新型コロナウイルスによる経済の悪化は夏のボーナスにも影響。大手企業の平均で6%減少、という数字が発表された。中小企業の状況はさらに厳しく半額以下に減額したり、支給自体をとりやめたりする企業もある。
分断された「勝ち組」と「負け組」
ボーナスの使い道についても厳しい現状がうかがえる。ある調査会社のアンケートでは、使い道に「貯金」「生活費に充てる」と答えた人が半分以上。先行き不透明なうえ、老後への不安もあれば、貯蓄に走るのは当然のことだ。
※5月23日~25日、男女447名に行った調査によると半数近くが「貯金」と回答。今後の生活不安からお金を蓄えようという意識が高まっている。
だが、必ずしもそれは賢明な方法とは言えない。そもそも、ゼロ金利が続く今の時代は、コツコツ貯金していくだけでは資産がなかなか増えていかないのだ。
長い目で見ると“投資”は必要だという考え方もある。野村證券に勤め、今は独立して資産コンサルティング会社で女性向けの資産運用セミナーなどを行っている吉田友哉さんは、こう話す。
「金融商品を選ぶポイントは、3つあります。“安全性”“収益性”“流動性”。
銀行の預貯金は万が一、倒産したとしても1000万円までは保障され、普通預金ならいつでも引き出せます。つまり銀行預金は安全性、流動性は高いと言えますが、何年預けても元本はほとんど増えません。
一方、株式や投資信託など“投資”は元本割れのリスクがあり、安全性は確保できないものの、増やせる可能性があります」
それぞれメリット、デメリットがあり、三拍子そろった金融商品はない。
「“自分が何を求めるのか”“お金の用途は何か”を考えて金融商品を組み合わせることが賢い方法です。
10年、20年先の老後資金のために、多少のリスクを負っても、投資で“お金自身に働いてもらって増やす”という対策も必要になってくると思います」(吉田さん、以下同)
コロナ不況によって、株価は大暴落した。経済も金融市場も下がるところまで下がったが、ようやく世の中が回復に向かって動き始めている。“今こそ株の買い時だ”という声も聞こえるが、
「株価を見ると、コロナ禍でも増収増益を続ける企業や、外出自粛により新たな需要が生まれて伸びている業種もあります。コロナ不況で、勝ち組、負け組が、よりはっきりと分断された印象を受けます。
もちろん今後、コロナの第2波がくるかもしれませんし、市場の見通しは依然として不透明。ですが、勝ち組を見極めて投資するには、いいタイミングだと思います」
夏のボーナスの使い道として、株式投資に挑戦してみるのも、ひとつの選択肢かもしれない。
ネット証券なら手数料がゼロ円も
ただし、投資の中でも株式はハイリスク・ハイリターンだ。うまくいけば投資した金額の何倍もの利益を得られる可能性はある。一方、急な経営悪化などで株価が暴落する危険性も伴う。
「まとまったお金を一気につぎ込むのではなく、最初は少額から始めるのがリスク回避につながります」
そもそも株式投資とは自分が選んだ上場企業の株を買って株主になることだ。株式は株式市場で自由に売買でき、買った値段より高く売れば値上がり益を得られ、逆に値下がりすればそのぶん損をする。
値上がり益は株式投資のいちばんの醍醐味だが、どうやって株デビューをするのか? まずは証券会社で口座を開くのが第一歩。証券会社には店舗型とネットの2種類がある。
「現在はネット証券を利用する人が圧倒的に多いですね。いちばんの理由は手数料の安さ。店舗での対面取引の場合は、株の1回の売買に成立した金額の1%前後の手数料がかかりますが、ネット証券では50万円以下であれば手数料無料のところも。総じて数十円から数千円と低水準です。
一方、店舗は、担当者が対面で商品や相場の動きなどの情報を提供し、売買の注文を取り次いでくれます。わからないことは何でも聞けますし、相場の動きを見て売買のタイミングを教えてもらえたりするメリットがあります」
ネット証券の場合は、証券会社のホームページからオンラインで申し込みが可能。自分の情報を入力し、本人確認書類など必要な書類を提出すれば口座が開設できる。まずはどこの証券会社で取引するかを選ぶのが先決だ。
「現在、もっとも利用者(口座数)が多く、二強と呼ばれるのは、SBI証券と楽天証券です。例えば楽天証券だと楽天カードのスーパーポイントを投資に使えるなど、各社それぞれ特徴があります」
手数料や特徴を比べて自分に合った会社を選ぶとよいだろう。口座開設の申し込みの際には、口座の種類(納税の方法)と、NISAの希望の有無を選択する。
「まず、一般口座と特定口座の2種類があり、納税の方法が異なります。株式投資によって利益を得ると約20%課税され、納税する義務があります。一般口座は利益の税額計算をして、確定申告をし、納税まですべて自分で行います。
特定口座(源泉徴収あり)は、証券会社が納税までの手続きを代行してくれます。自分で確定申告する人以外は、手間がかからない後者を選ぶ人が多いようです」
『NISA』という言葉はよく耳にするだろう。正式名は少額投資非課税制度。株を売ったときの利益や配当金が課税されない制度のことだ。
「その恩恵にあずかるには、NISA口座を開設します。ただし、無制限に非課税になるわけではなく、年間120万円までという上限があり、それを超えるものはNISAの枠を使えません」
非課税となる期間は5年間で毎年120万円投資したとしたら5年間で600万円。それに対する利益に一切税金がかからないことになる。
コロナで儲かったベンチャーを狙え
口座を開設したら、いよいよ株を購入。その前に基本的な知識を。株式市場では日々取引が行われ最新の取引価格を“株価”という。日本には東京証券取引所のほか3つの取引所があり、その中に東証1部、マザーズといった市場がある。証券取引所に上場している企業は4000社以上。
なお、購入できる単位は原則として100株。例えば株価が800円なら100株で8万円を支払うことになる。中には、1株から買える単元未満株というものもあるが、数が少なく、扱っている証券会社が限られる。
おびただしい数の銘柄の中からいったい何を選べばよいのか? ここは、吉田さんにアドバイスをいただこう。
「株を見極めるポイントは大きく2つあります。“割安感”と“成長性”です。割安感とは、資産がある大企業の株価がそのとき下がっていたら割安で買っておくということ。後者は、企業の成長に期待して買うこと。
今はまだ資産が積み上がっていないけれど、今後売り上げ増や事業の発展などが予測される新興系の会社の株を購入しておけば、今後グンと上がる可能性があるでしょう」
割安感か成長性か、どちらを着目すべきか?
「すでに確立された大企業は、そもそも株価が高く、購入額が高くなりますし、上昇率も大きくは望めません。少ないお金で、5倍、10倍の利益を狙うならば、成長性を見て選ぶのがおすすめです」
どんな業種が、今後伸びていくと予測されるのだろうか。
「コロナ禍の外出自粛により需要が伸びた物流系。IT系、ITを支える半導体の研究・製造メーカー。オンライン診療関連などです。例えば物流系ですと、オンラインショッピングサイトの大手『アマゾン』の株価が上昇していますが、アマゾンの物流センターの管理を委託している『ファイズホールディングス』(株価1148円)もそれに伴って急成長しています。
これは“風が吹けば桶屋が儲かる”ということ。株を買うとき、単純に“この企業が成長する”という視点だけでなく、そこが提供する商品やサービスに関連する企業にも目を向けると、株の面白みがガ然、広がりますよ」
わかりやすい例を挙げると、スーパーの売り上げが伸びると、食品トレーの需要が増え、その会社の売り上げも伸びる。
「具体的に企業名を挙げると、食品トレーやお弁当容器の製造・販売のトップシェアを占める『エフピコ』(株価8180円)。この会社は『出前館』と冷めないラーメン容器の共同開発もしていて、今後さらに成長が見込めます」
コロナによって以前の10倍以上利用者が増えたのがオンライン診療だ。
「そのシステムやプラットフォームを提供する『メドレー』(株価3970円)と、『メドピア』(株価2926円)の株価が上昇中。ともにおすすめですね」
5万円で投資にチャレンジ
これまで紹介した企業は、株価が1000円以上。100株購入すると10万円を超えてしまう。そこで、5万円以下で、気軽にチャレンジできる、1株500円以下のおすすめ銘柄を吉田さんに5つ挙げてもらった。
いずれも、いま現在のみならず未来の社会に必要な技術、製品、サービスを生み出す企業ばかりだ。
「5年後に大化けしている株があるかも!」
《1》■キャリア■ 人生100年時代に! 需要はうなぎ上り
●株価409円●最低投資金額4万900円
シニア人材派遣や介護福祉士、ヘルパーの派遣などを行う企業。人生100年時代を見据え、退職後のセカンドキャリアをサポートするので国の政策とあいまって需要が伸びるだろう。
《2》■ソレイジア・ファーマ■ “がん”は完治する病に! 希望の医薬品メーカー
●株価220円●最低投資金額2万2000円
がん領域の医薬品を開発するバイオベンチャー。これまで4種類の製品を開発し、1つは日本で、1つは中国で承認を受けて販売。ほかの2製品は新薬候補。承認されると株価に好影響。
《3》■サイバーダイン■ ロボットスーツが高齢者の生活を変える
●株価462円●最低投資金額4万6200円
筑波大学の研究室で誕生したベンチャー。人間の指示を読み取り身体機能を補助する装着型サイボーグ『HAL(R)』を開発。今後の医療、介護などに大きな影響を与える可能性が。
《4》■DDS■ 将来は“生体認証”が当たり前の世界に
●株価253円●最低投資金額2万5300円
指紋や静脈などの生体認証ソフトを作り、それを活用したセキュリティー製品を開発する企業。和歌山県紀の川市で職員のPCログオン時の生体認証に導入され、全国的な導入が期待される。
《5》■リソー教育■ 少子化に生き残るクオリティーの高い学習塾
●株価324円●最低投資金額3万2400円
個別指導学習塾『トーマス』を首都圏中心に直営展開している企業。少子化が進む中、勝ち組となりそうな学習塾がココ。個別指導を「進学向け」とした先駆者で進学実績も高い。
※株価は6月19日時点のものです。
※本企画は投資にあたっての参考情報を提供するものです。投資判断は自己責任でお願いします。
《取材/村瀬素子》