イケメン東大生・松丸亮吾

「謎解きには、知識ではなくひらめきが必要。言い換えれば知識がなくても、ひらめきがあれば解ける。だからこそ大人と子どもが一緒に楽しめるコンテンツなのです」

 そう語るのは、東大発の謎解き制作会社・『RIDDLER』代表の松丸亮吾(まつまる・りょうご)さん(24)。東京大学謎解き制作集団AnotherVisionが作り出す『東大ナゾトレ』は、フジテレビの番組『今夜はナゾトレ』の人気コーナー。今やその人気は、番組内の1コーナーにとどまらず、子どもから大人まで楽しめる人気コンテンツへと成長している。仕掛け人であり、現役東大生でもある松丸亮吾さんに謎解きの魅力について聞いた。

“謎解き人生”のスタート

 松丸さんと“謎解き”の出会いは、10数年前。男ばかりの4人兄弟の末っ子に生まれた松丸さんは、何をやっても3人の兄を負かすことができなかった。そんななか、唯一勝てたのが謎解き。

「知識よりも発想の転換やひらめきを必要とするパズル問題(IQ問題)がメインの、フジテレビ『IQサプリ』というクイズ番組が当時あったのですが、それを家族で見ていたときに、誰よりも早く正解したのが僕でした。今まで何をやっても兄たちに負けていた僕にとって、うれしい記憶として残っています

 この経験は松丸さんの自信につながった。それからというもの謎解きにどっぷりハマり、問題作りにも精を出す。

「10歳から20歳ぐらいまで毎年、年間100問は作った」というから問題作成歴10年越えのベテランだ。とはいえ最初のころに作った問題は、ひとりよがりなものが多かったと振り返る。

「当時は難しい問題ほどいいと考えていて、人に解かせるのではなく、人が解けない、特に兄たちが解けない問題を考えていたんです。あのとき僕が考えた問題、いま自分で解けないですもんね(笑)」

 過去の反省を踏まえ、謎解き問題には、“簡単すぎず、ひらめきで解けて”“解けた後にスッキリする”などの自分なりのルールを作って良質な問題作成を続けている。

「今は1日に3〜4問をノルマに、年間1500問前後は作成しています」

頭を使って考えること自体を楽しめる人に

 テレビやイベント、書籍など幅広く活躍中の松丸さんだが、その反響は大きく、さまざまな声がある。中でも、子どもたちに与えた影響が特にうれしいと松丸さん。

「謎解きが好きな子が、問題に出てきた漢字が読めなくて自分から漢字辞書を使ったりして勉強を始めた。問題中の英単語なども進んで学ぶようになったそうです」

 謎解きがきっかけで子どもたちが勉強に取り組むようになった、学ぶことそのものを楽しめるようになったという声がTwitterや手紙で届いている。この効果は決して意図的ではなかったと言うが、RIDDLERという会社を昨年立ち上げ、そこで目指す先もまさに、

「謎解きを通じて『考えることが楽しいと感じられる人』を最大化させること」

 なのだそうだ。

イケメン東大生・松丸亮吾

「親から押しつけられたのではなく、子どもたち自ら勉強に取り組むには、何か楽しいと感じるものが必要。そのひとつに“謎解き”がなっているのであれば成功ですね」

 東大に現役合格した松丸さん。さぞかし優秀な子ども時代だったろうと聞いてみると意外にも「ゲームばかりやっていた」という。しかし、東京大学新聞社の2016年の現役東大生(院生含む)アンケートによると、5人に1人が「1日12時間以上ゲーム」経験者だという。

 松丸さんも「東大生の友人知人もゲーム好きが多い」と、その実態を語る。戦略プランニング、問題解決などの能力がゲームには不可欠で、これはどうやって成績を上げるかの戦略にも応用できるのだとか。

「ゲームは子どもたちにとって悪影響を与えるといった論調もありますが、うまく付き合えるかどうかです」

松丸さんが語る、ゲームとの上手な付き合い方

 そうは言っても、今回の新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で休校中のわが子が「ゲームばかりで勉強しない」と心配する声も多く見られる。そんな親たちに向けて、アドバイスを求めると、

「ルールを決めればOK」

 だが“ゲームは1日1時間”などの時間制限には意味がないという。

「3人の兄が解けないような問題を考え、僕の“謎解き人生”はスタートしました!」

「僕の母親は、『1日3時間勉強すれば、その後は何時間ゲームをやってもいい』と上手に仕向けてくれました。勉強さえすれば、無制限にゲームができるわけですから、子どもたちは自分から机に向かいますよ(笑)」

 実際、松丸さんの場合は、朝早く起きて1時間、帰宅後すぐに2時間、勉強した。目の前に無制限のゲームタイムという目的があれば、ゲーム好きな子は勉強する。この“ご褒美”が、「将来役立つから」などでは、先のことすぎて子どもにはなかなか響かない。そして、もうひとつ大きなメリットが。

「ゲームのための勉強3時間なのですが、それでも勉強は以前よりできるようになる。すると、勉強するのが苦でなくなり、少しずつ楽しくなってくる。好循環が生まれるんです。だから、ゲームを使って親が勉強につながるレールを上手に作ってあげて」

 また、松丸さんは日々の謎解きの作問で行き詰まったときもゲームを活用している。

「アイデアが湧いてこないときは1度、なにも考えない時間が必要。でも、これが案外難しい。ゲームに集中すれば切り替えができ、頭のリセット&リフレッシュにつながります。運動不足やストレス発散には冒険しながらフィットネスできるゲーム『リングフィットアドベンチャー』などがおすすめですよ」

 読者世代も仕事や悩みなどで行き詰まったら、あえてゲームをしてみよう。また、松丸さんは“謎解きをすること”が、すべての世代の脳トレ、脳活につながると語る。

「脳トレとしては数独などのパズル系がありますが、これらは一定の法則があるので、脳をフル活用するとまではいきません。その点、謎解き系は脳のフル活用もでき、解いた後にスッキリしますよ」

 これからの松丸さんは?

「会社としてはゲーム業界への進出、YouTubeの『ひらめきラボ』というチャンネルで新しい形の謎解きを展開しています。僕個人としては、まずは、求められるお仕事をひとつずつ頑張りたいです」

 さらなる活躍の場を自ら広げ、楽しみながら果敢に挑戦し続ける松丸さん。彼の動向に今後も注目したい。

PROFILE●まつまる・りょうご●東大発の謎解き制作会社・『RIDDLER』代表。東京大学入学後、謎解き制作集団『AnotherVision』の2代目代表であり、ブームとなった“謎解き"の仕掛け人。メディアへの出演も活発化しており、2019年ブレイクタレントランキングでは2位を獲得した。

(取材・文/松岡理恵)