いよいよ、夏目前! サンサンと降り注ぐ太陽の下、青い海で思いっきり身体を動かしたいところだが、まだまだ新型コロナウイルスへの不安も残る。今年は海水浴を楽しめるのだろうか──。
海開きやイベントも行いません
今夏は新型コロナウイルス感染を防ぐため「3密」を避けて屋外でのレジャーを計画する人も少なくないのでは。
しかし、開設か・中止か──。全国の海水浴場ではその判断に苦慮している。人気のビーチで今年も泳げるのか? 各地で聞いてみた。 ※中止→×、開設→◎
×石狩浜海水浴場(北海道)
札幌から車で約40分。約800メートルの海岸線を持ち、コンロや炭を借りられる「手ぶらでバーベキュー」も楽しめる海水浴場として知られ、道内随一の人気を誇る。
「安全管理体制が確保できないため、海水浴場の開設は中止となります。それに伴い、海開きやイベントも行いません。例年多くの人にご利用いただいているので、たいへん残念な気持ちです」と石狩市企画経済部商工労働観光課の担当者は語った。
×千里浜海水浴場(石川県)
日本で唯一、砂浜を車で走ることができる「千里浜なぎさドライブウェイ」が有名。車を降りるとすぐ目の前に海という絶好のロケーションだが、残念ながら今年は海開きも中止、海水浴場もクローズが決定している。
「波打ち際のドライブ、日本海に沈む夕日は最高です。コロナ禍が1日も早く収束し、次年度以降、たくさんの方が訪れてくれることを願います」(はくい市観光協会)
×根元海水浴場(千葉県)
房総半島の南端にあり、伊豆七島の大島などを望むスケールの大きなロケーションが魅力。南房総市の担当者は、
「新型コロナウイルスに対する安全面の確保が難しいことから海水浴場は開設せず海開きのイベントも中止することになりました。ワクチンの開発や対応グッズの早期開発を望むとともに、次年度に向けて安全に海水浴場をお楽しみいただけるように対策を検討してまいります」
お客様が訪れてくれるか心配
×逗子海水浴場(神奈川県)
都心からのアクセスもよく、また遠浅で波が穏やかなことからファミリーでも安心して楽しめる。例年の来場者数は30万人以上という国内有数の海水浴場だが、開設や夏季のイベントを見合わせた。
「感染拡大防止を徹底しながらの運営は困難なため断念しましたが、経済面をはじめ、多大な影響があり断腸の思いです」(逗子市経済観光課)
と悔しさをにじませた。
×大磯海水浴場(神奈川県)
明治18(1885)年、初代軍医総監を務めた松本順によって開設された日本最初の海水浴場。例年8万人以上が訪れ、国内屈指の知名度。
大磯町産業環境部産業観光課の担当者は肩を落とす。
「開設に向けて準備をしてきただけにとても残念」
◎熱海サンビーチ(静岡県)
温泉地、熱海を代表するビーチ。ヤシの並木が続き海外リゾートのよう。さらに夜間はライトアップされ幻想的な雰囲気に。そのためたいへん人気があり、ビーチにはひと夏で15万人が訪れている。今年の海開きは7月23日で、8月30日までの開設予定。熱海市公園緑地課は、
「県外からの移動の自粛を呼びかけていましたが、海水浴場を開設して経済の回復を」
◎白良浜海水浴場(和歌山県)
温泉、ジャイアントパンダでも知られる白浜町にある総延長620メートルのロングビーチ。文字どおり真っ白な砂が特徴で40万~50万人が訪れる近畿圏きっての人気の浜だ。今年の海開きは7月23日で、8月31日まで開設される。
「白浜町が策定するガイドラインに基づき運営したい。海水浴場の開設が決定したが例年どおり、お客様が訪れてくれるか心配です」(担当者)
完全に安全と言い切れません
×沙美海水浴場(岡山県)
倉敷市の西南端にある瀬戸内海に面した浜。日本最古の海水浴場ともいわれ「日本の渚100選」にも選出されるほど風光明媚。
「感染が広がれば大変なことなので今年は中止することにしました。海水浴に関する問い合わせも多く、その都度断っているがしのびない。長い歴史の中で初めてです」(沙美海水浴場運営委員会)
◎福間海水浴場(福岡県)
ビーチ沿いにはオープンスタイルのカフェなどが立ち並ぶ人気のスポット。
ウインドサーフィンなどのマリンスポーツも盛んで、遊泳エリアとの間はロープで区切り、安全性も確保する。
近隣のカフェやマリンショップら、地域一丸となり、安全や感染症対策を徹底する。
「感染について完全に安全と言い切れませんが、ひとつでも多くの不安を取り除くため対策しています。コロナストレスの気晴らしに海沿いの散歩もおすすめ」(渡邊公義さん)
◎大浜海水浴場(長崎県)
長崎県五島列島の最北端、宇久島にある天然の浜。西海国立公園に指定され都会の喧騒から離れて大自然を楽しみたい人におすすめ。海開きは7月11日を予定し開設期間は8月31日まで。
「港での消毒液配備や検温、田舎だからこそできるソーシャルディスタンスなどで受け入れ態勢をしっかり行っています」(宇久町観光協会)
ただし、現在は感染者の多い地域からの来島は控えるよう依頼しているとのことだ。
◎読谷村[よみたんそん]残波ビーチ(沖縄県)
周囲にリゾートホテルが立ち並ぶ沖縄屈指の人気ビーチ。海開きは4月に行ったが、その後、自粛のためビーチはクローズ。6月中旬の自粛解除後、遊泳が可能に。
「例年だと観光客や地元客でにぎわうこの時期に閑散として寂しいですね。夏へ向けてお客様に3密回避などをお願いしつつ、運営者も対策に努力します」(村担当者)
◎豊崎美らSUNビーチ(沖縄県)
那覇空港から車で約15分とアクセスのよさに加え、多彩なマリンメニュー、フェスやイベントも多数行われ、昨年は62万人もの人が訪れた。4月に海開きが行われたが緊急事態宣言発令とともにクローズしたが現在は再開。
ビーチを管理するTSP管理共同企業体の久田友一郎さんは、
「“密”にならないよう呼びかけていますが、7、8月のピーク時期にどれだけコントロールできるか」と不安をのぞかせた。
事故に遭わないために心がけること
開設を中止する海水浴場の多くでライフセーバーや監視員が不在になる。砂浜で注意しながら遊ぶぶんには問題ないが、遊泳をすると危険が伴う。茨城県では6月に、監視員のいない海で水難事故が発生、2人が亡くなっている。
しかし、海は公共のもの。開設中止の海岸で遊泳しても罰則があるわけでもなく、来場の禁止もできない。管理者や自治体は中止を呼びかけたり、駐車場を閉鎖するなど措置をとるが、海水浴場を開設していなくても一定数の遊泳客が訪れることが各地で予想される。
神奈川県は『日本ライフセービング協会』と協定を結び、パトロールなどを依頼。他の自治体でも安全対策に頭を悩ませる。
「開設中止だと例年のような安全対策が取れません。十分に注意をし、自己責任のもとで利用をしてもらうことになります」(同協会の担当者)
事故を防ぐ! 海水浴場の5つのNG行動
各海水浴場は遊泳ルールを決めているはずなので、それを守ることは絶対だ。さらに事故を防ぐための5つのNG行動を担当者に聞いた。
【1】子どもから目を離す
「絶対に手が届く範囲で遊ばせてください」
【2】浮具の使い方、サイズが間違っている
ライフジャケットを着用してもサイズが合わない、正しく装着されていないと危険。
「海中でライフジャケットは浮き、身体は沈みます。密着してないと溺れる原因に」
【3】飲酒して遊泳
「お酒を飲んだら海には入らないでください」
毎年、飲酒後の死亡水難事故も後を絶たないという。
【4】熱中症対策を怠る
「頭痛やめまいを感じ失神(意識消失)することもある」
そんな状態で遊泳すれば溺れる危険性は高まる。
【5】パニック状態になる
自然要因で溺れた救助者の半数は離岸流が原因だった。離岸流とは海岸に打ち寄せた波が沖へ戻ろうとするときにできる早く強い流れ。波打ち際で巻き込まれ、大人も軽々と流される。
離岸流の発生や危険な波の高さを判断するのは難しい。
突然の強い流れでパニック状態になったり、その流れに逆らい岸に向けて泳げば疲労で逆に溺れる危険もある。
泳力があれば浜に向かって45度の方向に泳ぎ、自信がなかったり、疲れていたら浜と平行に泳ぎ、強く引く流れから抜けたら岸に向かう。もしくは慌てずに浮いた状態で救助を待とう。はるか沖まで流されることはない。
「また、台風も注意してください。台風がまだ沖にあり、風も強くないという状況でも打ち寄せる波は高くなっている可能性があります」
コロナ感染予防では、浜では隣のグループと2メートル以上あけて座り、大声で話す行為は避ける。口をつけた飲み物や食べ物を回すこと、タオルの共用も控えよう。
「海水浴の前には協会のホームページなどを参考に、事故防止や安全について学んでください。ルールを守り、譲り合いの気持ちを持って海を楽しんでもらいたい」
●万が一のときは消防(119)や海上保安庁(118)にすぐ連絡を。
他府県とこんなに違う! 沖縄の海水浴事情
沖縄の魅力といえば南国特有の美しいビーチ。海が観光の目玉ということもあり、全国で唯一、全県的に新型コロナウイルス感染対策による遊泳禁止が解除されている。
ただし、沖縄の海水浴場は他県とは異なる点があるのでピックアップした。
海開きは3月下旬~4月。遊泳期間は10月ごろまでと長い。沖縄のビーチには「海の家」がなくビーチの売店でパラソルやチェアをレンタルもしくは、ビーチサイドの東屋や木陰を利用することとなる。管理されたビーチではコインロッカーやトイレ、更衣室、シャワー(有料)も完備されている。
ただし、注意点もある。
沖縄県の海水浴場では強烈な日差しと白い砂浜のため照り返しが強く、油断すると重度のヤケドになってしまうことがある。さらにハブクラゲやウミヘビなど危険生物も生息するためハブクラゲ侵入防止ネット内で遊泳しよう。
都道府県別海水浴場の開設状況(海なし県を除く)
※取材をもとに編集部でまとめました
◎全都県的にほぼ開設
東京都(離島)・広島県・沖縄県
×全府県的にほぼ中止
茨城県・千葉県・神奈川県・福井県・大阪府・徳島県・香川県・山口県
△一部中止(海水浴場ごとに要問い合わせ)
上記以外の28道府県
◎開設しているビーチ
◎蘭島市海水浴場(北海道小樽市)
期間:7月10日~8月23日(人が集まるイベントの中止を呼びかけている)
◎鰺ヶ沢海水浴場(青森県鰺ヶ沢町)
期間:7月18日~8月23日
◎内海海岸海水浴場(愛知県南知多町)
期間:6月28日~8月31日(7月6日~8月18日はライフセーバーらを配置。海の家も開設するが各種イベントは中止)
◎大浜海水浴場(静岡県西伊豆町)
期間:7月23日~8月30日(海の家やイベントは中止)
◎皆生温泉海水浴場(鳥取県米子市)
期間:7月23日~8月16日(海の家はなし、海上アスレチックは設置)
◎青島海水浴場(宮崎県宮崎市)
期間:7月4日~8月30日
◎田ノ浦ビーチ(大分県大分市)
期間:7月1日~8月31日(海開きのイベントも実施)
◎西の浜海水浴場(佐賀県唐津市)
期間:4月21日~8月中旬ごろ(海開きの行事は実施ずみ)
×開設を中止しているビーチ
×網代浜海水浴場(新潟県聖籠町)
7月1日から8月16日まで巡回員を配置
×お台場海水浴「お台場プラージュ」(東京都港区)
新型コロナウイルスの影響が理由ではなく、オリンピックの関係で中止
×若狭和田海水浴場(福井県高浜町)
×大洗サンビーチ(茨城県大洗町)
×二色の浜海水浴場(大阪府貝塚市)
×有明浜海水浴場(香川県観音寺市)
×しまなみビーチ(広島県尾道市)
×磯海水浴場(鹿児島県鹿児島市)
取材・文/伊東一洋(トラベローグ)