(左から)原田龍二、桐山漣

 俳優・原田龍二に文春砲が命中してから1年がたった。それでも彼は「年月は関係ない。これからも自分の過ちと向き合うのみ」と語り、自らを鼓舞し続けている。そして今回、原田とともに人生を振り返るのは『仮面ライダーW』で主人公のひとりを演じた、若手人気俳優の桐山漣。気鋭の若手俳優と全裸俳優、異色の俳優対談が実現した。

「“結果さえ出せればいい”なんて思っていました」

原田 はじめまして! 僕のこと知ってる?

桐山 もちろん知ってますよ! 今日は、よろしくお願いします!

原田 実は、この連載初の俳優ゲストが桐山くんなんですよ。同業同士という意味でも楽しみにしてました。

桐山 そうなんですね! 光栄です。

原田 ただ、この連載のテーマは“反省”なんだよね……。僕にはぬぐい去れない反省材料があるんだけど、桐山くんにはないでしょ!? どうして来ちゃったの?

桐山 アハハ! いやいや、反省ばかりですよ。今日はぜひ、人生の先輩に教えを乞いたいと思って来ました。

原田 僕が教えられることなんて何もないよ(笑)。実は、ある俳優さんから「桐山くんはすごくカッコいいコだよ」っていう話を聞いたことがあったんだよね。

 しかも、その“カッコいい”は、容姿だけじゃなく内面を含めた言葉だったので、今日は桐山くんが醸し出す“カッコよさ”に迫りたいです。

桐山 そんな裏情報があったんですね(笑)。

原田 ちなみに、この世界に入ったきっかけは?

桐山 僕はずっと音楽が好きで、高校時代はバンドでベースを弾いていたんです。もともと人前に立つことが好きでミュージシャンを目指していました。でも、グループで曲を作ったり、みんなでライブをしたりする作業に向いてないと感じてバンドを抜けたんです。それから「新しいことを始めよう」と思って、人前に立つという共通点がある、役者を目指したのがきっかけですね。ただ、当時は芝居はひとりでやるものと思い込んでいました。

原田 自分の将来のビジョンを見据えて、向き合いながら道を切り開いてきたんだね。

桐山 たしかに“自分のやりたいこと”はよく見えているかもしれないです。ただ、当時の「お芝居はひとりでもできる」という考えは違っていましたね。これは僕の人生の反省点でもあります。

原田 と、いうと?

桐山 20代前半でこの世界に入らせてもらって、当時は「結果さえ出せればいい」なんて思っていたんです。監督や周囲の人とあまりコミュニケーションをとらず、淡々と仕事をしていたんです。でも、いろいろな現場を経験していくうちに、ひとりで作品を作ることはできないことを知りました。

原田 そうだね。作品は、お互いに歩み寄って全員で作るものだよね。

桐山 おっしゃるとおりです。今は監督としっかり話し合って作品に取り組んでいます。バンドでは共同作業は向いてないと感じたけど、今はもっとたくさんの人と関わりながら仕事をしている。本当は人と一緒に作品を作るのが好きなのかもしれないです。

原田 これまでの経験をしっかり自分に活かしているんだね。一見、関係なさそうに思える経験が仕事につながることもあるし。実は僕、子どものころからゴリラが大好きなんだけど……。

桐山 ゴ、ゴリラですか!?

原田 うん。好きな理由は特にないんだけど、動物園に行ったら、まずゴリラを見に行くくらい大好き。そして何の因果か、ある番組の企画でジャングルにマウンテンゴリラを探しに行くことになったんだよ。それぞれが明確につながっているわけじゃないけど、少なからず僕のゴリラ好きが影響して、ご縁をいただけたのかもしれない。桐山くんが過去にバンド活動をしていたことも、今のお芝居の血や肉になってるんじゃないかな。

桐山 いきなりゴリラが出てきてびっくりしました(笑)。たしかに、自分では気づきにくいけど、これまでの人生が今の自分を形成してるのはたしかですよね

「原田さんて本当に“丸裸”ですよね」

桐山 今日、原田さんにお会いするのをすごく楽しみにしていたんですけど、大先輩だし怖い人だったらどうしよう、という気持ちもあったんです。

原田 そうなの!? 最近は、怖そうって言われないから新鮮だなあ。

桐山 でも、すごくフランクに接していただいてうれしいです。実は、年末に放送される『笑ってはいけないシリーズ』が大好きで、毎年「原田さんいつ出るのかな」って思いながら見ています。

原田 アハハ! 今日を機に、ただの“おもしろいおじさん”だと思ってもらえたらうれしいな。

桐山 原田さんって、本当に丸裸じゃないですか。服を着てないという意味じゃなくて、内面もさらけ出しているような気がして、本当にカッコいいです。

原田 桐山くんだって、仕事だったらやると思うよ!

原田龍二と桐山漣

桐山 たしかに、仕事だと割り切ることはできるけど、精神的な面で原田さんの域に達することはできない気がするんですよね。

原田 なんだか照れますね。でも、そう言ってもらうと「あの仕事を引き受けてよかったな」って思うんだよね。オファーが来たときに「これをやったら絶対に自分も楽しいし、見た人も“おもしろい”と思ってくれるはず!」というイメージをして仕事を受けたからポジティブな感想をもらうと、その都度、報われるよ。

桐山 原田さんは男性のファンも多いですよね。それはきっと、おもしろさの先に“カッコよさ”を感じてるからだと思います。

原田 周囲の印象が一気に変わる仕事だったから、そのぶんインパクトも大きいですよね。桐山くんはアクションもやっているからわかると思うけど、ハードな仕事は印象深く残るでしょ?

桐山 そうですね。

原田 自分を変えるほどの仕事は、見ている人にとっても強い印象を与えると思う。映画『八甲田山』で、高倉健さんが雪の中を真っ白になって進んでいくシーンが脳裏に焼きついてるのも、現場の過酷さを物語ってるからだと思う。それが、僕の場合は年末の裸だったという……(笑)。

イメージを変える難しさに悩む

桐山 原田さんが全力なのが伝わってくるから、見ている人も楽しめるんですよね。

 原田さんもおっしゃってたように僕も“おもしろい人”って思われたい願望があって。コミカルな役を演じて「おもしろかった」って感想をいただくのもうれしいんですけど、役を離れた個人を見てほしい、と感じるようになりました。でも、なかなか周りの目が気になっちゃって、自分を出しにくいジレンマも抱えています。

原田 僕たちは人に見られる仕事だから、大切なことなんだけどね。桐山くんはいま何歳?

桐山 35歳です。

原田 たしかに僕も、その年齢のころは違う自分を見てほしいと思っていた気がする。

桐山 そうなんです。定着したイメージを変える難しさに悩んでいます。

原田龍二(右)を真剣な表情で見つめる桐山漣(左)

原田 仕事は巡りあわせだから、自分のイメージを変える仕事にいつ出会えるかわからないよね。僕の場合はいつ何時どんなオファーでも受けるぞ、という心構えはしているかな。

 ちなみに、桐山くんは友達や身近な人に「かわいい」って言われることはある?

桐山 ときどきありますね。友人があるインタビューで「桐山は天然」と言っていて、それが意外な意見だったので興味深かったですね。

原田 天然というのは、いい意味で“スキ”があるってことだよね。天然な部分やかわいい一面を出していくと、新しいチャンスが来るかもしれない。極端な話だけど、桐山くんが「丸腰刑事」をしたらみんなギョッとするし、男性のファンもつくかも(笑)。

桐山 第2の原田龍二ですね……! そうすると、スキャンダルも起こさないと。

原田 スキャンダルは起こしちゃダメ!(笑)

【本日の、反省】
 連載初の同業者との対談だったので「僕が彼と同じ年齢のころどうだったかな」と考えながらお話ししました。役者としてがんばっている一方で、違う一面も見てほしいという思いは、僕にもあったのでよくわかります。でも今日話してみて、とてもまじめで素直な桐山くんの魅力を感じました。これからも真摯に仕事に取り組んでいけば、たくさんの人にかわいがってもらえると思う。いつか自分にしかできない役に出会えるんじゃないかな。今度、現場で一緒に仕事がしたいです!

《取材・文/大貫未来(清談社)》


はらだ・りゅうじ ◎1970年、東京都生まれ。第3回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞後、トレンディードラマから時代劇などさまざまな作品に出演。芸能界きっての温泉通、座敷わらしなどのUMA探索好きとしても知られている。現在、期間限定でYouTubeチャンネル「原田龍二の湯〜チューブ!」を配信中!

きりやま・れん ◎1985年、神奈川県生まれ。2006年から俳優活動をスタート、2009年『仮面ライダーW』では左翔太郎役で主役に抜擢。近年ではNTV『俺のスカート、どこ行った?』、NHK『これは経費で落ちません!』ほか、先日最終回を迎えたNHKのよるドラ『いいね!光源氏くん』では、光源氏のライバル・中将を演じ注目を博す。