昨年7月9日に、ジャニーズ事務所の元社長・ジャニー喜多川さんが亡くなった。希代のプロデューサーの死から1年がたち、彼の周囲や事務所の中ではさまざまな“変化”が起きている。一代で築き上げた帝国維持の難しさも見えてきて──。
死去から1年、事務所に起きた変化とは
「実は、ジャニーさんにお世話になったタレントたちが一堂に会する“偲ぶ会”のような集まりを今年も計画していたそうです。残念ながら開催には至らなかったみたいですが……」(テレビ局関係者)
昨年7月9日、ジャニーズ事務所の元社長・ジャニー喜多川(本名・喜多川擴)さんが亡くなった。昭和と平成の2つの時代を彩った希代のプロデューサーの死は世間に衝撃を与えた。
「死因は解離性脳動脈瘤破裂による、くも膜下出血。6月18日に自宅で倒れて救急搬送されて以来、治療が続けられましたが、帰らぬ人に。9月4日には東京ドームでお別れ会が開かれ、ジャニーズのタレントとOB、事務所の関係者、彼らと日ごろ付き合いのある会社の上層部など、3500人が出席しました」(スポーツ紙記者)
ジャニーさんが亡くなって1年がたつこの夏も、多くのタレントが集まる予定だった。
「事務所の“長男”の近藤真彦さんが音頭を取って、スタッフは参加しない、タレントだけのプライベートな会を計画していたそうです。'16年にはスタッフを1人も入れず、タレントだけで、恩師の誕生日会をしたことがありました。今回も、そうした集まりを考えていたのでは」(前出・テレビ局関係者)
なぜ、開催に至らなかったのだろうか。
「新型コロナウイルスの感染拡大によって、中止になってしまったそうです。たくさんの人が一堂に会したら、コロナに感染するリスクを高める密閉、密集、密接の“3密”になりかねない。年内にやるのは難しいかもしれませんね」(同・テレビ局関係者)
ジャニーさんが亡くなって以降、彼の周囲やジャニーズ事務所の中ではさまざまな“変化”が起きていて─。
お墓を訪れる豪華ゲスト
生前、多くのスターを輩出し、芸能界に大きな影響を与えた名プロデューサーは、意外にも静かな場所で眠っている。
「昨年の11月ごろに、和歌山県の北部に位置する高野山の墓に納骨されました。東京から約450キロも離れていて、緑豊かで閑静な場所にあります。都内だと、お墓参りの際に列ができて周りに迷惑をかけるかもしれないという気遣いもあったのでは。また生前、彼は裏方に徹していたので、遺族がその考えを引き継いだのだと思います」(寺院関係者)
ジャニーさんと高野山は縁が深い。
「彼のお父さんが真言宗の僧侶だったのですが、高野山の寺院で出家したんです。そのため、父親のお墓も高野山にあります。ジャニーさんのお墓は普通のものとは違って、1億円くらいかけてつくっていますよ」(同・寺院関係者)
東京からはかなり遠いが、やはり“あの人”は、はるばる足を運んでいた。
「滝沢秀明さんは何回も来ていますね。今年の2月ごろには、V6の三宅健さんと2人で来ていたそうです。その日はかなり雪が降っていたので、東京から電車で6時間以上かけて来たみたいですよ。普段は車で来るので、気づかれることはないのですが、そのときは電車で彼らを見た人がいたので、住民の間で噂になっていました」(地元住民)
恩師の前で手を合わせるだけでなく、こんなことも。
「お墓参りをした後、高野山の宿坊『普賢院』で食事をして、住職と世間話をしていたそうです。そのお寺が、昔、ジャニーさんのお父さんが出家したところなので、故人との思い出が深い場所に立ち寄って、住職にきちんと挨拶したかったのかもしれませんね」(同・地元住民)
お墓参りに来たのは、ジャニーズタレントだけではなかった。
「元たのきんトリオの野村義男さんや千原ジュニアさんも来たそうです。ジュニアさんは仕事で近くに来たらしく、“せっかくだからお参りしたい”と言って、わざわざ寄ってくれたみたいですよ」(同・地元住民)
一周忌となる7月は、さぞ多くの人が訪れると思いきや……。
「昨年から今年の初めくらいまではたくさんの人が来ていました。中には、ジャニーズのファンらしき女性が来たことも。でも、3月以降はコロナの影響で全然来ていません。来たい人はたくさんいると思うんですけどね……」(別の地元住民)
事務所で行われた“改革”
ジャニーさんの死はタレントたちに大きなショックを与えた。しかし、月日がたって、“子どもたち”はひと回り成長を遂げていた。『ジャニーズは努力が9割』(新潮社)の著書があり、ジャニーズ事情に詳しい霜田明寛氏は、恩師が亡くなって以降、タレントたちが一体感を持つようになったと指摘する。
「山下智久さんがジャニーズJr.のユニット『美 少年』の楽曲をプロデュースしたり、関ジャニ8の横山裕さんと大倉忠義さんが関西ジャニーズJr.の育成をしたり、KinKi Kidsの堂本光一さんがHey! Say! JUMPのライブの演出を手がけるなど、最前線で活躍しているタレントが後輩たちに“ジャニーイズム”を伝えています。これまでも、光一さんが作った曲をJr.が歌うなど単発の企画はありましたが、ジャニーさんが亡くなって以降、後輩の育成に力を入れていると思います」
特に、キンキの2人はジャニーさんの思いを後世に伝えようとしているという。
「堂本剛さんは、昨年9月にA.B.C-Zへ提供する楽曲で、故人を思う曲『You…』を作詞・作曲しましたし、今年6月17日に発売されたキンキの新曲『KANZAI BOYA』のCDの初回限定盤には、ジャニーさんがかぶっていた帽子とそっくりな黒いキャップを特典につけるなど、恩師をリスペクトした演出もしています。彼らはほかのタレントに比べて、この1年間、ジャニーさんに関する発言が非常に多いですからね」(霜田氏)
昨年9月に滝沢がジャニーズ事務所の副社長に就任し、ジャニーさんの思いを継承しつつ、新しいことに取り組んでいるが、特に力を入れていることがあって……。
「ジャニーズのOBと現役が関わる機会を増やそうとしています。これまでは、ジャニーズを辞めると、現役のメンバーと関わる機会もなくなっていました。しかし、滝沢さんは“OBと現役の壁をなくしたい”と話しているそうです。事務所を辞めた後も、お互いに刺激し合って、成長してほしいと考えているのでは」(芸能プロ関係者)
この“改革”は、実を結び始めている。
「現在、放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』で、'18年9月に事務所を退所した元タッキー&翼の今井翼さんが、風間俊介さんと同じ放送回に出演しています。今井さんは元相方ですし、風間さんは'98年にテレ朝系で放送された『8時だJ』など、ジャニーズJr.の黄金期を支えたメンバーです。2人の“共演”を機に、OBと現役が仕事をすることが増えるかもしれませんね」(同・芸能プロ関係者)
芸能ジャーナリストの佐々木博之氏は、2人が共演を果たした背景には、事務所内の変化も大きいと指摘する。
「昨年7月に、ジャニーズ事務所が元SMAPの3人をテレビに出さないよう圧力をかけた疑いがあるとして公正取引委員会から注意されました。ジャニーさんが健在のころは、事務所とタレントの関係が“親子”のような深いところがあって、辞めるタレントに対して、ある意味“子離れ”できていないように感じられました。最近は、それも薄れているようです。“個人商店”から企業に生まれ変わり、すべてビジネスとして割り切れるようになったのでは」
“審美眼”は引き継げるのか問題
ジャニーさんといえば、ジャニーズJr.のオーディションで、まだ幼い少年たちの中から数々のスターを発掘してきたことでも有名だ。
「ほかのスタッフの目にとまらなくても、将来輝く逸材を見抜く力がありました。嵐の二宮和也さんは、オーディションのときにダンスを踊らず、ジャニーさんにその理由を聞かれて、“見りゃわかるじゃん。狭くて踊れないんだよ”と返した強気な性格が買われて合格に。元KAT-TUNの赤西仁さんも審査では不合格になったものの、帰るときに番号札を返した相手がジャニーさんだったことで結果が変わりましたからね」(ワイドショー関係者)
元ジャニーズJr.のAさんも、彼の独特の“審美眼”に驚かされたと話す。
「僕もオーディションのときは丸刈りで、すきっ歯な男の子でした(笑)。でも、僕と同じような子でも、何年かたつと垢抜けたりするんです。ジャニーさんはそれを見抜けるんです。
実際、音楽番組で過去の名場面を振り返る企画で今では有名な先輩がバックダンサーで映っているのですが、別人かと思うくらい変わっていますからね。でも、そんな彼がいなくなったら、今後は“原石”を見つけられないのではないでしょうか」
すでに、その影響が現れ始めていて……。
「昨年12月に行われた舞台『ジャニーズ・アイランド』で、出演者の中に新しく入ったと思われるJr.たちもいたのですが、彼らはみんな似たような男の子ばかりに見えました。中には有名な子役にそっくりな子もいて、一部ファンの間では“どうせタッキーが引き抜いてきたんじゃない?”と噂になったんです。これからのJr.がちょっと心配ですね……」(舞台を観劇したファン)
前出の霜田氏も、不安をのぞかせる。
「3年後くらいに影響が出てくるのではないでしょうか。いまは、『HiHi Jets』や『美 少年』をはじめ、ジャニーさんが選んだJr.で将来を期待されるユニットも多いので、そこまで影響は出ていません。ただ、今後も、事務所の未来を担う逸材を見つけていかなければなりません。しかし、そうした人材を発掘するという、ジャニーさんにしかできなかったことを誰が代わりにするのでしょうか」
恩師から出された“宿題”も抱えつつ“子どもたち”はどんなエンターテイメントを見せてくれるのだろうか。