6月3日、天皇・皇后両陛下は『全国保健所長会』の副会長ら3人を赤坂御所に招き、新型コロナウイルスへの保健所の対応などについての説明を受けられた。
当日、両陛下にご接見した葛飾区保健所長の清古愛弓(せいこあゆみ)さんは、次のように話す。
「全国保健所長会の活動内容や、私が担当している葛飾区保健所での新型コロナウイルス感染症への具体的な対応や、現場の実態について説明いたしました。
両陛下からは“PCR検査は時間がかかるのですか?”などの質問を受けました。
これまで何回も専門家からのご進講を受けていらっしゃるので、すでにいろいろとご存じだったようで“職員の方々のメンタルヘルスも大変でしょうね”、“しばらく続くかと思いますが、頑張ってくださいね”と、ねぎらいのおことばもいただいて、大変ありがたく感じましたね」
緊急事態宣言が全国で解除されたものの、いまだ予断を許さない状況に両陛下も現場で働く保健所関係者を心配されていることだろう。
そんな中、おふたりは6月9日に27回目の結婚記念日をお迎えになった。
「令和になってからというもの、両陛下での会話がかなり増えた印象です。例えば、雅子さまから陛下に対し、公務についての質問をして熱心にメモをとるなど“皇后とはどうあるべきか”を日々お考えになっている。
5月20日に行われた『日本赤十字社』社長らからのご進講でされた質問も、事前におふたりで話し合われたそうで、“私はこう思うのですが、いかがでしょうか”と自分の意見を伝えてから、陛下に意見を求められたそうです」(宮内庁関係者)
“次世代の支援”に注力される雅子さま
“皇后のあるべき姿”以外にも、雅子さまが追い求められていることがあるそう。
「コロナウイルスの影響で外出を伴う公務がない中、即位から1年が経過した現在、両陛下は“令和皇室のテーマ”を模索されていると聞きます。
テーマといっても、設定するというよりは“少しずつ作り上げていくもの”ですが、少なからず意識されていると思います」(同・宮内庁関係者)
平成時、上皇ご夫妻は戦争経験者ということもあり、国内外にあるかつての戦争地などを慰霊するなど“平和への祈り”をテーマにされていた。
ただ、令和ではテーマを掲げることはできても、国民には浸透しづらいという。
宮内庁OBで皇室ジャーナリストの山下晋司さんが解説する。
「平成の天皇は新憲法下で即位された最初の天皇であり、慰霊の旅や被災地訪問など昭和時代にはなかったご活動をされたことで国民は昭和との違いを感じました。
しかし、今の陛下も新憲法下での即位ですから、昭和から平成のときほどの違いはないでしょう。そもそも、両陛下が“令和のテーマ”を発表されるわけでもありませんので、われわれは両陛下のご活動から、それぞれが令和の特色を感じればいいと思います」
令和の皇后は、どんなご活動に重点を置かれていくのだろうか。前出の宮内庁関係者は「皇太子妃時代から続けている“次世代の支援”に注力されるだろう」と語る。
「雅子さまは療養に入られる前から、両親がいなかったり、障害を持つなど、厳しい状況にある子どもたちに心を寄せられてきました。
児童養護施設や知的障害児施設の子どもたちが合唱や舞踊を披露する『児童福祉施設文化祭』に、'96年から8回も単独で視察されています。この文化祭で出会った神奈川県葉山にある児童養護施設『幸保愛児園』には過去に10年以上、子どもたちや園長に向けたクリスマスメッセージを贈られていたこともありました」1
宮内庁は4月初旬、天皇陛下の私費から、子どもの貧困対策に取り組む『子供の未来応援基金』に5000万円を寄付されることも発表した。
弱い立場にいる人や動物に心を寄せる
象徴天皇制に詳しい名古屋大学大学院の准教授・河西秀哉さんは、こう話す。
「次世代の子どもたちに対する支援に力を入れられることは、皇后陛下にとって適しているテーマだと言えます。世間では、児童虐待などの事件や待機児童の問題が取りざたされており、国民から注目されるテーマでもあるからです。
一方で、児童施設などは政治的な観点から、両陛下の言動やご活動が利用されてしまうおそれもあるためバランスをとりながら行う必要はあると思います」
'18年のお誕生日文書では、そんな“次世代へのエール”とともに、両陛下が掲げられる“令和のテーマ”として「動物」が挙げられると話すのは、前出の山下さん。
「両陛下のお気持ちが国民に伝わるかどうかは、ご活動がどのように報道されるかにかかっています。
中でも報道されやすいものは、“動物”に関することだと思います。平成の天皇・皇后のご活動にはあほとんどありませんでしたから、令和の特徴的なご活動になると思います。両陛下がアニマルセラピーや保護犬に関するご活動をされることは、人と動物が共に生きる社会の重要性や“命の大切さ”を伝えることにつながるでしょう」
以前には、東京・築地の『聖路加国際病院』の小児病棟を何度か訪れ、アニマルセラピーの現場を見学されていた雅子さま。御所では'09年ごろに動物病院で保護されていた犬を引き取って『由莉』と名づけ、数年前からアニマルセラピー犬として専門家から訓練を受けさせているそうだ。
「毎春に学習院大学内で行われるお祭りに行かれた際には、盲導犬事業の啓発に取り組む『アイメイト協会』のブースに立ち寄られています。昨年9月には、秋田県内の動物愛護センターを訪問された両陛下は、県内で保護された秋田犬などと触れ合い、保護犬が雅子さまにキスをする微笑ましい場面も。
雅子さまはかねてから、動物のケアやアニマルセラピー講座にプライベートで足を運ばれていました。“動物が人に与える癒しの効果”を理解されており、社会に必要とされているとお感じになっているそうです」(侍従職関係者)
動物をテーマにすることは、時代性ともリンクしていると、前出の河西准教授も話す。
「両陛下は、障害児施設の子どもたちや、動物愛護センターで秋田犬と触れ合うなど“弱い立場にいる人や動物”に心を寄せられている印象があります。特に動物関連は、平成ではあまり見かけない光景だったので、国民の記憶にも残ることでしょう。
御所では保護犬を飼われるほど動物がお好きなようですし、現在は犬や猫を飼う人はとても多いので、時代にも合っていると感じます」
コロナが収束した後、令和皇室を形作る両陛下のご活動が始まっていくはず──。