KinKiKids堂本剛と堂本光一

 6月29日付の『オリコン』の「週間シングルランキング」で、KinKi Kidsの新曲『KANZAI BOYA』が18万70000枚をセールスして1位に輝いた。これで彼らは1997年のデビュー曲『硝子の少年』から、実に42作連続で同ランキングの初登場1位を記録し続けている。

「ランキング媒体は、米国の『Billboard』などさまざまですが、国内で群を抜いた知名度を誇るのがやはりオリコン。そしてオリコンランキングはジャニーズグループにとって“登竜門”と言うべきもので、“1位獲得”は至上命令とも言われています。

 実際、ここ数週間を振り返ると6月22日付でKing & Prince、そしてキンキ、7月6日付でジャニーズWEST、最新ランキングでHey! Say! JUMPとジャニーズ勢が週替わりで1位を独占しているのです。これは偶然だと思いますか?」(音楽専門誌編集者)

 お目当てのアーティストのCDを入手するとき、大抵は発売日にレコード店などに出向いて購入、またはネット注文で配送してもらう手続きをとるのが一般的。ジャニーズファンも例に漏れず、待ちに待った発売日に楽しく買いに出かけているのだろう……とはとんだ思い違いだった。

「1位を取らせる」ファンの使命

「ランキング1位を取る」ことがグループの使命であるように、「ランキング1位を取らせる」こともファンの使命なのだとか。前出の音楽専門誌編集者が解説する。

「彼女たちにとっても新曲のリリースは“真剣勝負”なのです。担当グループを“2位”にさせることは恥ずべきことで、首位を獲得させるためにどう動くべきか、どうしたら同日発売のライバルに勝てるか、ファン同士で連携をとりながら日々、オリコンを“分析”しているんですよ」

 オリコンを分析ーー。どういうことだろうか。

 取材を進めていくと、ファンの間で共有されているという《オリコン対策》なる手書きメモにたどり着いた。《エイトを応援していくために出来ること》と、これはどうやら関ジャニ∞のファン、つまり“エイター”が共有しているもののよう。

関ジャニ∞ファンのSNSで共有される《オリコン対策》

 その内容を確認すると、まず《CDを買うときはオリコン調査協力店、または加盟店で!》とある。これは、オリコンに販売枚数の集計データを提供する協力店(2020年7月時点で18835店/オリコンビズオンラインより)での購入が大前提ということだ。

 そして《店頭予約は早めに! 遅くとも3週間前》。なんでも、各販売店がレコード会社にCDを発注した後に予約を受けた場合、店頭に並ぶ予定だったCDを予約販売に回すため、来店する一般客の購入分が減ってしまうのだそう。それゆえに早めの予約を呼びかけているわけだ。

 他にも《集計は月〜日曜日。日曜17時までに購入するとその翌週に反映》《複数枚買うときはできるだけ会計を分けて》など、関係者しか知り得ないであろう情報も含まれている。

 ナゼ、このような《オリコン対策》を講じることができたのだろうか。

「ファンの行動力と情報ネットワークは侮れませんよ。彼女たちは取材記者のようにレコード店で聞き込みをしたり、探偵のようにネット情報を精査して集計傾向を分析したりするのです。そしてそれを共有する。特にファンのなかでも熱量が高いとされるエイターともなれば、自ら協力店にバイトとして“潜入”するツワモノもいるとかいないとか(苦笑)」(前出・音楽専門誌編集者)

オリコン広報部を直撃すると

 でも、実のところ、この《オリコン対策》はホンモノなのだろうか。オリコン広報部に聞いてみると、まずは《集計をする調査協力店》について、

「全国の調査協力店の販売実績をもとに、全国の推定売上枚数を算出しています」

 と、こちらは間違いなさそうだ。《店頭予約は3週間前》については、各販売店の対応つき「分かりかねます」とのこと。

 ランキング反映に関わるとされる《日曜17時までに購入する》について、

「全国の調査協力店による毎週月曜日から日曜日までの販売実績を対象に集計を行なっております。時間につきましては各店舗の営業時間により異なるかと存じますが、調査協力店より前日の販売実績としてご報告いただいた数字をもとに集計・発表しております」(広報部)

 こちらは特に《17時まで》という決め事はないもよう。各店の営業時間によって“締め切り”は異なるということだろう。

 最後に《複数枚買うときは会計を分ける》だが、ファンらの《オリコン対策》では1人の同時購入でカウントされるのは3枚までとされている。4枚以上を同時に購入しても、3枚分しかカウントされないという。

「売上の詳細及び反映につきましては調査協力店との守秘義務契約によりお答え出来ませんが、弊社のランキングは、個人の方による一般的な購買動向をもとに集計・発表しており、その範囲内か範囲外かを都度判断し、購入枚数をカウントしております」(広報部)

 個人購入の“範囲”を出た枚数ついては、カウントから除外される場合もあるということだろう。

“握手会付き”CDは3枚まで

 ちなみに握手会などの「アーティスト参加型の販売施策イベント」が付属するCDの場合、ランキングに反映されるのは「1イベントあたり購入者×3枚」といった上限が設けられているそう。ファンが言うところの“カウントは3枚まで”は、ここからきているのかもしれない。

「当然、ネット上などで共有される対策はほとんどがファンの方々が非公式に作ったものですから、全てを鵜呑みにするのはやめたほうがいいかもしれません。ですが、ダウンロード配信が当たり前の今、CD業界を牽引しているのはジャニーズやAKBグループらアイドルで、そしてCDを大量購入してくれるファンはレコード店にとっても大事なお客様。それこそ“内情”を問われたらむげにもできず、多少のリップサービスもしたくなるでしょう。オリコンにとっても、音楽ランキングは今も大事なコンテンツ。アーティストとレコード会社にレコード店、そしてファンも含めて持ちつ持たれつの関係を築いているということでしょう」(前出・音楽専門誌編集者)

 贔屓のアーティストを応援したいファンの気持ちはホンモノだ。