在宅が続けば子どもも“スマホ漬け”に……?

 4月16日、全都道府県に拡大した緊急事態宣言。その1か月以上前の3月2日に、ほぼ全国の小学校・中学校・高等学校が休校となった。

「子どもは家にいるのに、大人は不在。親の目が行き届かなかったこの1か月間で“スマホ依存”に陥ってしまった子は多いです」

 そう話すのは、スマホ安全アドバイザーの鈴木朋子さん。

コロナの影響でスマホの利用時間が増加

「今までスマホ依存といえば“オンラインゲームにハマる”という特殊なケースだった。でも長期休校で普通の子たちもスマホ依存になってしまいました」(鈴木さん、以下同)

 学校側も突然、休校になったため課題の準備などが間に合わなかった。

「何の指示も課題もない“ステイ状態”が1か月近くもあった子もいました。何もすることがなくなれば、スマホを使用する時間が長くなるのは当然です」

 

 中学生・高校生・大学生に“コロナの影響で利用・視聴が増えた媒体は?”という質問で集計データをとったところ、すべての世代で“スマホ”は1位に。

「ユーチューブなどの動画視聴や、LINEやインスタグラムなどのSNSの利用が増えたようです」

 使用時間が1日10時間を超えるような子もいるという。

 鈴木さんが考えるスマホ依存の問題点はこの“長時間の使用”と“夜ふかし”の2つ。

「“長時間の使用”はおもに身体への影響が心配ですね。“ストレートネック”になって肩こりや首の痛み、頭痛などを引き起こしたり、スマホの画面と目との距離が近くなりがちなため、片方の目だけが斜視になる子もいます」

 ストレートネックは、別名“スマホ首”。スマホを使用するときはうつむいたままの状態が続く。すると重い頭を支える首に負担をかけ、首のカーブが次第に失われていく。

「ですが、私は“夜ふかし”のほうがより問題だと考えています。子どもたちのスマホを利用する時間帯がどんどん遅くなっているんです」

複数人で行うSNSが生活リズムを狂わせる

 なぜスマホ依存が“夜ふかし”につながるのか─?

「例えば、ユーチューブで動画を見ていると、別の動画をオススメされますよね。子どもは“これも面白そうだ!”とオススメされるがままに夜中まで次々と動画を見続けてしまうんです。翌日に学校がなく、外出などの用事もなかったら、大人だって夜ふかししちゃいますよね」

 昼まで寝てて夜は朝まで。そんな昼夜が逆転した子も。そのいちばんの原因はSNS。

「複数人で行うSNSのやりとりには終わりがないんです。子どもの社会にも付き合いがあって、なかなか抜けられないそうです」

 だが、それが子どもの心の救いになった面も。

「“明日からの学校はどうなるの?”“課題はないの?”“卒業式はやるの?”……。子どもたちはSNSでこんなことを頻繁にやりとりしていたようです。友人と直接会えなくてもコミュニケーションがとれてすごく安心したはず。“きっと大丈夫だよ!”とときにお互いを慰め合ったりして……スマホは精神的な支えに役立っていたと思いますよ」

 教師からの連絡も、SNSがあることで情報共有がスムーズに行われた。

スマホ安全アドバイザー鈴木朋子さん

 だが、学校再開が相次いでいる今、子どもも普通の暮らしに戻らなければならない。

「夜ふかしで生活リズムが狂うと、疲れやすく、なにもやる気が起きなくなったり、イライラしたり……。学力の低下にも大きく影響します」

 スマホ依存になった子どもに親ができることとは─。

「いちばん簡単なのは、常に日々の予定がびっしり決まっている状態にしてあげること。忙しければ、スマホは自然と触らなくなる。結局、暇つぶしなんです。でも部活もスタートできない現状ではなかなか難しい」

 そこで、家庭でも時間割を作ってみよう。

「“朝ごはんは朝7時から食べる”“午前中はオンライン授業”など毎日のスケジュールを紙に書いて壁に貼ってみる。小さな予定を立てていくことで、生活のリズムを整えていきましょう」

まず改善すべきは“親のスマホ依存”

 次にオススメなのが、スマホに触らないと楽しくなる無料アプリの活用だ。

「『Forest』は設定した時間、スマホに触らずに過ごせると、植えた木の苗が育って立派な木に成長。最終的には大きな森になります」

 触ろうとすると“もうちょっとだから頑張れ!”などのようなメッセージも届く。

「ほかにも魚が成長していくアプリも。ゲーム感覚で楽しく“スマホ離れ”を達成できるでしょう」

 だが、もっとも大事なのは“大人のスマホ依存の改善だ”と、鈴木さん。

「みなさん、1日にスマホを何時間、触っていますか?」

 在宅勤務で会社からいつ連絡が来るかわからないから、コロナの最新情報を知りたいから……。そんな理由から、親たちもスマホに触れる時間は圧倒的に増えた。

「スマホ依存の親から注意されても、子どもは言うことなんて聞きません。親が依存しているから、子どもも依存していると考えてください」

 例えば、リビングにスマホBOXを置いてみる。

「“〇時から〇時まで家族全員のスマホをこの箱に入れておく”というルールを決めるんです」

 ほかにも、ご飯を食べるときは家族全員のスマホが鳴らないように設定。

「バイブ機能も切ってください。ブーブーと震えたら、スマホに気をとられてしまいます。とにかく親も子どももスマホをいっさい触らないし、存在すら忘れる時間をつくるんです。スマホ依存は親子で脱却していくものです」

スマホ漬けにならない3テク
(1)親が依存していたら子どもも依存する!

「子どもを注意する前に、自分がどれだけスマホを触っているかを考えてみましょう。対策はそれから!」(鈴木さん、以下同)

(2)無料アプリで楽しく使用時間を短縮
 スマホ依存となった子どもに、厳しい対応はNG。「スマホに触らないとご褒美がもらえるアプリなどを活用して徐々に時間を減らしましょう」

(3)家族全員がスマホを触らない時間を設定

「食卓の上にスマホを置いてご飯を食べていませんか? 電源オフや通知オフなど、スマホがない生活に慣れていきましょう」