味がわからない……もしかして新型コロナウイルス? 味覚がおかしい病気の症状はほかにもあるのです! 病気のサインはさまざま。年齢のせいかもと勘違いして手遅れになることも……。大病を見逃さないためにも知っておきたい“アラート”を30連発でご紹介!
乳がんや卵巣がんは遺伝性が高い
病気は早期発見が大切といわれるが、健康診断や人間ドックを受ける以外に何をすればいい?
「最近は新型コロナウイルスばかりが話題ですが、40代以上はほかにも気をつけたい病気がたくさんあります。自分で毎日できるチェック方法がありますので、病気のサインを見逃さず早期発見につなげていきましょう」
と、医学博士の植田美津恵先生。
日本人の三大疾病といわれる、がん、心筋梗塞(こうそく)、脳卒中、そして女性特有の病気には意外なサインがある。健康診断や人間ドックだけに頼らずに、自分で病気のサインに気づくことによって早期発見にもつながる。
「特に母親や祖母など、女性の肉親がかかった病気のチェックは欠かさないようにしましょう」(植田先生、以下同)
乳がん、卵巣がん、大腸がんは遺伝性が高いので、要注意を。
「急に病気にかかったように思えても、実は身体の中ではずっと前からジワジワと進行していることがほとんどです。健康診断でひっかかるのはかなり進行してからということも少なくありません。どの時点で気づくかが重要です」
そのためには日ごろから自分の身体の状態を知ることが大切。夜ではなく、朝にチェックすることがオススメ。
「すっきり起きられたか、夜中に息苦しかったり、トイレに立ったりして頻繁に目が覚めていないか、寝汗をかいていないか。さらには、気分のよしあし、肌、顔、目、舌、尿、便のそれぞれの色や形、手足のむくみなどをチェックしてみてください。いつもと違うところはないか比較することで病気のサインに気づくことができます」
メイクや着替えのときもチェックができる。
「化粧をしているときには顏や頭髪、着替えるときには身体の皮膚の状態がチェックできます。それぞれ10秒もかからないと思いますよ。友人に、化粧のときに鼻の頭にちょっとしたできものを見つけたので、気になって病院へ行ったら、皮膚がんといわれた人がいます」
それでは、自分でチェックできるサインを教えてもらいましょう!
病気のサイン:眉が薄くなった
1.『橋本病』
「メイクをするとき眉毛の量をチェックしてみてください。全体的に薄くなった、上のほうが生えてこなくなった、最近剃(そ)らなくてもよくなったなどは橋本病のサインかもしれません」
甲状腺機能が低下し、甲状腺ホルモンが不足する橋本病。甲状腺ホルモンは、身体の多くの組織を調節する大切な働きをしているため全身に症状が出る。
「自己免疫疾患のひとつで、男性に比べて圧倒的に女性に多い病気です。代謝が低下するため、活力や気力がなくなるのが特徴で、生命力が枯渇したような状態になります」
眉だけでなく頭髪も薄くなることもあるという。
「ほかには、だるい、眠い、夜眠れない、疲れやすいといった症状もみられます。眉が薄くなってこれらの症状があれば、橋本病を疑ってもいいかもしれません」
身体の小さな不調にも要注意
病気のサイン:まぶたが下がってくる
2.『脳動脈瘤』
まぶたが下がってきたのは、年齢のせいかと思ったら、実は命にかかわるかも……。
「まぶたが下がって目があけにくくなったら、脳動脈瘤(りゅう)が原因かもしれません」
脳動脈瘤とは、血流が滞ってコブのようなものが脳の動脈にできること。
「脳動脈瘤ができた場所によっては、視神経を圧迫してまぶたが下がってくることがあります。両方のまぶたが、ゆるやかに下がってきた場合は加齢による眼瞼下垂(がんけんかすい)かもしれませんが、突然、片方だけが急に下がるといった場合は、脳動脈瘤が疑われます」
脳動脈瘤は破裂すると大変なことに……。
「くも膜下出血という命にかかわる病気につながります。脳動脈瘤が早くに見つかれば、破裂しないようにする治療を施すことができます。早めに発見し治療することで、命の危険を避けられますので、急なまぶたの下がりには注意しましょう」
病気のサイン:二重に見える
3.『脳梗塞』
ものが二重に見えるのは、老眼の始まりかと思ったら……。
「脳梗塞のサインということもあるので注意してください。脳の血管が詰まり、視神経を圧迫すると、かすんだり二重に見えることがあります。一過性の脳梗塞の場合、突然、視界がおかしくなっても、しばらくすると症状がおさまることがあります」
その後、本格的な発作が起こることもあるので注意が必要。そのほかの兆候には、視野が欠ける、ろれつが回らない、食べ物をこぼす、顔がゆがむなど、さまざま。
「症状は突然起こり、急に動けなくなる、立っていられなくなることもあります。軽い一過性でも後遺症が残るほどの重症でも、突然あらわれるのが特徴です。しかし、脳の血管の詰まりは、症状が出る前から始まっています。高血圧や脂質異常などリスクがある人は、兆候を見逃さないようにしましょう」
病気のサイン:目のまわりの黒ずみ
4.『腎臓病』
「むくみは腎機能が低下しているサインということはご存じかもしれませんが、目のまわりの色にも注意しましょう」
徹夜をしたわけでもないのに、目のまわりがむくんで色が黒ずんでいたら要注意。
「目のまわりが黒ずんでいるのは、デトックスがうまくいっていないためです。老廃物が排除されず血液がドロドロになり、毛細血管が見えやすい皮膚にあらわれているのです。顔全体が黒ずむこともありますが、特に目のまわりは皮膚が薄いので黒ずみが強調されます。内臓でデトックスを行う主な場所は腎臓で、目のまわりが黒ずむのはその機能がうまく働いていないということです」
腎臓の病気は急性腎炎だけでなく、糖尿病性腎炎など背後に大きな病気が隠れていることもあるので要注意。
病気のサイン:耳たぶのシワ
5.『心筋梗塞』『脳卒中』
ピアスやイヤリングをつけるとき、耳たぶに注目。耳たぶにシワがあると、なんと心筋梗塞や脳卒中のサインかも。
「耳たぶにシワがある人は、ない人に比べて約3倍、心臓疾患で亡くなりやすいという研究結果をアメリカの大学が報告しています。日本でも同じような研究が発表され、耳たぶのシワが少ない人は、逆に心臓の病気が少ないという報告があります」
その原因は耳たぶの構造にあるようだ。
「耳たぶはやわらかくて脂肪組織が多く、毛細血管が豊富です。年齢を重ねると脂肪組織が少なくなり、動脈硬化の進行が毛細血管にあらわれるため耳たぶのシワになると思われます。高齢の方の耳たぶを見るとシワシワしていますが、年齢とともに動脈硬化が進んでいるためです」
動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中の大きなリスクとなる。40代からチェックしておこう。
病気のサイン:味覚がおかしい
6.『糖尿病』
新型コロナウイルス感染者の意外な症状として取り上げられた味覚異常。実は糖尿病の可能性も……。
「免疫力と味覚はつながっていることが、最近の研究でわかってきました。みなさんも風邪をひくと何を食べてもおいしくないという経験があるのでは?」
糖尿病患者は免疫力が低下していることから、味覚異常が症状のひとつとしてあげられている。
「味覚異常は免疫の低下だけでなく、亜鉛が足りなくなると、舌の味を感じる細胞、味蕾(みらい)細胞がうまく働かなくなることが以前からわかっています。亜鉛は免疫応答をコントロールする働きをしているといわれています」
糖尿病はこれといった症状がなく進行していく病気。味がいつもと違うように感じたら、血糖値の検査をしてみよう。
喫煙者にリスクが高い食道がん
病気のサイン:舌が紫色
7.『子宮内膜症』
赤ワインを飲むと舌が紫色になるが、何もしていないのに紫色をしているのは子宮内膜症のサイン。
「東洋医学では舌の色や形で健康状態をみます。舌の色が紫色になっているのは、血液がドロドロになっているためです。女性の場合、血流が悪いのは子宮のトラブルにつながっていることが多いようです。舌の色はじわじわと変わっていくので、歯磨きのときに舌磨きも行って舌の色を確認しておきましょう」
舌が紫色だと子宮内膜症をはじめ月経のトラブル、更年期障害のリスクが高い。
「血流が悪くなる40歳以上は心筋梗塞、脳梗塞などの血管トラブルにも注意が必要です」
更年期以降は、女性ホルモンの低下により女性も男性と同じく血管トラブルが多くなるので気をつけよう。
病気のサイン:くしゃみで骨折
8.『骨粗鬆症』
くしゃみをしただけなのに、骨折! こんなことが起こったら骨粗鬆症(こつそしょうしょう)かも。
「骨がもろくなっていたら、くしゃみなどちょっとした刺激でも骨折をすることがあります。なかには脚を組み替えただけで骨折をする人もいます。若いころ過度なダイエットをした人は、40代でも骨粗鬆症のリスクが大きい。骨に必要なカルシウムは思春期に蓄積をして、年齢を重ねていくと減っていく一方です」
更年期に入ると、さらに骨がもろくなり、骨折のリスクは上がる。
「中高年だけでなく若い世代も注意が必要です。スノボで骨折をする人の数が若年層でも多いというデータがあります」
骨粗鬆症になると内服薬で治療するが、完全には治らない。そうならないためには“骨貯金”を心がけることが大切だ。
病気のサイン:虫歯? と思ったら
9.『狭心症』
歯が痛いので虫歯かと思ったら、なんと狭心症だった! ということも……。
「狭心症は、主に動脈硬化が原因で心臓を動かす血液が不足し、虚血状態になった状態。息切れや息苦しさ、胸の痛みなどの症状が知られていますが、歯やあごに痛みを感じるということもあります」
歯医者さんに行ったために、手遅れに……なんてことにならないようにするためには?
「デンタルケアをきちんと行っておくことです。最近は歯周病が全身の病気につながっていることがわかり、健康維持のためにデンタルケアがすすめられています。きちんとデンタルケアをして虫歯がないことがわかっていれば、狭心症を疑うことができます」
狭心症のサインを知るためにも、デンタルケアは有効のようだ。
病気のサイン:声がかすれる
10.『食道がん』
声がかすれて、ハスキーボイスでカッコいいかも? なんて思っていたら、実は食道がんのサインだとか。
「食道がんは男性に多い病気で、タバコを吸う人はリスクが高いことが知られています。声のかすれ以外に、飲食時の胸のつかえ、体重減少、胸や背中の痛みをともなうことがあります。放置していると声が出なくなりますから、ハスキーボイスを自慢する前に病院で検査を受けましょう」
声のかすれをチェックするために、たまにはカラオケに行って大声で歌うのがオススメ。
「以前のように澄んだ声が出ない、声を出しにくいなどは要注意です。食道がんの声のかすれ方は、がんが進むと他人が聞いてもわかるくらいなので、友人や家族と一緒に行くのもいいかもしれません」
年間2万人の新規患者、約2000人が死亡
病気のサイン:横になるとせきが止まらない
11.『逆流性食道炎』
夜寝る前にせき込むのは、心不全だけでなく逆流性食道炎の可能性も……。
「心不全は苦しくてせき込みますが、逆流性食道炎はむせたような感じでせきが止まらなくなります。65歳以上になると多くなる病気で、げっぷの症状など胸やけを引き起こします」
逆流性食道炎とは、胃酸や胃で消化される途中の食物が食道に逆流して食道の中にとどまることで、食道が炎症を起こす病気。食道の粘膜は酸に弱いので、びらんや潰瘍を起こすという。日本人には少ない病気だったが、食生活の欧米化や高齢化で増加傾向にある。
「逆流性食道炎でせき込まないためには、夜寝る前にたくさん飲んだり食べたりしないこと。のどを鍛えるトレーニングもするといいでしょう」
病気のサイン:長引くせき
12.『結核』
感染症で怖いのは、新型コロナだけではない。ハリセンボンの箕輪はるかやモデルでタレントのJOYも感染したことで話題となった結核は、注意したい感染症だ。
「結核は年間2万人の新規患者がいて、約2000人が死亡しています。コロナばかりに目を奪われていると重要な感染症を見逃してしまうかもしれません。結核は若干、減ってきてはいますが、相変わらず気をつけなければならない感染症です」
結核菌は空気感染をするため、いつの間にかうつっている可能性があるという。
「若いころ感染して、高齢になって発症をする場合があります。若いころは免疫システムが働いて病気を抑え込んでいたものの、高齢になって免疫力が弱まり発病するようです。また薬剤耐性菌も増えているため、薬が効かない結核菌に感染すると治療が難航します」
病気のサイン:夜、寝るとせき込む
13.『心不全』
眠くなってベッドに入ったら、せき込んでなかなか眠れない……もしかして新型コロナ? ではなく、突然死にもつながる心不全のサインかも。
「横になると全身から血液が戻りにくくなり心臓がうっ血し、息苦しくなるのが心不全の特徴的な症状。せき込むのは、息苦しくなるからです。半身を起こすと少し楽になりますが、進行すると回復するまで時間がかかります」
また、夜中に息苦しくなって目が覚めることもあるという。
「急死はピンピンコロリでいいという人もいますが、夜中に急死するのは自分も残念ですし、家族にも悲しい思いをさせてしまいます。昼間にも、階段や坂道を上がったとき息切れがするなら循環器内科に相談してみましょう」
病気のサイン:肩こりや首が痛い
14.『心筋梗塞』
近ごろの自宅勤務の影響で運動量が減り、パソコンに向かっている時間が長くなると、肩こりや首の痛みを訴える人が多いのでは? それはもしかして、パソコンのせいではなく心筋梗塞のサインかも?
「心筋梗塞は、デコルテから上にサインがあらわれることが多い病気です。頑固な肩こりや首の痛みが実は心筋梗塞だったというケースは意外と多いものです。最初は、こりや痛みが出たり消えたりしていますが、だんだんと何をやっても解消されないのが特徴です。経験者に聞くと、後から思えば、痛み方がいつもと違っていたと話していました」
狭心症と同じく、歯やあごが痛いということもあるとか。
「もちろん心臓のあたりが痛い、苦しいという人もいますが、さまざまな症状が出るのが心筋梗塞の特徴です」
病気のサイン:胸のブツブツ
15.『乳がん』
女性のがんの罹患(りかん)数1位は乳がん。そのサインといえば「胸のしこり」と思いがちだが、実はさまざまなサインがある。
「乳がんのサインはひとつではなくさまざまな症状がみられます。しこりができる、へこむなど形が変わる場合、赤みを帯びるなど色が変わる場合、湿疹のようなブツブツが出る場合、かゆみなどの皮膚症状が出る場合があります。これからの季節、虫刺されやあせもと思ったら乳がんだったという可能性もあります」
虫に刺されたり、汗をかいたりなどの刺激がないのに、ブツブツやかゆみが胸に出ていたら要注意だ。
「乳がんの場合、片方の乳房付近に出るのが特徴です。乳がんのサインの特徴を覚えて、朝の着替えのときにチェックしてみるといいでしょう」
嘔吐と下痢は虫垂炎の初期症状
病気のサイン:急な吐き気
16.『緑内障』
急な吐き気に襲われて胃や腸の病気かと思ったら、なんと目の病気の可能性が……。
「急な吐き気は、急性の緑内障発作の可能性があります。緑内障とは、眼圧が上昇して視神経を障害する病気で、失明原因の1位です。40歳以上の20人に1人が緑内障にかかっています。通常はじわりじわりと進行していきますが、急性緑内障発作の場合は眼圧が急激に上昇するために、目の痛みやかすみ、吐き気、頭痛を伴います」
通常は少しずつ進行し、やがて失明に至る病気だが、急性の発作はそのまま放置しておくと短期間で失明してしまうこともある。
「緑内障はほとんど自覚症状がありませんが、視力検査のように片方ずつ見ることで発見できることがあります。片方の目で見たとき、視野が欠けていたり、かすんでいたら眼科医を受診しましょう」
病気のサイン:腕がしびれる
17.『肺がん』
がんによる死亡原因の男性1位、女性2位の肺がん。同じ肺がんでも発生する場所によって症状が違う。
「肺の上のほう(肺門)に発生したがんは、腕のしびれや肩こりなど肺がんとは結びつきそうもない症状がみられることがあります」
肺がんは、肺門といって気管支の末端で肺に入る部分にできるがんと、そうでないところにできるがんに分けられる。
「肺門の近くにできるがんはせき、痰(たん)、血痰、呼吸困難、息切れなどの症状がみられます。肺門から離れたところにできたがんは自覚症状がないことが多いですが体重減少、倦怠(けんたい)感、食欲不振、発熱などの初期症状があらわれることもあるので、サインを見逃さないようにしましょう」
病気のサイン:嘔吐と下痢
18.『虫垂炎』
虫垂炎(ちゅうすいえん)は「盲腸」と呼ばれている腸の病気で、虫垂とは大腸の入り口にある5~10cmの突起物。お腹の右下が痛くなることで知られているが、実は嘔吐(おうと)や下痢も症状のひとつ。
「嘔吐と下痢は虫垂炎の初期の症状です。虫垂の炎症が起こると根元が詰まって圧迫されるため、みぞおちあたりに痛みが出ることもあります。症状が軽い場合は、抗菌薬の投与で炎症を鎮めますが、虫垂に穴があいてしまう可能性があるときは切除する手術が行われます。
昔から“盲腸”といえばこの切除手術を想像しますが、近年、虫垂は無用の長物ではなく重要な役割を果たしているのでは? という研究が進んでいます。腸内免疫に関わっているようですが、詳しいことは今後の研究でわかってくるでしょう。
早期発見に努め、場合によっては切除手術を受けない選択肢もあります」
病気のサイン:腰が痛い
19.大動脈解離
腰がグキッ!……ぎっくり腰やヘルニアかと思ったら、命にかかわる大動脈解離だったということも!
「大動脈解離はよく交通事故にたとえられます。元気な人が急に発症して亡くなってしまうことが多い病気です。大動脈解離というのは、心臓から全身に血液を送る最も太い動脈である大動脈の内側の膜がはがれて血液が血管から流れ出て一刻を争う大変な病気です」
人気アニメ『アンパンマン』のドキンちゃん役の声優、鶴ひろみさんは大動脈解離で亡くなっている。
「突然、腰から上の激しい痛みに襲われますが、高齢者など痛みに鈍感になっていると、ぎっくり腰だと思っていて手遅れになることも……。腰だけでなく、腰から上が痛くなるのが特徴なので覚えておきましょう」
病気のサイン:便が赤黒い
20.大腸がん
女性のがんによる死亡の1位は大腸がん。40代からは特に気をつけたい病気だ。
「便に血液が混ざると赤黒くなります。大腸がんだけではなくポリープや痔(じ)の場合もありますので余計な心配は無用ですが、40歳過ぎて便の悩みがあったら内視鏡検査は受けたほうがいいでしょう」
同じ大腸がんでも、できた部位によって便色が違うという。
「大腸の奥のほうや胃や小腸のがんだと、黒に近い赤になります。一方、肛門に近いところにがんができた場合は赤っぽい便になります」
大腸がんにはほかにも症状がある。
「ひどい便秘と下痢を繰り返すことがあります。便秘のあげくにやっと出たら、鉛筆くらいの細さの便だったというのも大腸がんの症状の特徴です。早期に発見すれば予後がいいので、病気のサインを見逃さないようにしましょう」
皮膚がボロボロと落ちていく『乾癬』
病気のサイン:ED
21.動脈硬化
「ED(勃起障害)は機能的に問題がなければ亜鉛などの栄養不足や、メンタル的な問題が原因の多くを占めています。しかし、50歳以上は動脈硬化が原因となることが増えてきます。
動脈硬化が進み血管が硬くなってくると、陰茎に十分に血液が流れずに機能しなくなります。高血圧、肥満、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病のある人は、EDが同時に起こっていることが多いようです」
EDの治療薬は、動脈硬化の人が服用すると危険なのでは?
「現在はバイアグラ以外にもED治療薬はありますので、きちんと医師に身体の状態を申告すれば動脈硬化があっても服用できる薬を処方してくれます」
ED治療薬を使う人は、あらかじめ自分の血管の状態を把握しておくことが大切だ。
病気のサイン:寝ている間に足がつる
22.下肢静脈瘤
激しい運動をした後やたくさん歩いた後は、足がピーンとつることが……しかし、寝ている間に足がつるのは下肢静脈瘤の可能性も。
「足がつるのは、ミネラル不足や筋肉の疲れなどがありますが、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)のサインかもしれません。心臓が血液を送り出す動脈に対し、静脈はポンプのような役割をしているところがなく、脚の静脈は重力に逆らって上へ血液を流さなければなりません。そのため、逆流しないように弁が存在します。
しかし、その弁が壊れて静脈に血がたまってしまった状態のことを下肢静脈瘤といいます。静脈がボコボコと膨れ上がる、クモの巣みたいに広がってみえるなど見た目が悪くなり悩む人がいます」
夜中に足がつったら、足の状態を観察してみよう。
病気のサイン:原因不明のじんましん
23.乾癬
原因不明のじんましんは、もしかして乾癬(かんせん)かも? タレントの道端アンジェリカさんが自ら患っていることを告白した乾癬とは?
「じんましんはアレルギー症状のひとつです。虫に刺されたように盛りあがり地図状に広がり、強いかゆみを伴いますが、やがて消えるのが特徴です。一方、乾癬は、紅斑といわれる赤い皮膚の盛りあがりができ、皮膚がボロボロと落ちていきます。できやすい場所は、頭部、ひじ、ひざ、臀部(でんぶ)、脚などです。6割~7割にかゆみがみられます」
見た目が悪くなることから、外に出られなくなり結婚をあきらめたり、仕事を失ったり、うつ病へ発展することもあるという。
「細菌やウイルス性の病気ではないので、人にうつることはなく、治療で症状を抑えることができます」
病気のサイン:足の甲がむくむ
24.リウマチ
靴がきつくなったのは、太ったり、むくんだからではなくリウマチかも。
「飲みすぎや立ち仕事などで足がむくむことがありますが、ふくらはぎではなく足の甲がぷっくりふくらんでいたらリウマチかもしれません」
リウマチは自己免疫疾患のひとつで女性に多い病気。免疫システムに異常が起き、自分の骨や軟骨を攻撃して炎症を起こし破壊してしまう。発症のピークは30代~50代で、手のこわばりが代表的な初期症状。
「足と同様に手にも症状があらわれます。むくみはひと晩寝ればおさまりますが、なかなか治らない手足の腫れやこわばりがあれば、リウマチの専門医に1度みてもらいましょう。早期に発見して適切な治療を行えば、破壊による関節の変形を抑えられます」
病気のサイン:更年期の貧血
25.消化器系のがん
若い女性がなるイメージの貧血も更年期以降の場合は、消化器系のがんの可能性があるのでご注意を。
「若い女性の貧血は生理によるものが多いですが、更年期以降は少し厄介です。胃がんや大腸がんなど消化器系のがんの可能性があります。消化器系のがんは少しずつ出血しているため、貧血に陥りやすい状態。ただの貧血だと思い、鉄剤を飲んでもよくならない場合は早めに検査を受けましょう。
医師によっては、がんを見抜けない場合もあるので、自ら消化器系の内視鏡検査を申し出てもいいかもしれません。高齢者の場合は、栄養不足による貧血も考えられますが、ほかの病気も考えられ複数の原因が重なることもあるため高齢者専門の医師に相談しましょう」
原因不明で治療の特効薬もない病気
病気のサイン:長引く冷え
26.膠原病
「冷えは寒さや血行不良が関係しますが、対策を行っても治らない冷えには病気が隠れていることがあります。膠原病(こうげんびょう)といわれる自己免疫疾患がそのひとつです」
膠原病とは症状に共通点をもつ病気の総称で、腎臓病、心臓病と呼ばれるのと同じ。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、血管炎、強皮症、皮膚筋炎などが含まれる。
「自己免疫疾患は、女性に大変多い病気です。というのは、染色体に理由があります。女性はXX、男性はXYの染色体を持ち、免疫細胞はX染色体が関係しています。
つまり、女性は男性よりも免疫細胞が活発といえます。小さいころは風邪をひきにくく元気でも、ミドル世代になると免疫システムが自分自身を攻撃してしまう病気を起こしやすくなります」
病気のサイン:シミやイボが増える
27.胃がん
シミやイボができるのは、年をとったから? ではなく、なんと胃がんのサイン。
「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)という高齢者によくみられる平たいシミのようなイボが、急に胸や背中に出てきたら胃がんのサインかもしれません。あまり知られていない症状ですが、がん細胞が出す物質によるもので“レーザー・トレラ徴候”といいます。
胃がんだけでなく、すい臓がんや大腸がんなど内臓のがん全般にみられます。すべてに出るわけではありませんが、短期間で増えたり大きくなるのが特徴なので見落とさないようにしましょう」
レーザー・トレラ徴候に詳しくない皮膚科へ行くと見落とされることもあるという。
「レーザー・トレラ徴候はもともと皮膚科の範疇(はんちゅう)ではありませんので、急に増えた場合は年齢による脂漏性角化症と判断されても、内科や消化器内科を受診したほうがいいかもしれません」
病気のサイン:やる気がなくなってふさぎこむ
28.脳腫瘍
昨年、脳腫瘍で入院した落語家の三遊亭円楽さんは、発病する1か月前から気分が落ち込むなどの自覚症状があったという。
「脳腫瘍によって気分の落ち込みが出たというよりも、頭痛や吐き気などの二次的な症状による気持ちの変化なのかもしれません。いずれにせよ、いつもと違ううつ状態が続くときは、その背後に病気が隠れているかもしれませんから見逃さないようにしましょう」
脳腫瘍の症状は、腫瘍ができた部位によって異なる。前頭葉の場合は言葉が出なくなり自発性や集中力、記憶力が低下、側頭葉では言葉を聞いて理解ができない、片方だけ視野が欠けるなどで、小脳ではふらつきやめまいが起こる。
「脳腫瘍というと重大な後遺症というイメージがありますが、早期に発見すれば予後は決して悪くありません」
病気のサイン:光や音が痛い
29.線維筋痛症
レディー・ガガがかかったことで、その病名が広まった線維筋痛症(せんいきんつうしょう)。昨年、元フジテレビアナウンサーの八木亜希子さんもこの病気で休養した。
「線維筋痛症は、光や音など些細(ささい)な刺激で全身に痛みが生じる病気で、激しい痛みが続きます。息をしても痛い、風が吹いても痛いという、とてもつらい病気です。全身に針を刺されているような痛みを感じるという人もいます。ミドル世代以降の女性に多く、日本では200万人の患者がいます。
原因はストレスが関係しているといわれていますが現在のところ不明で、線維筋痛症を治す特効薬もありません。自己免疫疾患のひとつではないかという説もあり、主にリウマチの専門医が担当することが多いようです。痛みと付き合っていかなければならない病気ですが、ほとんど痛みを感じなくなるほど回復する例もあります」
病気のサイン:皮膚が黒くなる
30.バセドウ病
外に出て日焼けもしていないのに色黒になったら、バセドウ病かも! 橋本病とは逆に、甲状腺機能が過剰になってしまうのがバセドウ病。常にジョギングしているような状態が続き、脈拍が速く、汗が多く、暑がりで疲れやすくなる。
「女性に多く、男性に比べて5倍も患者数が多い病気です。多様な症状がみられますが、そのひとつに皮膚が黒くなることがあります。バセドウ病により過剰に出る甲状腺ホルモンはメラニンと分子構造が似ていて皮膚の色を黒くします」
目が出てくるのがバセドウ病の特徴的な症状だと思われがちだが、その症状が出るのは約3割だという。
「新陳代謝が活発になるので食べても太らないのも特徴です。これはいい症状のように思えますが、バセドウ病にかかると橋本病にもかかりやすく、両者を行ったり来たりすることもあり、本人にはつらい病気です」
(取材・文/山崎ますみ)