通いなれてよく知っているつもりのコンビニには、意外と知られていない実態が……。

 多くの人が通いなれていてよく知っているつもりになっている「コンビニエンスストア」。しかし、その実態や最新情報まで知っている人は案外少ないそう。世界一コンビニの仕組みを知る男・渡辺広明さん(流通アナリスト)が教える、“コンビニを100倍お得に使えるウラ情報” これを読めば、コンビニとの付き合い方が変わります!

「コンビニ商品は高い」この常識はもう古い!

【(1)コンビニのコーヒーがコーヒー専門店よりおいしいって本当?】

「おいしい」は主観なので一概には言いきれません。ただ、セブン-イレブンが全国約2万1千店あるのに対し、コーヒー専門店は1チェーンで1千店以下がほとんど。豆を売る側としたら、1千店舗のところに入れて1千万円儲かるより、2万店あって2億円儲かるほうへよい豆を入れますよね。同じ理由でコンビニのほうがよい機械を使いやすい環境にあります。また、コンビニは回転率が高いので、いれたてでより新鮮な豆を使っているとも考えられます。

【(2)コンビニの売れ筋商品の目安とは?】

 コンビニは毎週100品の新商品があり、生き残るには一定の販売数を上回る必要があります。売れ筋と見なされるラインは、1日に1店舗あたり菓子パン5個、缶コーヒー4本、緑茶ペットボトル3本、炭酸飲料2本、カップラーメンやスナック菓子は1個。客がこの数を目安に購入して自分が好きな商品を定番にしてもらうというのは難しいですね。商品は本部から各店へ出荷されるので、全国で売れ続けていない商品はなくなっていきます。

【(3)最近のコンビニは健康志向の人や高齢者向け!?】

 超高齢化社会の波はコンビニにも押し寄せています。お客さんにシニアが増えたので、健康的な商品を売る必要が出てきたのです。また、2000年にできたナチュラルローソンの成功を機にコンビニ全体の考え方が変わりました。健康分野ではやはりローソンが進んでいる印象、特に糖質の低い「ブランパン」はヒットしました。あと、いま熱いのは麦飯おにぎり。帝人の麦を使ったファミリーマートのスーパー大麦「バーリーマックス」は人気です。

【(4)実は、コンビニの商品は高くない!?】

 昔はコンビニの買い物は高くつくイメージがありましたが、今はプライベートブランド(以下PB)を買えばお得です。特に冷凍食品は炒飯が120円、餃子は140円程度。コンビニPBが年金生活者のセーフティーネットになる気さえします(笑)。

 セブン-イレブンのPB「セブンプレミアム」は系列のイトーヨーカドーで販売されていることも。ヨーカドーは約130店舗なので、単品あたりの製造量が多いコンビニのほうがPBを作りやすいんです。

都会に多く見る“野菜コンビニ”とは

【(5)駅のホームにあるコンビニの売り上げが伸びている】

 駅のホームにあるKIOSKが続々とコンビニに変わり、売り上げを伸ばしています。昔のKIOSKは男性がタバコや新聞を買うところでしたが、今は何でも置いてあり、女性も利用するようになったためです。

 電車で化粧する女性は以前からよく見ますが、コンビニで買ったパンを電車内で食べる女性も最近は増えました。どちらも時間がないという理由です。つまり、忙しい女性のおかげで、駅のホームのコンビニは売り上げを伸ばしているのです。

【(6)いずれはコンビニ弁当もなくなる?】

 なくなると思います。今はスマホを見ながら食事する人が多い。食の文化がワンハンドになり箸を持つことが面倒になりました。しかも、今の子はフードコートに慣れていて好きなものしか食べません。好きと嫌いが混じった弁当は選ばず、パンやおにぎりを片手で食べる人が増えています。コロナの影響で飲食店が持ち帰りを始めました。人がおいしさを感じるいちばんの要素は作りたて。コンビニのひとり勝ちにはならないのでは?

【(7)ローソンのレジを引っくり返したらそのままセルフレジになる!?】

 もうすぐ、コンビニは接客時間が短くなる電子マネーへ一気に移行すると予想されます。レジ会計の省力化は人手不足のコンビニには必須。同じ理由でセルフレジも増えていきます。お客さんも素早く会計がすむセルフを好む人は多く、さらにコロナの影響でセルフ派は増加中です。実はローソンでいま使われているレジはすべて、お客さんのほうへ向けるとそのままセルフレジになります。ワンオペ体制の構築は今後のコンビニの課題なのです。

【(8)おでんがコンビニからなくなる!?】

 新型コロナウイルスの影響で危機的状況です。接客カウンターですら防護用シートを設置しているのに、フタのないおでんは衛生的にNG。でも、フタをしめると食欲をそそる見た目のおいしさが失われて売れません。

 そもそも、おでんは手間がかかる。管理の行き届いていない店舗では客も食べたくないから売れないんです。でも実際は、コンビニのおでんは原材料がよく、きちんと管理されていたらすごくおいしいのです。コーヒー豆と同じ理論です。

【(9)都会に多く見る“野菜コンビニ”】

 特に東京・世田谷区と杉並区では、青果店のように店頭で野菜を売る“野菜コンビニ”をよく見かけます。家で3食料理することが多い高齢世帯が多く、スーパーが少ない地域というのが理由です。

 “野菜コンビニ”は本部ではなく店が業者を使い、独自に野菜を仕入れています。本部では市場で野菜を仕入れ毎朝、袋詰めする細かな作業は不可能。店舗オーナーが個別に本部に許可を取り、このようなコンビニが生まれています

「コンビニ限定商品」の意外な目的

【(10)閉店したコンビニのすぐ隣に同じコンビニチェーンが出店する理由】

 あるコンビニが閉店し、その翌週に同じコンビニチェーンが隣に新規オープンする、そんな店舗の置き換えをよく見ます。これは、旧店舗よりよい立地が見つかったからというケースが多い。店舗を広くして品ぞろえをよくするとか、駐車場ができて車を止められるようになったなどが理由です。特に地方では、駐車場を理由に置き換えられる場合が多い。面積が変わらなければ不動産の契約切れとか、何かしら事情があるでしょうね。

【(11)なぜ、近場に同じコンビニがあるの?】

 道路を挟んでローソンが向かい合っていたり、同じコンビニチェーンばかりと気づくことがあります。対面がファミマだと売り上げが取られるので、本部はここにもローソンを建てようと考えたのです。このとき、本部は近隣オーナーに2店舗経営を打診するのが一般的ですが、本部方針と乖離のある店舗には言わないこともあります。結果、その店舗は売り上げ下降で苦しむ。なので、私は同じチェーンの近距離出店はNGと決めたほうがいいと思っています。

【(12)おすすめの電子マネーは?】

 普段使ってるものを使うのがおすすめです(笑)。大前提として、何かキャンペーンをやっている際はそれを使ったほうがいいですが、そうでなければ慣れたものを使ったほうがいいと思います。私もいろいろ使ったんですが、結局はSuica一択になっています。“ピッ”っとやるだけで楽だし、アプリを開くのはめんどくさいですからね。楽に勝るものはないです。

【(13)「コンビニ限定商品」のからくり】

 定番のカップ麺を買う場合、値引きするスーパーと違ってコンビニでは定価で売っています。しかし、それらの商品がコンビニ限定商品に変身するケースも。例えば、「赤いきつね」の油揚げが2枚入りになっていたり、「ギャツビー フェイシャルペーパー」はコンビニだと通常より5枚多い。これは付加価値を提供するだけでなく、デフレの歯止めをかける目的もあります。付加価値があれば、定価購入した顧客の満足度も上げられますしね。

【(14)地域の嗜好に合わせて売られている商品がある!!】

 全国一律が基本のコンビニですが、一部の商品をその地域に合わせているケースは少なくありません。北海道でローソンのバイヤーをしていたころ、私も缶コーヒーの北海道バージョンを作りました。北海道って農業など肉体労働の人が多いので190mlじゃなくてロング缶、しかも甘味が売れる傾向にあり、それに合わせて味の濃い250ml缶を開発したんです。地域の風土、所得、歴史によって売れる商品は変わります。

【(15)コンビニの買い物でコロナに感染しないために気をつけること】

 人との接触を少なくするため、電子マネーを使ったほうがいいでしょう。半分~3分の2ほどの時間で会計がすみますし、お釣りの受け渡しもなくなります。これは自分だけでなく店員を守ることにもつながります。1度手にした商品を棚に戻さないのは基本です。あと、あまり店内をうろうろせず、スーパーの買い物のように入り口からレジまで一方通行を心がけたいものです。

コンビニはもう「全国一律」ではない

【(16)SNSでバズった商品だからといって、絶対売れるとは限らない!】

 昔はテレビなどのメディアを使って商品を宣伝できたのですが、テレビを見る人が減ってその方法論は通用しなくなりました。逆に、SNSで話題になった商品はどうかというと、かなり諸刃の剣なんです。

 売り上げが急に10倍になったりすることもあるのですが、それはそれで対応がしにくい。SNSでの拡散を期待して在庫を抱え、結果的にバズらなければ大損です。また、もしも何かトラブルがあったら途端にバッシングが起き、世間は一斉に手を引きます。突発的に評価が上下してしまうのでSNSの効果は怖いんです。

【(17)衝撃!! コンビニの万引きの9割は従業員の仕業!?】

 コンビニの商品ロス(売り上げ記録がないのに在庫がない)の9割は従業員に原因があると言われています。とはいえ、すべてが盗難というわけではなく、合計100万円の商品がなくなったら、90万円のうち、10万~20万円は伝票が間違っているなどの管理ミス。残りは破損の未申告と、内部不正の可能性が高いです。そのため、従業員の控室にも防犯カメラが数台取りつけられています。

【(18)コンドームがよく売れる店舗とその理由】

 コンビニで最もコンドームが売れるのは、某大手テーマパーク近くの店舗なんです。なぜかというと、初めて付き合った男女が最初のお泊まりデートに某大手テーマパークを選ぶケースが多いから。でも、コンドームを持っていくと「初めからそのつもりだったの?」と言われかねません。初めて同士なので牽制し合うんです。で、いざというときになって近くのコンビニでコンドームを購入する……。私はそう推理しています(笑)。

【(19)可愛い子やイケメンの店員がいると売り上げは上がる】

 店員に可愛い女の子やイケメンが入ると店の売り上げは上がります。実際、関東の某所には、地域密着のご当地アイドルで引退した子を夕方のシフトに入れ、売り上げを伸ばしているコンビニがあります。また、ご当地のスポーツチームの本拠地から近い店には、選手たちが訪れたりグッズを売っていたりすることもあり、活気づいている店が多いものです。ファンにも店側にとってもメリットですよね。

【(20)今後はコンビニの各店舗に“個性”ができていく】

 コンビニといえば、これまでは全国各地どこでも一律というのが売りでした。でも、これからは企業が社員に副業を推奨する社会へ変わっていくでしょう。つまり、複数の収入源がないと暮らしていけない時代です。大手のコンビニも各店が個性を持つようになっていくと思います。実際、ドラッグストアやカラオケ店など、他業種の店舗と合併している店舗などが増えてきていますよね。

 そういう意味で、山崎製パンと契約する小売店「Yショップ」は注目です。オーナーの裁量による店舗の独自性が強く、24時間営業は課せられず、定休日もある。オリジナルメニューや商品など、店の特徴や趣向に惹かれたお客が集まる。レコード店やイベントスペースを兼ねている店もあるほどです。

『コンビニが日本から消えたなら』(ベストセラーズ刊 税込み1650円)著=渡辺広明 ※記事中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

【著者プロフィール】
渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
コンビニジャーナリスト、マーケティングアナリスト。ローソンにて店長、スーパーバイヤーとして22年勤務。約730品の商品開発にも携わる。フジテレビ『Live News α』など各メディアで活躍中。

 (取材・文/寺西ジャジューカ)