代表例と言えるのが、俳優・石田純一ではないでしょうか。

沖縄入りだけではなかった石田のヤバ行動

 4月15日、所属事務所が石田の新型コロナウイルス感染と入院を発表しました。事務所によると、彼は緊急事態宣言が発令されているにもかかわらず、自身が経営する飲食店の打ち合わせのため、4月10日に沖縄入りしています。翌日にゴルフをしましたが、体調が悪かったのでホテルで静養し帰京。病院でPCR検査をしたところ、感染が明らかになったそうです。

 わざわざ沖縄に行かなくてもリモート会議でよかったのではないか、本当は仕事ではなく、単に沖縄でゴルフをしたかっただけではないかとネットでは批判されましたが、その後『スポーツニッポン』が石田のさらなるヤバい行動を明らかにしたことで、バッシングは過熱したのでした。

 同紙によると、石田は4月5日、北関東のゴルフ場でプレーをし、その後、女性のいる食事会に参加したそうです。女性を含めた複数の食事会参加者が感染していることが後でわかったそうですから、彼がこのときに感染した可能性はないとは言い切れないでしょう。

 もしそうならば、石田は感染した状態で沖縄入りしてしまったかもしれず、はからずも飛行機で乗り合わせた人、客室乗務員、空港で働く人、経営する飲食店の従業員、沖縄のホテル、ゴルフ場で働く人などの感染リスクを高めてしまったと考えられなくもない。『週刊女性』が彼が宿泊したとされるホテルに話を聞いたところ、入院が発表された翌日の16日から30日まで休業にしたそうです。経済的な打撃は大きいことでしょう。

 人サマに迷惑をかけてしまったのですから、少しは殊勝にしていればいいものを、石田は入院後も、レギュラーコメンテーターを務める文化放送のラジオ番組『斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!』に肉声でコメントを寄せたり、『直撃!シンソウ坂上』(フジテレビ系)にも電話出演しようとしたり(医師のすすめで直前になって出演を取りやめました)と、ちっともおとなしくしていない。

 5月12日にようやく退院すると、早速『とくダネ!』(フジテレビ系)に電話出演。「本当に沖縄の方には迷惑をかけてしまって、そこが残念でしょうがない」とどこか他人事のような謝罪をした上で、「ただ、沖縄のゴルフ場で発症したわけじゃない」「(ゴルフ場では)めちゃくちゃ調子が悪くて。発症はしていないんだけど、すごく疲れていて具合悪く見えただけ」と苦しい言い訳をしていた石田。『石田純一のサンデーゴルフ』(テレビ東京)でMCを務めているだけに、ゴルフ場に迷惑をかけて仕事を失いたくない、というのが本音なのではないでしょうか。

聞かれてもいないことをペラペラ喋るのはナゼ?

 そんな石田は「平成のモテ男」と呼ばれていたこともありますが、2009年にプロゴルファー・東尾理子と3度目の結婚をして、3人のお子さんをもうけています。年をとってからのお子さんですから、健康には人の何倍も気をつける必要があったはず。にもかかわらず、ゴルフをして女性と食事をするという、独身時代のような気ままな生活をして、新型コロナウイルスに感染し、周囲に迷惑をかけてしまう。やはり、結婚したくらいでヤバさが直るということはないのだと思います。

 現在、石田は自宅の一室で家族から隔離された生活を送っているそうです。しかし、あいかわらず取材は受けています。『女性自身』によると、入院中、病室で長男に遺言として「お金をいっぱい稼ぐだけが人生じゃない」とつづったとか、仕事が激減してイベントや講演会は、秋までの分がすべて飛んでしまった」と明かしたそうです。

 もうわかったから、静養に専念しろ! と言いたくなりますが、「聞かれてもいないことを、臆面もなくペラペラ喋る」「叩いてくださいとばかりに、人前に出てくる」というヤバさは、石田の“芸能界生き残り術”ではないかと思うのです。

 1996年、トレンディードラマに出演する人気俳優だった石田と、19歳年下のモデル・長谷川理恵の不倫が発覚したとき、私が驚いたのは、石田がワイドショーの取材から逃げなかったことでした。この時代の既婚男性と独身女性の不倫では、独身女性が矢面に立たされ、男性は表に出てこないことがほとんどでした。たとえば、1985年に安全地帯・玉置浩二と不倫関係にあった女優・石原真理子は取材陣に詰め寄られて、涙を見せたことがあります。

 それなのに、石田はワイドショーのリポーターの失礼な質問にも怒るそぶりも見せず、ひょうひょうと答えていました。その際の石田の言葉をつなぎ合わせて生まれたのが、「不倫は文化」という名言です。なぜ石田が逃げなかったかというと、ゆるぎない信念があるとか、すべてを失っても愛を貫くという覚悟があったわけではなく、単に後先考えていないとか、基本的な責任感が欠落しているからではないでしょうか。

 実際、石田の行動でお子さんは迷惑をこうむったことはあるようです。『おかべろ』(関西テレビ)に出演した石田の娘・すみれが、「不倫は文化」発言により小学校受験に失敗し、入学した公立校では「不倫は文化の子」と言われていじめられたことを明かしていました。お子さんの将来のことよりも、自分の欲望優先の人なのでしょう。

不倫相手に逃げられた失態も隠さない

 既婚男性と若い女性の不倫は、ワイドショーのメイン視聴者である女性には決してウケはよろしくないと思います。このルールで言えば、石田も芸能界から消えてもおかしくなかった。しかし、石田の面白いところは、不倫相手に逃げられるという失態を隠さないところだと思うのです。

 石田は長谷川と長期間交際しましたが結局、結婚しませんでした。破局後に石田は、長谷川が食べたいと言った人気のシュークリームを買うために並びましたが、売り切れで手に入れられなかったところ、長谷川に「オトコは結果がすべて」「なんのために名前があるんだよ」と責められたことをいろいろなバラエティー番組で明かしています。また、石田の自叙伝『マイライフ THE DAY IN MY LIFE』(幻冬舎)で、長谷川に「加齢臭がクサイ」「あっち行け」と言われたこと、長谷川が成城に住みたいというので土地を買ったら、フラれてしまったと書いています。

「若いオンナに入れあげて、女房子どもを捨てたら、仕事は激減。結局、若いオンナにも逃げられた」という話は、フツウの男性なら隠しておきたい出来事でしょう。しかし、石田はそのみっともない話を明らかにすることで、「不倫をしても、いいことはない」という印象を与えることができて、結果的に視聴者の溜飲を下げさせたのだと思うのです。

コロナの脅威の前で際立つ石田のズルさ

 明らかにするといえば、石田は現在の妻、東尾理子へのプロポーズも『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)で公開していました。見上げたプロ根性という人もいれば、プロポーズという二人の記念を飯のタネにする自己中心的な人と見る人もいるでしょう。こういう人はちょっとやそっとのバッシングには負けないでしょうが、すべてをさらけだす芸風が受け入れられる大前提は、「視聴者に無関係で無害なこと」だと思うのです。所詮はヒトゴトだから、笑えるわけです。

 しかし、新型コロナウイルス感染は誰にとっても脅威です。志村けんさんや岡江久美子さんをはじめ、有名人も一般人も多くの方が命を落としています。気になる症状があっても未だに検査を受けられない人も相当数いるでしょう。そんな中、好きに遊びほうけて感染し、感染を広めかねない行動を取り、感染してもすぐに入院できて回復している。ズルい人だというイメージを持たれてもしかたがないのではないでしょうか。

 視聴者に飽きるまで叩かせて、許してもらう芸風で芸能界を生き残ってきた石田は、生命力の旺盛なタイプと言えるでしょうが、今度という今度はそうはいかないかもしれません。イメージが回復されるとしたら、新型コロナウイルスが季節性のインフルエンザと同じように予防と治療法が確立されたころではないでしょうか。ワクチンや治療薬の開発を、誰よりも望んでいるのは、石田本人かもしれません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」