新型コロナウイルス感染症が完全に終息するまでには、まだまだ長い年月を要すると言われているうえに、緊急事態宣言が今後も繰り返される可能性もある。“withコロナ時代”に自分をアップデートするべく、新たに資格を取ってみるのはいかが?
資格のメンタル効果にも注目せよ
何のために資格を取るのか。
以下に示した《資格を持つメリット》の(1)と(2)のように、就職や仕事が有利になるからというのが一般的な考えであろう。
資格があれば、専門的な仕事に就けるし、収入にも影響してくる。
「やろうと思ったときがチャンスです。まずは自分の得意分野の検定試験を受けてみましょう!」
資格コンサルタントで、600以上の資格を取得している鈴木秀明さんが、あなたが資格を取れるようにアドバイス。
《資格を持つメリット》
(1)法的効果
資格がないとできない仕事に就けるなど、法的な権利や地位が得られる
(2)シグナリング効果(その人の能力を他人に知らせる効果)
知識やスキルの客観的な証明になり、履歴書に書けば箔づけになる
(3)コミュニティー効果
共通の趣味や得意分野を持つ者同士のネートワークができる
(4)学びの効果
試験を受けるために学ぶことで、知識が身につき視野が広がる
(5)経済的効果
合格者限定のグッズや特典が得られ、経済的恩恵を得られる
(6)メンタル効果
資格を持っていることで自分に自信がつく
しかし、学校出たての新人が資格を取得しようと頑張るのと、30~40代以上が資格を取得する意味は、違うのではないかと鈴木さんは言う。
それはつまり、社会に出たばかりの学生たちは、経験値がほとんどないぶん、資格で自分に箔 (はく)をつけることになる。だから目の色を変えて、資格取得に頑張っている。しかし社会人として経験を積んできた大人世代にとっての資格取得は、(6)のメンタル効果が大きいというのだ。
「努力をして資格を取ったという成功体験に基づく自信や、資格の権威を背景にした安心感によって、ポジティブな気持ちになれる、つまり心に余裕が出てくるわけです。余裕があれば、自信に満ちあふれた表情で堂々としていられる。堂々としていれば、周囲からの信頼も高まり、一目置かれるようになる。そうすると、さらに自信がついてくる。こうして歯車がよい方向に回転していき始めます。資格が人格を変えるという側面があるのです」(鈴木さん、以下同)
こんな例がある。スーパーにパートで入った女性が、チーフに抜擢(ばってき)された。自分にはとても無理だと、プレッシャーに押しつぶされかかっていたときに、就職前の娘と一緒に秘書検定3級を受けたところ合格。仕事に直結する資格ではなかったが、それが自信となって、スタッフをうまくまとめられるようになったという。
「そういうことなんです。資格が人格を変えるという典型的な例ですね」
資格を取ろうというときに、真っ先に考えるのは、仕事に役に立つのか、キャリアアップができるのかということだが、ハードルを上げすぎると、失敗してしまうことがけっこう多いのだ。秘書検定3級は、比較的取りやすいと言われている。
「無理はしない。まずは自分に自信をつけるために、野菜ソムリエなどの食品系検定やダイエット検定、歴史が好きなら江戸文化歴史検定など興味のある分野の雑学系の検定試験を受けて、検定の楽しさを知ってください。
とりあえず、短時間の勉強で、気楽に受けられる検定にチャレンジしてみませんか。学校とかでやらされる勉強とは違い、新しいことを知るのって面白いなと気づけると思います」
まずは、ひとつくらい資格を取ってみよう。合格して達成感が得られれば、さらに上を目指す意欲もわいてくるというもの。
(1)最初から難易度の高い資格をねらうのではなく、低いハードルから始める。
(2)世の中がどう変化していくかを先読みして、ニーズのある資格を目指す。IT、医療関係の資格はこれから役に立つ。
(3)興味がわかないものは、避ける。勉強しても苦痛になるばかりで、途中で挫折してしまう。
基本的には独学でも取得可能
在宅で学ぶなら、通信教育講座がある。きめ細かく合格までフォローしてくれるので、利用者も多い。学習のカリキュラムが決まっているので、短期間での取得は難しく通信教育講座では3か月以上は勉強しなければならないものも。費用も数万円くらいはかかるので、本気で資格を取ってキャリアアップを図りたい人に向いている。
お金をかけたくないなら、独学だ。
「僕は『資格はすべて独学で取る』というポリシーでやっているので、取得ずみの資格はすべて独学です。一部、認定講座の受講が必須となっている資格があり、通信講座を使うのはそういうケースくらいです」
でも、それは鈴木さんが資格取得の達人で、頭もいいからできるのでは?
「読者のみなさんが最初にねらう4級とか3級の検定問題は、テキストだけ学習すれば受かるはず。効率よく合格したいなら、過去問を分析して出題傾向をおさえた勉強をすればまず大丈夫ですよ」
ラクして資格が欲しいという人には、オンラインで学習から受験まですべて完結できる資格もある。スマホやタブレットなどで学習し、しかもオンライン上で自宅受験ができる。しかし、自宅受験ができるなら、カンニングし放題になる。
「自宅受験型を採用している資格・検定試験は、そのテーマについて多くの人に気軽に楽しみながら学んでもらいたいという意図で実施されているものが多いです。試験を厳格にやるよりも、学びの敷居を下げるほうを重視しているのですね」
検定試験を突破口にして新たな世界へ
もし1週間とか2週間という短期の学習で、資格が手に入れられるなら、取っておこう。
「すぐに取れる資格は価値が低いと判断するのは違いますよ。今まで接点がなかった新しい世界や価値観にふれるきっかけとして価値があります。僕はもともと理系なので、歴史は詳しくなかったのですが、歴史系の検定を受けているうちに、戦国時代とか城とかに興味を持つようになりました。銭湯検定で、江戸文化を知ったりできる。資格を取るだけでなく、検定試験を突破口にして、今まで興味のなかったことを知っていく。これが面白い」。
もし自分が、面白い会話ができない人間だと思っているなら、あえて変わった検定にチャレンジすることで、話題豊富な楽しい人に変われるかもしれない。
《あなたに向いているのはどの学習法?》
・通信教育講座
×費用がかかる(数万~10万円以上)/◎ポイントを絞ったわかりやすい授業/◎質問もできる/×取得に時間がかかることがある/〇取得に失敗してもフォローしてくれる
・独学
◎テキスト代と受験料のみ/〇自分で計画を立てて学習していく/×質問ができない/×取得に失敗したら、フォローはない
・オンライン学習(スマホなど)
〇費用はリーズナブル/△スマホの画面は見づらいことがある/〇質問は基本的に受けつけている/△失敗したときのフォローがあいまい
〜4週間で取得が目指せる資格〜 食育栄養コンサルタント
学習期間:4週間前後/試験日程:ネットでいつでも受験できる/受験料: 教材・認定証・検定・サポート費用などで34100円/認定団体:一般社団法人日本能力教育促進協会/勉強法:協会指定の機関が行う講座を受講
〜2週間で取得が目指せる資格〜 eco検定(環境社会検定試験)(R)
学習期間:2週間~1か月/試験日程:年2回(7、12月)/受験料:5500円/認定団体:東京商工会議所/勉強法:公式テキストで独学
〜1週間で取得が目指せる資格〜 銭湯検定
学習期間:1週間前後/試験日程:5~9月の間/受験料:オンライン1000円、ダウンロード・郵送1500円/認定団体:日本銭湯文化協会/勉強法:公式テキストで独学(自宅受験で、書籍などを参照できる)
*新型コロナ感染拡大の影響で、試験日が変更になることがあります。主催団体のホームページなどで確認してください。
《取材・文/つきぐみ(水口陽子) 》
【プロフィール】
鈴木秀明さん ◎資格コンサルタント、総合情報サイトAll About 「資格」ガイド/1981年生まれ。東京大学理学部、東京大学公共政策大学院を経て現在に至る。独学で取得した資格は600個以上。主な著書に『小学生にもとれる! 資格・検定カタログ』(小学館)、『効率よく短期集中で覚えられる 7日間勉強法』『東大→東大大学院→600個超保有の資格王が教える 点数稼ぎの勉強法』(ダイヤモンド社)など多数。