新型コロナウイルスの猛威でテレビ業界が試行錯誤している中、特に力を発揮しているのはウッチャンナンチャンかもしれない。
内村光良は、7本のレギュラー番組のうち6本、相方の南原清隆は『ヒルナンデス』(日本テレビ系)で早々からリモートに挑戦している。2人の番組がリモート式にも関わらず、高視聴率かつネット上で《ウンナンのリモートを駆使したソロ活動が面白い》、《出演者とニヤニヤしながらやり取りするウンナン和む》などと評判が高い。
そこには、お笑い第三世代のとんねるずやダウンタウンとは違った“ウンナンの魅力”が共感をよんでいるのではないだろうか。
内村が司会を務める『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)では毎回、番組冒頭のLINE式のグループトークが話題になる。1人だけスタジオ収録の内村に対し、レギュラーメンバーがトークを繰り広げていくわけだが、このやりとりひとつひとつが笑いを生み出していく。
本来、舞台で観客の反応を読み取りながら「笑い」を届けるはずのお笑い芸人が、画面上で文字を使って「笑い」を届けるのは難しいことなのかもしれない。しかしながらそれが成り立つのは、やはり内村の巧みな話術によるものだろう。
一方、南原清隆は『ヒルナンデス!』がリモート生放送に切り替わり、スタジオでリモート中継をつなぎながら獅子奮迅の活躍が高い評価を得ている。
例えば、南原がスタジオ内のどこにいるかを当てる「ナンチャンを探せ」。ひとりしかいないことを逆手に取ったこの企画は、持ち前の南原のキャラクターも相まって視聴者参加型の新しいコーナーとして成立している。
視聴率は4月の月間平均で4.3%、5月4日週の週間平均で5.2%(いずれも個人、ビデオリサーチ調べ・関東地区)と過去最高を更新した。
お笑い第三世代、それぞれの特徴
ウッチャンナンチャンは、先輩のとんねるずや、ほぼ同期のダウンタウンとともに「お笑い第三世代」といわれ、'90年代から現在までお笑い界を引っ張ってきた。そんな3組は後輩芸人への接し方ひとつにも違いがみられる。それは企画にまで昇華させているほどだ。
とんねるずでいえば、過去に『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)で“突然”後輩芸人らに高価な品物を購入させる「買うシリーズ」や、“突然”落とし穴に落とされる「全落・水落シリーズ」がある。
“突然”の中から生まれる笑いやとっさの反応は、これまでとんねるずが培ってきた「ドッキリ」や予定調和ではない芸風からくるものではないだろうか。
一見すると“悪ノリ”ともとれる後輩への接し方。しかしながら、有吉は「僕らは本当に楽しかった。とんねるずに遊んでもらっているようなもの」と絶賛し、信頼の厚さを感じ取ることができる。
一方でダウンタウンは、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)や『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)などのひな壇やプレゼンテーション形式でのトークが目立つ。満を持して自分のトーク力を発揮できるこの形式は、準備した芸を全力で披露できる。それは後輩芸人の活躍を後押ししているようにとれるわけだ。
『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)や『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)がまさに“最大のチャンスの場”だろう。これからの若手芸人に一攫千金のドリームを用意している。
しかし、このコロナ禍ではひな壇やプレゼンテーション形式の企画撮影が進められず、テレビ局や制作会社も苦戦している。そのため、特にバラエティー番組は過去のまとめ再放送などが多く見受けられた。
そんな中でウッチャンナンチャンは「リモートで作りだす笑い」を魅せた。その笑いの最たる特徴は彼らのもつ“アットホーム感”ではないだろうか。
ウンナンの“優しさ”
かつて『内村プロデュース』(テレビ朝日系)に出演した、ずん・飯尾和樹がインタビューで次のように答えている。
《『内P』では「スベってから考える」ことを教わりました。『内P』は周りのメンバーやテロップで面白くしてくれるから果敢に発言できた。そのうえ内村さんからアドバイスをいただける》(『EX大衆』'18年9月号より)
また、南原にいたっても『ヒルナンデス!』のクイズコーナーで進行役でありながらも、自らボケにいくことで、後輩芸人たちも生放送で果敢にチャンレンジできる道筋をつくる。
ウッチャンナンチャンには、とんねるずやダウンタウンとはまた違う後輩芸人への“接し方・優しさ”がある。
「失敗が成功の糧になる」という優しさが彼らの魅力のひとつで、その優しさこそがコロナ禍の孤独な時間に私たちに寄り添ってくれた。
リモート式の番組から以前のような番組形式に戻っても、彼らの作り出す「笑い」がこれまでどおり、たくさんの人を笑顔にしてくれることを望んでいる。