7月に入り、2020年も下半期に突入した。
今年の上半期を振り返ってみると、いうまでもなく、その大半がコロナ禍によるさまざまな影響を受けることになった。
コロナで波に乗れなかったモノ
「なんといってもオリンピックの延期が大きいです。経済的な影響はもちろん、今年の夏にピークを合わせて数年間、調整を続けてきた選手たちも、再選考の可能性も含めてこんなはずじゃなかったと、思っているのではないでしょうか」
と、あるマーケティング系ライターは言う。
「もちろん現時点では来年開催の方向で進んでいるため、記念グッズや関連商品なども販売延期で対応できると思います。マスコットキャラクターのミライトワとソメイティも、“幻のキャラ”にならないことを祈りたいですね」
一方で、ステイホームや人々との接触を控えること、リモート化の推進により、一気に浸透したものもある。
「ZOOMなどの通信アプリやキャッシュレス決済は一気に浸透しましたね。自宅で気軽に楽しめる『あつまれ どうぶつの森』のヒットも、コロナがさらに人気を押し上げた感があります」
このように、少し振り返るだけで、コロナの影響で売れるはずだったもの、もしくはコロナのおかげ(?)で、さらに売り上げを伸ばした商品がある。さらに深掘りしてみると、本来だったらもっと大流行してもよかったモノや人が出てきた。前出のライターが続ける。
「まず思い浮かぶのが、ツイッター上で4コマ漫画が連載され大きな話題となった、『100日後に死ぬワニ』ですね。3月下旬に最終回を迎え、盛り上がりもピークに達しました。同時にアニメ映画化やグッズ展開が発表されたり、イベントやカフェのオープンも決まりました。しかし、コロナの影響でカフェは3日で休業を余儀なくされ、ブームもなんとなく収束状態になってしまいました」
コミックスが爆発的な売り上げを見せ、5月に連載最終回を迎えた『鬼滅の刃』はどうだっただろうか。
「漫画やアニメは、自宅などで気軽に楽しめるコンテンツなので、影響は少ない分野ではあります。『鬼滅の刃』は最新刊発売時には、緊急事態宣言下にも関わらず書店に多くの人が訪れたり、コンビニなどでコラボ商品が大展開されるなど、十分、大ヒットした、今年上半期を代表する流行といってもいいと思います。でも、コロナがなければもっと人気を巻き起こしていたかもしれません。劇場版の公開が10月に控えていますから、ここでまた再加熱する可能性は十分あります」
また、昨年大ブームを巻き起こしたのはタピオカドリンク。タピオカの次は「これだ」と、あれこれ候補が上がっていたが、3月以降、その流れに乗り切れなかった印象がある。
「次にくると言われたチーズティーやバナナジュースは、専門店が続々オープンしましたが、緊急事態宣言で飲食店が休業する中での展開はさすがに難しかった。そもそもタピオカ専門店でマスクが販売される現象まで起こりましたからね(笑)。
韓国発症の牛乳の上に泡だてたコーヒーが乗ったダルゴナコーヒーも、自宅で再現するなどの現象は見られましたが、もっと人気が爆発していたかもしれません。これから夏本番になり、需要が高まるか、それとも別のドリンクが出現するか、気になるところです」
コロナのせいで露出が減った人
いい波が来ていたのにブームに乗り損ねたのは、モノだけではない。タイミングやきっかけ、まさに運がものをいう芸能界でも、思惑とは違う展開になった人たちがいる。芸能ジャーナリストが言う。
「韓国との合同オーディション番組により結成されたJO1は、3月に待望のデビューを飾ったのですが、世間はコロナ一色になってしまい、タイミング的にコロナの直撃を食らった感がありますね。初動の売り上げが30万枚を突破し、オリコン1位も獲得していますが、さらに伸びを見せた可能性はありました。
同じく韓国との合同プロジェクトのガールズグループNiziU(ニジュー)は、6月に最終メンバーが決定し、秋にデビューが決まったところなので、下半期の盛り上がりに期待です。
『水曜日のダウンタウン』(TBS系)との連動企画MONSTER IDOLで、メンバー選抜からデビューまでを密着したアイドルグループ『豆柴の大群』も、デビュー曲はスマッシュヒットを記録しましたが、その直後の展開が大々的に出来なかったため、やや盛り上がりに欠けてしまった気もします」
音楽業界だけでなく、毎年、お茶の間の人気者が誕生する芸人やタレント界も、もちろん影響は大きかった。
「M-1で一気に知名度をあげた、ミルクボーイやぺこぱは、今もテレビには出ていますが、もっと引っぱりだこの状態を経験できたかもしれませんね。第7世代芸人のブームが、飽きられることなく、秋以降にさらなる盛り上がりを見せるかどうかに注目したいところです」(同前)
人だけでなく“作品”にも大きな影響を与えている。映画の公開延期、さらにテレビドラマも、軒並み延期が相次いだ。
「大本命だった『半沢直樹』、そして『BG』が延期されたのは大きいですね。途中で中断されたドラマも、それまでの視聴者が戻ってくるかわからない。一方で、『M』などが、刺激に飢えていたお茶の間にウケたりしました」(同前)
上半期にできなかったことが、そのままスライドするものも多い下半期。もともと予定されたいたものとの決戦になったり、思わぬところからヒットやブームが生まれたりするかもしれない。失われた上半期から、充実の下半期になることを祈りたい。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉