ユーチューバー・宮迫博之

 昨年の闇営業騒動で大きく世間を騒がせ、今年の1月からYouTubeチャンネルを開設し、動画の配信をスタートさせた、雨上がり決死隊の宮迫博之。

 騒動の余波の尾を引くなかでのスタートで、当初は心配や懸念の声も聞かれたが、フタを開けてみればYouTubeの配信は好調、6月19日現在で97万人のチャンネル登録者数を数え、再生数が100万回を超える動画も少なくない。

宮迫らしいあざとさ

 もちろんその知名度の高さはいうまでもないが、ここまで成功できた理由はどのようなところにあるだろうか。人気バラエティー番組を手がけるある放送作家は、

「なんといってもトークスキルの高さに尽きるのではないでしょうか」

 と、宮迫のトークのポテンシャルの高さに注目する。

「料理配信やゲーム配信など、企画そのものはザ・ユーチューバー的なものも多いのですが、それを高いトークスキルで見せてくれますからね。ある意味、『ユーチューバーの企画を一流芸人がやったら』という雰囲気もあり、やっぱりすごい人だったんだなと感じますね」

 さらに、ヒカルやレペゼン地球という人気ユーチューバーとのコラボも多いことも、視聴者数獲得の底上げにつながっているという。

「人気ユーチューバーのファンに見てもらえるという、便乗感というか、あざといところも宮迫さんらしい気がします(笑)」

 トークスキルや話題性さえあれば、人気ユーチューバーになれるというわけでもない。人気ユーチューバーの適正として、「NGが少ないこと」も条件のひとつではないかと前出の放送作家は指摘する。

「宮迫さんより前にユーチューバーとして成功したカジサックさん(キングコング・梶原雄太)もそうですが、家族も含め、リアルな交友関係を表に出していける人は強いですね。宮迫さんも、失うものがない状態からのスタートでしたから、NG案件が少ないぶん、いろんなことができるという強みがあります

テレビと配信メディアの力関係

 宮迫やカジサックの成功によって、ますます芸人やタレントの、ユーチューブや配信メディアへの本格的な進出がすすむ可能性は高そうだ。これはユーチューバーにとって、実力のあるメジャーリーガーが次々と乗り込んでくるようなものだけに、大きな脅威になっているはずだ。

たとえばメイクや美容動画を配信するユーチューバーにとっても、人気モデルや女優がそこに次々と進出してきたら、食われてしまうと思います。なかにはフワちゃんのように、芸人としてなかなか芽が出なかったところ、ユーチューバーとして成功し、テレビに進出するとうい逆パターンもあります。リモートによって、テレビの収録スタイルも根本から見直されたいま、ユーチューブなどの配信メディアとテレビとの力関係も変わってくると思います

 というのはユーチューブの世界に詳しい芸能ジャーナリストだ。とはいえ、

「宮迫さんが成功したからといって、そのレベルを上回るスキルを持った人がどれだけいるか。誰もが参入して成功できるわけではありません」(前出・放送作家)

 芸人やタレントにとって、なかなかテレビに出られないからユーチューブに、という選択でなく、積極的に動画配信を活用するスタイルも増えてくると思われる。前出の放送作家が言う。

「ミュージシャンもそうですが、テレビでなかなか披露する機会のない演奏や芸を、個人のメディアとして自分のよさを見せていくことができるわけですからね。本来の“芸”のあり方に近づいていくのではないでしょうか」

 かつて山口智充とのデュオ『くず』でヒット曲を出すなど、その歌唱力の評価も高い宮迫だが、先日、アーティストとしての活動を発表。宮迫博之としてのデビュー曲も披露したばかりだ。そのタイトルは、『雨あがり』。宮迫の逆襲は、つづくーー。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉