A子さんが受け取った入院診療計画書。「COVID-19」(新型コロナウイルス)の文字が

「私たち夫婦は外出できるようになりましたが、子どもたちは、いまだに巣ごもりを強いられているので、不憫で……」

 そう語るのは、夫が東京・新宿区歌舞伎町のホストクラブで働く30代の専業主婦・A子さん。

夫婦は陽性、子どもは陰性

 ホストクラブといえば、最近もクラスター(感染者集団)が発生し、小池百合子都知事から、東京アラートが点灯したのは“夜の街から”といわんばかりに指摘され、問題になっている。

 窓がなく換気が不十分な店舗内で、“3密”を伴う接客が行われ、誕生パーティーともなれば、盛大に祝うのが恒例。シャンパンタワーや酒の回し飲みなどは日常茶飯事だ。

 A子さんの新型コロナウイルス感染が確認されたのは5月下旬ごろで、夫の微熱がきっかけだった。

夫の店は緊急事態宣言のあと1週間は休業しましたが、そのあとは闇営業を始めました。協力金をもらい休んでも、運転資金には全然足りません。5月下旬、夫が37・2度の微熱が2日続き、ほかは無症状でしたが、直後に同じ店のホストが発熱して早退しPCR検査をしたところ、陽性。それで夫も検査を受けましたが、私や子どもも心配なので受けることになりました」(A子さん、以下同)

 結果は、A子さんと夫は陽性で子ども2人は陰性だった。

「そのころ、夫の熱は下がっていましたが、今度は味覚や嗅覚に異常が出ていました。私のほうは、まったくの無症状でした」

 小さな子どもがいる家庭だけに心配な状況だったが、3つの選択肢が提示された。  

 夫婦ともに軽症だったので、家族4人で自宅待機。次に、子ども2人をA子さんの実家か施設に預けて、夫婦で入院。最後は、家族全員で入院する─。

一家4人で入院生活を送っていた病室

「自宅待機をしても、食料は配達か、買いに行かなければいけない。子どもを施設に預けるのはかわいそう。実家は近いのですが子どもが陽性になった場合、高齢の親に感染するおそれもあったので、4人で入院することにしました」

 入院先は都内の病院で、6人部屋にベッドが4つ並べられていた。症状が重くなかったので、退屈に感じる時間が長かったという。

陰性後、2週間自宅待機

 そんな入院生活も3泊で終止符が打たれた。この間、夫婦は2度、PCR検査を受けたがいずれも陰性と出たからだ。

 しかし、今後は困ったことになりそうと、A子さんは告白する。

「実は夫はホストクラブを辞めたがっていたので、これを機に転職を考えています。もちろん私も大賛成ですが、現在、店を休んでいて無収入。なんとか貯金を切り崩して生活している状態です」

 さらに、2人の子どもへの心配の種も尽きない。

「幼稚園は再開していますが、子どもも感染している可能性もあるため、私たちが陰性になった時点から2週間、自宅待機をする必要がありました。子どもはなぜダメなのかが理解できないので、本当にかわいそうで……」

 最後に、自宅のどこで感染したのか聞いてみると─、

「もちろん寝室は一緒ですが、夫はほとんど朝帰りなので、私とはすれ違いの生活でした。だから、どこで夫から感染したかはわからなくて……」

 感染経路不明が、コロナの最も恐ろしいところだ。