『昼顔』や『あなたのことはそれほど』など、話題になったドラマやマンガには不倫がテーマのものが多い。してる側は背徳感でドキドキ、でもサレた側はたまらない! そんなサレ側男女の声を聞いた。
集英社のマンガアプリ『マンガMee』で連載中の作品『サレタガワのブルー』(サレブル)が今、話題だ。
主人公である新進気鋭のデザイナー・田川暢(たがわのぶる・26歳)は、妻の藍子(あいこ・29歳)にぞっこん。すべての家事を完璧にこなし、稼ぎもよく、温厚でイケメン。
そんなスーパーダーリンに溺愛されながら、藍子は会社の上司・森(妻子あり)と浮気をしていた。残業と称してラブホに通い、ヤバすぎるLINE(局部画像)を送りあう。それはある日、暢ともうひとりの“サレタガワ”森の妻の知るところとなり……。
現在、クライマックスを迎えている本作だが、タイトルのとおり不倫する側でなく、された側にスポットをあてているのが新しい。キャッチフレーズは“不倫したくなくなるマンガ”。これだけ不倫が世にはびこっているにもかかわらず、された側の苦しい声はほとんど聞こえてこない。
今回、取材班は男女3人の“サレブル”を聞いた。
“常連さんとアフター”で朝帰りの実態は
ひとり目の“サレ夫”、道夫さん(仮名・42歳)が2つ年下の妻・美香さん(仮名)と出会ったのは12年前。飲み会の席で美香さんに一目惚れし、その日に連絡先を交換。交際3か月でのスピード婚を果たす。その後、1男1女の子宝にも恵まれたが、2年ほど前、妻がアルバイトを始めてから、すべてがおかしくなった。
そもそも道夫さんが職場でリストラされ、失職したのが妻が働きに出た理由。妻の勤め先がバーであっても文句は言えず、むしろ頭を下げたい思いだった。しかし“常連さんとのアフター”で帰宅時間は日に日に遅くなり、ついには朝帰りする日も。朝、子どもを学校に送り出すのはすっかり道夫さんの役目になった。
早々に職につき、妻にはバーをやめてほしい。気持ちはあっても職がない。そんなジレンマのなか道夫さんは、入浴中さえも携帯を手放さなくなった妻に気づく。ある日、眠る妻の手元にあった携帯のLINEを見てしまった。
hiro「君の子たちが俺の子じゃないということが、とても悲しいよ」
hiro「俺の子どもを産んだのも、なぜ君じゃないのか」
hiro「みか、俺の子どもを産んでくれ♪」
美香「私もひろくんの子ども産みたいよ……。つくろう♪2人の子ども♪」
完全に陶酔しきったふたりの世界。ラブラブスタンプの応酬。え、なにコレお花畑? 激しく動揺した道夫さんは妻を叩き起こした。そして寝起きの妻が語ったのは……「ひろくん」は30代前半でバーの店長。年上女性が好きで、バイトの面接時から激しく口説いてきた。バイト終わりに誘われるまま飲みに行く関係だが「一線は越えてない」。
だって店長にも子どもいるし……そう主張する妻に、“あの文面でなにもないわけないだろ!!”と怒りで頭が真っ白になった。グッと胃からなにかがこみ上げ、トイレで吐き続けた。
結局、妻には即バイトをやめさせ、当面の生活費は親に借金して工面した。現在は大手企業に再就職した道夫さん。
「いちばん信じていた妻に裏切られた。もう2度と愛せない。下の子が15歳になったら別れると伝えています」
部下の女性、元妻との“二股不倫”
2人目に紹介するのは“サレ妻”の繭子さん(仮名・40歳)。彼女が夫(45歳)の異変に気づいたのは3年前の夏。バツイチ同士が再婚して半年、まだ新婚のころだった。
出会った当初は「30分、顔が見えないだけでもう繭子ロス。禁断症状出る」と言うほど情熱的だった彼が、入籍し一緒に暮らしてからは繭子さんの一挙一動に文句。文句以外は終始無言で「おはよう」さえない。2人のなじみの飲食店にも“お前は出禁な”とひとりで通うようになった。
繭子さんは夫の変化に戸惑い、次第に彼に対する疑問をふくらませていった。珍しく2人で出かけたある日、突然「お前、日本語が通じねえんだよ。つまんねえ女」と言い放ち、夫はひとりスタスタと帰宅。さすがに不信感が爆発し、帰宅後、夫がシャワーをしている隙に携帯を盗み見た。日ごろチェックしていたパスワードを入れ、怪しそうなLINEを開く。
「大丈夫? 浮気して帰って奥さんに刺されてない?(汗)」
LINEの送り主は繭子さんも面識がある、夫を過剰に慕う部下の女性だった。先日、夫が朝方まで帰らなかった日のメッセージだ。だが、繭子さんにとってもっと衝撃的だったのは、元妻とのやりとり……。
「今日も大好きですよ♪」
元妻が育てる子どもの成長報告に加え、連日交わされているその言葉。会話にはハートマークが飛び交い、ときには「Hしたい」というスタンプも……。繭子さんを罵倒(ばとう)し、無視する夫は日々、元妻に愛を囁(ささや)いていたのだ。繭子さんは震える手で携帯を閉じた。
「日ごろ、デブだブスだとけなしていた部下との浮気は腹が立つけど、彼がその子を大して好きじゃないのはわかる。むしろ前の奥さんとのやりとりのほうがショックでした。彼は釣った魚にエサはやらず、逃げた魚は全力で追うタイプ」
元妻との離婚原因は、おそらくモラハラ。浮気もあったかもしれませんね、と話す繭子さん。それでも、別れない。
「どうしても好きなんです……彼の顔が。無視されても怒られても“え、この角度カッコいい”とか思う。よけいなヤキモチを焼いて“出てけ!”と、逆ギレされたこともあったし、そっとしておきます」
何より、「自分が離婚して引き下がり、別の女が彼の妻の座に座るのが悔しい」という。
浮気もモラハラもなかった前夫より今の夫に執着してしまう、と語る繭子さんの左手薬指には、カルティエの結婚指輪が輝いていた。
妊娠したら俺の子ってことにされそう
最後の“サレ夫”、達也さん(仮名・52歳)には自慢の13歳下の妻と可愛い娘がいる。結婚前は企業の役員秘書を務めていた妻は、美人と評判だ。その妻が浮気している、と語る達也さん。
「去年、妻がPTA役員になったのですが、そのときの会長とデキてるってウワサがあってね……」
会長は30代半ばのイケメン。自営業で、多忙な介護職の妻に代わってPTAに参加。若さとノリのよさで女性陣の人気をつかんだという。
「妻が“ワンチャン”、“ガチで”など、聞いたこともないような、おかしな若者言葉を使いだし疑問に思っていました。
日中は“MTG(ミーティング)”、夜は“懇親会”という名目で頻繁に出かけていたのですが……つい先日、妻の財布からAホテルの日帰りプランのレシートを見つけてしまった。もうこれは絶対クロ。浮気でしょ! と妻を責めました」
すると妻は“PTAの引き継ぎだが、学校は閉鎖中で教室が使えない”、“Aホテルのテレワーク応援プラン。変なものじゃない”などと言い張る。怪しすぎるが、それ以上、確たる証拠もない。目下、監視と証拠集め中だというが、もうひとつ気になることがあるという。
「最近、セックスのときにコンドームを使いたがらない。浮気相手とも生でやってるのかな。妊娠したら俺の子ってことにされそうでイヤだよ」
まるで笑い話のように話す達也さん。顔で笑って心で泣いているようだった。
(取材・文/大西鮎子)