大東俊介

 先ごろ、『女性セブン』が《実力派俳優大東駿介120分独占告白「実は子供が3人います。別居婚でした」》と報じ、話題となった。

 おそらく記事の目玉は「独身として知られていた俳優が実は3人のパパだった」点や、大東が思春期に両親が蒸発し貧しい生活を送っていたという“壮絶な生い立ち”ゆえに、家庭を持つのに抵抗があった点を報じたことだろうが、ネットで注目されたのは別の部分。すでに入籍をし終えていた時期に女優との熱愛報道があったことに対して大東が発言した「(その女優とは)結婚の事実を隠しながら付き合い、何も伝えないままに別れた」というセリフだ。

「女性側は普通に交際していたつもりにもかかわらず、実は不倫だった」という、既婚を隠して忍び寄るタイプの“完全犯罪型不倫”をしていたことを暴露されたもらい事故感もさることながら、大東の身勝手さや姑息さに批判が殺到したのだ。

 近年、著名人の不倫にはひときわ厳しい声が殺到する傾向にある。とはいえ、不倫に対する考え方はさまざまで「いかなる理由があってもダメだ」という人もいれば「本人たちがよければ外野がとやかく言うことではない」という意見もある。いずれにせよ、独身の側が「相手は結婚をしている」「不倫がいけないことはわかっている」「それでも止められない」などと自覚し、悩みながらであればまだいい(いや、よくはないのだろうがここで是非を問うことは置いておこう)。しかし、今回のような“完全犯罪型”は、知らされていなかった側にかなりのトラウマを残す。

 例えば「ゲス不倫」という言葉まで誕生した歌手の川谷絵音も当初は結婚の事実を公表しておらず、不倫相手とはあくまで“普通のカップル”として交際していたと報じられている。独身側からすれば「好意を持っている相手」とお近づきになれたとしても、既婚者だと知っているかいないかで、関係性をどう構築するか変わってくることも多いはず。よって、一方だけが重大な事実を隠したままに愛を育むのは非常にアンフェアだが、この“完全犯罪型不倫”、一般の恋愛市場においても被害が急増している。

最後の彼女は「3年くらい前かな」

 多くの場合“完全犯罪型不倫”は、互いの情報があまり開示されていない状況で起こりうる。特に多いのが近年増えている「出会い系アプリ」での出会いだ。職場での繋がりや友人からの紹介などであれば、既婚者であるという事実を隠し通すことは難しい。しかし、個人情報を隠したうえで近づくことができるアプリで“普通の独身”を装って出会い、自然な流れで告白をして付き合い、その後も言動に細心の注意を払えば、独身のふりをすることも可能だ。

 実際に“完全犯罪型不倫”を経験したという冨田麻里子さん(仮名・28歳)は、

「出会い系アプリで理想の男性に出会い、初めて食事をした日に告白されて付き合うことになりました。食事中には仕事のことや将来の夢はたくさん話してくれましたが、いきなり“結婚してる?”とは聞きませんでしたよ。アプリに登録している時点で、既婚である可能性は考えなかったので。“最後に彼女がいたのはいつ?”なんて質問はしましたが“3年くらい前かな”とさらりと流されてしまいました。今思うとそれもウソなのですが……

 と、当時を振り返る。

「交際している間、私の家に泊まっていくことばかり続いたので“たまにはあなたの家にも行ってみたい”というと“父と同居しているからだめ”と言われました。34歳なのに親と同居しているようなタイプには見えないな、と不思議に思っいましたが……。しかも、会う頻度は月に1回くらいで、指定されるのは絶対に平日の夜でした」

 いま思うと“普通のカップルとして考えれば不自然な点”がいくつもあったという。

 同じく出会い系アプリで出会った男性が既婚者だった、という遠山早希さん(仮名・29歳)にも話を聞くと、やはり通常の交際とはちょっと異なるなという“違和感”を抱いていたそう。

「勢いのあるベンチャー企業の副社長をしていて顔もかなりのタイプだった男性とマッチングしたので、メッセージのやり取りや電話で話したのち、会うことになりました。互いに好意を持っていることは会った時点でなんとなく感じており、何度もデートを重ねたのですが、絶対に家には呼んでくれないしいつも外で会うだけ。性行為も車の後部座席で行っていましたね

 冨田さんも遠山さんも、それぞれの相手と3か月ほど付き合った。しかし、2人ともどこかで相手に対して“既婚者なのでは?”という疑いがずっと晴れず、最終的に問い詰めた結果、結婚していることを認めたそうだ。とはいえ、誰もが強気に相手を問いただせるわけではないし、大東のように最後まで隠し通す猛者もいるだろう。

 “容疑者”たちは最初から異性を騙すつもりでいるからこそ、徹底して戦略を練ってくる。冨田さんと遠山さんの話を聞いていると、妙な共通点が浮かび上がってきた。

・年齢や細かい事実関係も頻繁にごまかしていることがある(冨田さんの彼は、なぜか4歳サバを読んでいた)
・不審に思われないためか連絡はそれなりに頻繁だが、その内容は薄い(今日はお昼にカレーを食べた、など)
・SNSのアカウントを教えてくれない
・急な電話には出てくれない

 もちろん、こうした共通点は全員に当てはまるものではないだろうし、付き合っていると思っている間は「彼を信じたい」という気持ちがあるゆえに、発覚に至るのは難しい。しかし多くの場合、相手が細かい嘘をつき続けることでほころびが生じ、どこかでボロを出していることも多い。実際、前述の冨田さんは、徹底的にネット上の情報を調べたことで証拠を掴んでいる。

「フェイスブックの登録をしていないと使えない出会い系アプリだったにもかかわらず、絶対にフェイスブックで友だちになってくれないところもおかしいなと思っていました。そこで“友だちになってくれなかったら別れる”とかなりゴネたところ、しぶしぶ友だち申請を許可してくれました」

 冨田さんはすぐに彼のページを調べ始めた。

「不自然に更新頻度が少なかったので、私がゴネている間に見られたくない投稿を削除したであろうことが予想できたのですが、それでもどこかに怪しいところがあるはず、と彼の投稿を8年ぶん、遡(さかのぼ)りました。すると、7年前に海外旅行に行ったときの写真が見つかりました。彼がひとりでビーチでくつろぐ様子が写っていたのですが、左手の薬指には指輪が。さらに、5年前の誕生日に友人から“また奥さんと遊びに来てね!”というコメントが書き込まれていたことを発見したのです」 

 なかなかの執念で見つけ出したほころび。離婚の兆しも見えないことに嫌気がさし、彼のことは見限ったという。

現金払いや“泊まりなし”は怪しい!

 こうした“完全犯罪不倫”について、恋愛コラムニストとして連載執筆や数多くの恋愛カウンセリングを行ってきた堺屋大地氏は「そもそもですが、40歳以上でそこそこ恋愛経験がありそう(モテそう)なのに“独身”と言っている男性はまず怪しいです。バツイチならばまだしも“結婚歴がない”と言っている男は警戒したほうがいい」と語る。

 堺屋氏によると「付き合っている彼が既婚者かどうか見破る方法はある」という。堺屋氏が挙げる“怪しい男の特徴”13のチェックポイントは以下だ。

・家に呼んでくれない(家の場所を正確に教えてくれない)
・電話に出るのは会社か外出先がほとんど(当然、家では出ない)
・デートは平日ばかりを指定してきて、土日は会えない
・平日夜や土日にLINEの返信がない、既読になるか返信がくるのが遅い
・車を持っているのにデートに車を使わない
・レストランなどの支払いにクレジットカードを使わず現金払い
・高年収なのに、慣れると大衆的な飲食店が多くなる(小遣い制の可能性あり)
・飲食店→ホテルのデートコースが定番(映画や買い物にはあまり行かない)
・丸一日のデートには連れて行ってくれない
・泊まりの旅行に連れて行ってくれない
・大型テーマパークや人目の多いところに行きたがらない
・特定の街(駅)に行きたがらない(家族や知人に見つかるリスクは避ける)
・左手の薬指に指輪をしていた痕跡(日焼け跡など)がある

「以上が挙げられます。これらを踏まえたうえで、家の場所を教えてくれたり家に招待してくれたりするかどうかや、休日にTDLやUSJに誘って応じてくれるか、宿泊旅行をおねだりして連れて行ってくれるか、持っているのにクレジットカードや車を使わない理由、を尋ねるなどして、既婚者かどうかを見極めるのがいいでしょう」

 チェックポイントを見返すと、冨田さんも遠山さんも言っていた不可解な点がいくつも当てはまっていることがわかる。とはいえ、これらに当てはまるからと言ってすぐに「完全犯罪不倫だ」と断定するのは難しいだろう。さらに確証を得るための方法として、堺屋氏は以下の方法も伝授してくれた。

「シンプルかつストレートな方法として、抜き打ちでLINEのチェックをするのも効果的です。まず確かめるのは、自分のLINE名がどんなふうに登録されているかと、やりとりが削除されていないかどうかです。言わずもがな、LINE名をわざわざ偽装されていればクロ、メッセージのやり取りが削除されていてもクロの可能性が濃厚です。また、夫婦仲が悪くなければ、相手は奥さんと“今から帰るよ”みたいなやりとりをしている場合も少なくありません

 しかし、勝手にスマホを見ることはなかなか難しい。特に、不倫をしている男性なら警戒心が強いはずだ。だからといってストレートに「見せて」と言っても拒否されてしまいそうだが……。

「“仕事関係のやりとりもあるからスマホは見せたくない”と拒否したり“スマホチェックするような女とは思わなかった”と逆ギレされたりしたら、こう言ってみてください。“じゃあ、私とのやりとりの画面だけ見せて”と。これなら仕事関係の情報の件も、スマホチェックうんぬんの件も、クリアできることになります。それさえも見せてくれなければクロの可能性が高くなり、逆にすぐに見せてくれて、偽名の使用ややりとりの削除がなければ安心度が上がります」

少しでも違和感があれば早めに確認を

 こうした働きかけにより、相手が既婚者だと発覚した場合には?

「これは、本人が“今後どうしたいか”によって、大きく変わります。そもそも“相手が既婚者なら別れる”というスタンスであれば、相手の言い分(言い訳)なんて聞く必要もないので、LINEでも電話でもいいから即座に別れを突き付けて、LINEなどをブロックして連絡手段を断ち、それで終了です。

 しかし、対処法や問い詰め方を考えようとしているのであればその時点で、どこかでまだ相手と交際を継続したい気持ちがある、つまり、未練や執着がある可能性が高いのではないでしょうか。ですから、相手に対してどんな対応をとるか決める以前に“自分がどうしたいか”を考える必要があります。怒りにかられて何も考えずに(自分の方向性を決めずに)対面することだけは避けて。もっとも不毛だと思います

 落ち着いて考えたのち、実は既婚者だったという事実がやはり許せなかった場合、訴えれば慰謝料などはもらえるのだろうか?

「相手が既婚と知らず、一方的に騙されて付き合っていた場合、慰謝料を請求できる可能性は十分にあるでしょう」

 なぜなら、法律上、婚姻した者は“配偶者以外とは性的関係を持たない”という貞操義務を負うため、ほかの異性と性的な関係を伴う交際をすることは不法行為にあたるからだ。嘘をつかれ、貞操権を侵害された被害者の側は、相手の不法行為で受けた精神的な苦痛に対する慰謝料を請求できることがあるという。ただ、訴訟して慰謝料を請求する場合には、相手の配偶者にも事実を知られることは免れない。よって交際相手の配偶者から慰謝料を請求されるリスクも考えておかねばならず、現実的には厳しそうだ。

 思いもよらないがゆえに自分では気づくことが難しい“完全犯罪不倫”。もしもチェックリストに当てはまるもののなかで、少しでも違和感を覚えたら、相手が“クロ”でないかどうか早めにチェックしてみる必要がありそうだ。

(取材・文/松本果歩)